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コシ=ファン=トゥッテ

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第一幕その五


第一幕その五

「ですが急に決まりましたので」
「そんな・・・・・・」
「また本当に急に」
「だからです」
 彼はまた二人に言ってきた。
「御二人をこちらに御呼びしました」
「グリエルモ・・・・・・」
「フェランド・・・・・・」
 フィオルディリージもそれぞれ二人の名を呼んだ。二人も項垂れ悲しい顔で姿を現わすのだった。
「ドラベッラ、これも勅命だ」
「僕達も軍人だ」
 一応言葉ではこう言うのだった。
「いざ武勲を挙げに行って来るよ」
「今これからね」
「ええ、待ってるわ」
「もう話は聞いているから」
 姉妹も泣き崩れそうになるのをこらえて二人に告げる。
「どうか勇気を出して」
「戦場で」
「別れは辛い」
「けれど」
 二人は芝居で姉妹は本気だ。しかしそれぞれその位置にはいた。
「僕達は行く」
「その間待っていてくれ」
「ええ、わかってるわ」
「きっとね」
 姉妹のその泣き崩れんばかりの声を聞いて二人は内心にんまりとした。そうしてそのうえで二人の間に立っているアルフォンソに対して囁くのだった。
「御覧になられましたね」
「どうですか」
「いや、まだはじまったばかり」
 しかしアルフォンソは澄ました顔でこう返すのだった。
「終わりまでわかりませんぞ」
「むむっ、もう決まっているというのに」
「まだそんなことを」
「幕は開いたばかりです」
 しかしアルフォンソの言葉は変わらない。
「さあ、最後まで」
「いいでしょう。それでは」
「千ツェッキーノはその後で」
 二人は余裕だった。その余裕で恋人達に顔を戻す。そうして五人はそれぞれ言うのだった。
「こうして運命は人の希望を断ち切る」
「この様な目に逢って何故人生を愛せましょう」
 また二人は芝居で姉妹は本気で。アルフォンソはあの意地の悪そうな目のままである。
「誰が人生を愛せましょう」
「どのようにして」
「けれどそれでも」
「うん」
 二人はそれぞれの恋人の言葉に頷いてみせる。
「きっと武勲を」
「そして剣を」
 フォオルディリージが思い詰めた顔でグリエルモに言ってきた。
「貴方に万一のことがあれば私はその剣で」
「私はそうなったら悲しみで死んでしまうわ」
 ドラベッラは泣きそうな顔で話した。
「だから剣はいらないわ」
「そんなことを言わないでくれ」
「そうだよ、あまりにも不吉だよそれは」
 フェランドもグリエルモもここでは演技ではなあkった。
「僕達は必ず生きて帰るから」
「神が君の心の平和を守ってくれるよ」
 そして今度は本気で言うのだった。
「この美しい目は運命すらも変えてくれる」
「神よ、御守護を」
 心から神に祈りもする。
「例え悪い星が彼女の平安を妨げたとしても」
「その澄んだ瞳で私を見つめてくれるように」
 そして二人の言葉は一つになった。
「そうすれば僕は幸せに彼女の胸の中に戻れるから」
「よし、いい感じだな」
 アルフォンソは四人の様子を見ながら呟いた。
「特に二人共よくやってくれているな」
 とりわけフェランドとグリエルモを見て言うのだった。
 
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