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ドン=ジョヴァンニ

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第一幕その八


第一幕その八

「これはいい。おあつらえ向きだな」
「これだけいたら一人位はなあ」
 その横にはもうレポレロが来ていた。そしてこう呟くのだった。
「わしにも一人位は」
「そうだな。御前も誰か引っ掛けるといい」
 レポレロが着飾った村娘達を物欲しそうな目で見るのを見てからのジョヴァンニの言葉である。彼もまた彼女達を見てはいる。
「私も五人か六人、いや十人か」
「またお盛んなことで」
「私にとっては何でもない。さて」
 ここで前に出るジョヴァンニだった。そして村人達に言うのだった。
「やあやあ、楽しんでおられますな」
「あっ、貴族の方だ」
「本当だ」
 皆彼の羽帽子とマントからそう判断した。実際に彼は貴族である。
「ここに何か御用で?」
「どうされたのですか?」
「いや、続けて下さい」
 ジョヴァンニは村人達が宴を中断したのでそれは続けさせた。
「歌も踊りも。ところで」
「はい」
 村人の一人が彼の言葉に応える。
「何か?」
「今日はどうされたのですか?」
 ジョヴァンニは何気なくを装って彼に問うた。
「随分と賑やかですが」
「結婚式が行われているのです」
「ほう、それは目出度い」
 ジョヴァンニは演技を続ける。続けながらさりげなくツェルリーナをちらりと見た。
「そして花嫁は」
「はい、私です」
 ここでツェルリーナがにこりと笑ってジョヴァンニに挨拶をした。
「ツェルリーナです」
「ふむ。では花婿は」
「僕です」
 遅れてマゼットがジョヴァンニに挨拶をする。
「マゼットです。宜しく」
「ふむ。見事な御仁だ」
 一応マゼットを褒めはする。
「お若いのにしっかりしておられる」
「そうですかね」
 だがレポレロはそう思ってはいなかった。
「結構抜けてそうですけれど」
「それはあえて言うな」
 ジョヴァンニもこっそりとレポレロに言いはする。
「さて、それでだ」
「はい」
「マゼットはですね」
 ツェルリーナがにこにことしながらジョヴァンニに話してきた。
「とても優しくて善良なんですよ」
「それは私もだ。ではセニョリータ」
「はい」
「私は・・・・・・待て」
 横にいるレポレロが村の女の子達に声をかけているのを見て彼に声をかけた。
「何をしている?」
「まあちょっと」
 村娘達から一旦離れて主に応えるレポレロだった。
「この娘達があんまり可愛いんで一緒に遊びたくて」
「それはいいが相手のことを考えるように」
 ここではわざと良識ぶって説教してみせた。
「いいな」
「はい」
「いや、待て」
 ここで演技で言うジョヴァンニだった。
「この方々を私の屋敷に御招待しろ」
「旦那のですか」
「そうだ。そこで新たな祭だ」
 それをしようというのだ。
「チョコレートにコーヒーにワインにハムを出せ」
「他には?」
「出せるだけ出すのだ」
 少なくとも気前はいいジョヴァンニだった。
 
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