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転生とらぶる

作者:青竹
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機動戦士ガンダムSEED
  番外編013話 0209.5話

 その兵士は同僚からオーブへと攻め込むと聞き、呆れたような口調で呟いた。

「オーブに侵攻だって? 何でまたあんな弱小国相手にわざわざ俺達が出張るんだよ?」
「パナマの話は聞いてるだろう? 連合軍が使えるマスドライバーが全滅したからだよ」
「あぁ、だからオーブか。にしても、俺達が行けばすぐに降伏するんじゃないのか?」

 そう、自分達はこの地球連合軍の主流派である大西洋連邦の軍人なのだ。オーブ如き小国が何をしようともそれは象に挑む蟻でしかないのだから。

「それが、オーブの奴等妙な援軍を迎え入れたらしくてな。俺達とやり合う気でいるらしい」
「はぁ? ちょっとやそっとの部隊が援軍にいたって、ストライクダガーに敵う訳ないだろうに」

 自分達の乗っているストライクダガーに過信とも取れる信頼を抱いているのか、それが当然とばかりに言い切る。
 だが、それも無理は無い。何しろストライクダガーは量産機とは言ってもビーム兵器を装備しており、ザフトの主力MSであるジンと比べても圧倒的な攻撃力を持っているのだ。
 ……そう。少なくても、この時の男は自分達連合軍がオーブという国を圧倒的な力で蹂躙すると信じて疑っていなかった。





「おいおいおいおい、何だよあの数は」

 時は移り、オーブ領海内。そこで男は自分の愛機であるストライクダガーへと乗り込み、母艦であるスペングラー級MS強襲揚陸艦の甲板で敵の部隊へと驚愕の視線を向けていた。
 一見すると、虫のように見えるMA。大きさ的にはMSよりも大分小さい。だが、その数が問題だった。自分達連合軍のMS数よりも明らかに多く見える。下手をしたらこちらの倍はいるのではないだろうか。
 そして……

「アークエンジェル、だと?」

 噂には聞いていた。ヘリオポリスで開発された機体を数機要する戦艦。なにせその機体を量産したのが自分の愛機であるストライクダガーなのだから嫌でも興味が湧く。だが、その戦艦にしてもアラスカでサイクロプスと共に消滅した筈では無かったのか。

「幽霊だとでも言うのかよ、クソったれが」

 男が吐き捨ててる間にも、艦隊の指揮官とアークエンジェルの艦長との間で行われた話し合いは物別れに終わり、いよいよ戦いが開始された。

『全機、攻撃開始。あの虫けらを海に叩き落としてやれ』

 通信機からMS部隊隊長からの命令が下され、こちらへと集団で向かって来る虫型のMAへとビームライフルの銃口を向ける。
 だが……

「当たれっ、当たれっ、当たれぇぇぇええぇぇぇっっ!」

 絶叫しつつトリガーを引く男だが、その銃口から放たれたビームは虫型MAへと一発も命中せずに明後日の方向へと飛んでいく。
 男は知らないが、虫型のMA――メギロート――を制御しているAIは幾多もの敵を滅ぼしてきた戦闘用のAIなのだ。MSに乗って2週間程度の訓練しかしていない男の放つビームなど、AIにとって回避するのはそう難しい話ではない。

「くそっ、何で当たらないんだよっ!」

 懲りずにビームを放つ男だったが、その攻撃は一発も命中しないまま徐々に虫型MAとの距離が詰まり……

「ちぃっ、照準の狂ってるビームライフルなんか当てになるかっ!」

 男はビームライフルを海へと投げ捨て、機体の背に装備されているビームサーベルを抜いて構える。

「うおおおおおおおおっっっ!」

 こちらへと近寄ってきた虫型MAの頭部へと向かってビームサーベルを振り下ろすが、不規則に動かれて狙いを付ける事も出来ずに回避される。そして……

「離せっ、この!」

 虫型MAはビームサーベルを持った右手をその口に咥え、空へと浮かび上がっていく。

「くそっ!」

 男は必死でストライクダガーの頭部に装備されたイーゲルシュテルンで虫型MAを狙う。この至近距離からならまず外さないだろうと確信してトリガーを引いたのだが……

「ふざけるなこのクソ虫が!」

 確かに男の目論見通りにイーゲルシュテルンはほぼ全弾が虫型MAに命中した。だが、その結果は男をさらに絶望の淵へと引きずり込む。虫型MAは目立った損傷を受けてはいなかったのだ。
 そして男が吐き捨てている間にも、周囲から何機もの虫型MAが集まり……

「来るな……来るなぁぁぁぁっっっっ!」

 男が自分の愛機として信用していた機体は、足を噛み千切られ、腕を噛み千切られ、そして頭を噛み千切られ……最後の胴体にあるコックピットへと虫型MAが殺到する。

「あ、あああああ、だ、誰か……助け……母さん…」

 その言葉を最後に、ストライクダガーはバッテリー部分をメギロートに噛み千切られてパイロット諸共爆散し、男の意識は永遠に消え去った。 
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