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八条学園怪異譚

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第三十二話 図書館その十一

「お布団もあってそこで寝ています」
「そういえばろく子さんもちゃんと寝られるんですね」
「いつも起きてる訳でもないんですね」
「ちゃんと寝ていますよ」
 ろく子は二人に笑顔で答える。答えながら図書館のダークブラウンの扉を開ける。巨大なその扉は西洋風の古い趣きのあるものだ。
 図書館に入るとそこは昼とは全く違い静まり返っていた、暗い中に人はいない。
 だがその静まり返った図書館の中でだ、二人が見たものはいつもの面々だった。
 妖怪達は笑顔で図書館のロビーで酒盛りをしていた、その中には口裂け女や花子さんもいる。無論他の面々もだ。
 そのロビーの中で車座になり触ってそして飲みつつ二人に顔を向けて言って来たのだ。
「やあこんばんは」
「今日はこっちに来たんだ」
「飲む?今日も」
「おつまみもあるよ」
「というか図書館の中でもお酒を飲んでるのね」
「他の場所と同じく」
 二人はその彼等を見て少し考える顔で述べた。
「ううん、何ていうかね」
「妖怪さん達って本当に何処でも飲むのね」
「妖怪は飲むものよ」
 口裂け女が応える、日本酒をたたみいわしで飲んでいる。今は覆面を外しその耳まである口が露わになっている。
「夜は何処でも大宴会よ」
「運動会じゃないのね」
「お墓で」
「それもやるけれどね」
 このことは否定しなかった、だがそれでもだった。
「けれど今はね」
「そうしてなのね」
「飲んでるのね」
「そう、飲んでるのよ」
 大きな口をにこりとさせてごくごくとやる。
「ろく子さんのお家でね」
「ええ、そのこと今聞いたけれどね」
 愛実は口裂け女の言葉に応えて言う。
「ここがろく子さんのお家ってことはね」
「本人さんからよね」
「ええ、ここで寝てもいるそうだけれど」
「そうよ、あたしも博物館で寝てるしね」 
 口裂け女はそこでだというのだ。
「寝巻きはジャージよ」
「あんた寝る時ジャージだったの」
「着心地よくてすぐに寝られるからね」
 だからジャージだというのだ、寝る時jは。
「それにそのまま外に出ることも出来るしね」
「何か何処かのアラサーのOLさんみたいなこと言うわね」
「あはは、近いかもね」
 口裂け女は愛実の今の言葉に楽しそうに笑って応えた。
「あたしも外見はその年齢だしね」
「そうよね、そろそろ結婚しないとまずいみたいな」
「おばさん臭が出て来てね。とはいってもそれ生まれた時からだけれど」
 この辺りは妖怪だからだ、妖怪は生まれた時から外見が大人びていたりすることもよくあることなのだ。無論その精神年齢もだ。
「結婚ねえ、相手いるかね」
「誰かいないの?」
「考えたこともないね」
 実はそうだというのだ。
「このままじゃお局様かね」
「また古い言葉使うわね」
「古いかね、結構新しいものだと思うけれどね」
「古いでしょ、お局様は」
「そうかね、まあとにかくあたしはジャージ派なんだよ」
 寝る時はというのだ。 
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