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万華鏡

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第三十一話 怪談話その十二

「海と同じだけ怖いで」
「蛇もいますしね、熊も」 
 景子はこういった動物達を出した。
「本土の熊はまだましですけれど」
「ヒグマと比べたらね」
 彩夏が応える。
「まだずっとましよね」
「ヒグマは本当に怖いよね」
 開拓の頃は開拓村に来て何人もの村人を食い殺した事件もある、猟師を返り討ちにした話も結構残っている。
「あれはね」
「うん、本土はツキノワグマよね」
「そうよ」
 文字通り首のところに月の輪を思わせる白い模様がある、だからツキノワグマというのだ。
「比較的大人しい熊よ」
「比較的なのね」
「そう、人を食い殺したって話は聞かないけれど」
「それでも熊は熊だから」
 猛獣だ、だからだ。
「怖いわよ」
「山で逢えば」
「下手したら大怪我だから」
 大怪我だけましかも知れない、食い殺されるよりは。
「何十針も縫う位らしいけれどね」
「ヒグマとツキノワグマ比べたらこんなんやで」
 高見先輩も言って来た。
「ほら、三国志ってゲームあるやろ」
「ああ、シュミレーションですか」
「あれですか」
「そや、あれや」
 ブランドにもなっているその名作シリーズでだというのだ。
「あれで呂布って武将おるやろ」
「あの武将か」
「武力ダントツの」
「あれを戦場で見た後は」
 言うまでもなく呂布の独壇場だ、方天戟を手に赤兎馬に乗り戦場と暴れ回る場面はゲームではいつものことである。
「関羽ならひょっとして、と思うやろ」
「勝てるってですね」
「そう思えるっていうんですね」
「実際は関羽も無理や」
 この武将にも勝てないというのだ。
「あの巨大な薙刀、ちゃうな」
「あれ何とか月刀っていいますね」
「青龍の」
「まあ武器の具体的な名前はええわ」
 それはとりあえずだというのだ。
「それでもや」
「あの武器持った関羽も強いですよね」
「どっちも三国無双でもえげつないし」
「天地を喰らうってゲームでもですね」
「無茶苦茶暴れまてましたよね」
 五人共さりげなく古いゲームについても話す。
「それで呂布がヒグマで」
「関羽がツキノワグマですね」
「普通の人間は勝てへんからな」
 それでだというのだ。
「山も怖いんやで」
「海の鮫と同じ位ですね」
「怖いんですね」
「そや」
 まさにその通りだというのだ。
「山も要注意やで」
「猛獣もおるけえ」
「海も怖いけどな」
「山も注意しんしゃい」
「というか何処もですね」
 美優は先輩達の話を聞いてこう呟いた。 
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