八条学園怪異譚
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第三十二話 図書館その九
「本当に先輩はですね」
「セクハラが」
「男の子がやったら問題だけれど女の子がしたらいいじゃない」
まだ言う茉莉也だった、全く怯まない。
「まあ無理強いは今はしないから」
「今は、というかずっとそうして下さいね」
「本当にお願いですから」
「やれやれね、とにかく今日は図書館よね」
「はい、そこに行きます」
「あそこに」
その学園に総合図書館にだというのだ、世界でもかなりの規模を誇る図書館としてもかなり知られている。
「ひょっとしたらあそこが泉ですよね」
「それなら」
「じゃあ頑張ってね、私もひょっとしたら行くから」
その図書館にだというのだ。
「あくまでひょっとしたらだけれどね」
「あそこって博士の研究室にも近いですしね」
「これまで何度か通ってますし」
学生達の憩いの場所にもなっている、実際に二人も美紀と共にドリンクコーナーにおいて楽しく談笑していた。
「結構馴染みの場所ですし」
「あそこに行ってきます」
「あそこが泉だったらいいわね」
茉莉也はこのことを少し願った。
「本当にね」
「そうですね、何か泉の候補地ってあちこちにありますけれど」
「実際の泉ってないですからね」
「うちの神社でもなかったしね」
茉莉也も腕を組んでこう言う、学校の鞄はリュック型であり背中に背負っている。
「まあここかもって場所が物凄く多いからね、ここは」
「そうした意味でも凄い学園ですよね」
「もう何でもありっていうか」
「ここは基本的に何でもありよ」
八条学園はそうだというのだ。
「もうあらゆることがあるから」
「物凄く大きいですし」
「それもあってですね」
「ええ、まあとにかく何でもありだから」
それでだというのだ。
「妖怪さんも幽霊さんもいるしね」
「それで図書館もですよね」
「誰かいますよね」
「さて、あそこはろく子さんもよく出入りしてるけれど」
博士の助手であり茉莉也に酒を教えた彼女だというのだ。
「あの人かしらね、いるのは」
「ろく子さんですか」
「あの人ですか」
「ひょっとしたらね」
彼女がいるのではないかというのだ。
「若しくは博士とかね」
「まあ博士がおられても普通に納得出来ますね」
「自然に」
「あの人はまた特別だからね」
普通の人間とは違い、それでだというのだ。
「私もあの人のことはよく知らないから」
「一体お幾つか」
「そういうことはですね」
「ええ、知らないわ」
もっと言えば知ることが出来ないことだった、さしもの茉莉也も二人にお手上げといった仕草で実際に手を上げて話す。
「謎の部分はね」
「というかあの人謎の部分ばかりですけれどね」
「年齢のこととか学識のこととか」
「魔術も錬金術も御存知ですし」
「何もかもが」
「そう、あの人は特別なのよ」
茉莉也もこう言う程だった。
「仙人じゃないかしら、本当にね」
「その可能性は充分過ぎる程ありますね」
「妖怪化しているかも知れませんね」
皆でこんなことも言う、そして。
二人はその夜にもう一度図書館に行った、するとその前にいたのは。
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