とある碧空の暴風族(ストームライダー)
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虚空爆破
Trick10_“スピネル”という別の宝石です
30分後、4人はseventh mist内のアクセサリーコーナーに来ていた。
アクセサリーだと男の信乃は興味はないだろうが、3人に付き合って
「似合ってますね」「こっちの方がいいと思いますよ」と言いながら一緒に見ていた。
「このアクセサリーも可愛いですね! 御坂さんどうですかこれ!」
「あ、本当だ! 初春さんに合ってるよ!」
「このブレスレット、ルビー使っているのに安いよ! 買おっかな!?」
「それはルビーじゃないですよ。赤いタイプの宝石だからルビーに
よく間違われますけど、“スピネル”という別の宝石です」
「え、信乃さん!?」
いつの間にか信乃と2人だけになり、初春と御坂はコーナーの反対側にいた。
初春は佐天が見ていることに気がつくと、小悪魔な笑顔を一瞬だけ見せた。
(う、初春のやつ~!)
初春が御坂を気付かれないように誘導し、2人から離れていたのだ。
「? どうかしました?」
「い、いえなんでもないです! それよりもルビーじゃなってホントですか?」
緊張するが、とりあえずは意識しすぎないように、そして信乃とのおしゃべりを
楽しむ方向に決めた佐天だった。
「はい。条痕はルビーのように透明ではないですし、
硬度もルビーほどではありません。価格もルビーの10分の1の下回ってます」
「それじゃ、ルビーの偽物ってわけか・・」
「いえ、スピネルも立派な宝石ですよ。
それに、昔はルビーとスピネルの違いは分かり辛いようで、
イギリス王室の王冠に飾られている≪黒太子のルビー≫と
呼ばれている有名なものですら実はスピネルなんです」
「へー!
それじゃなんで安いんですか?」
「簡単に説明すると、認知度が低い事と、ルビーの偽物と考える人多いからです。
『宝石の硬度』や『色も多彩』と人気の条件を満たしているんですが、流行などの
関係でこの扱いなんですよ。
でも、スピネルには向上心や努力を促進してくれる力があると言われています。
宝石としてはとても素晴らしいものだと思いますよ。
以上が西折信乃の雑学でした」
「へー信乃さんって何でも知っていますね」
「なんでもは知りません。知っていることだけ、です」
「どこかで聞いたことあるフレーズが・・でも、それなら買おうかな。
でも財布ギリギリなお値段だし・・」
「そのブレスレットですよね? 店員さん、これをいただけますか?」
「はい、お買い上げありがとうございます」
「え! 信乃さん!?」
「お近づきの印です。別に気にしないでください。この買い物の間に
皆さんに何かプレゼントしようと考えていましたから」
「///あ、ありがとうございます。一生大事にします///」
「はは、それなら宝石もうれしいと思いますよ」
早速、手首につけてみた。
ちょうど御坂と初春もこちらに戻ってきた。
「佐天さん、そのブレスレットを買ったんですか? きれいですね!
しかもルビーが付いてるじゃないですか!?」
「初春! これはスピネルと言ってルビーとは違う立派な宝石なんだよ!
って信乃さんの受け売りなんだけどね。見ただけで宝石の種類がわかっちゃうって
信乃さんすごくない?」
自分のことのように自慢する佐天の後ろで信乃は苦笑いをした。
「信乃さんは宝石にも詳しんですね!」
「あんた一体世界を回って何やってたのよ・・」
「御坂さん、また呆れた顔しないでください。前にも言いましたけどいろいろです。
自分自身も何をしたか説明できないですから」
「昔から料理やら格闘技やらなんでもできると思ったけど、まさか宝石の鑑定や
建物の修理ができるって、本当に何でもできるわね」
「なんでもはできないですよ。できることだけ、です。」
「「「どこかで聞いたことあるフレーズが・・」」」
「まあ、そんなことよりもアクセサリーを見終わったようですし次に行きますか?」
「そうですね、次はどこ行こうか? 初春と御坂さんはどこ行きたいですか?」
「わたしは特にないですけど・・」
「あ、私はパジャマとか」
「あ、だったらこっちですよ」
初春の案内で次のコーナーへと歩き出した。
「あ、女性用の服でしたら私はいないほうがいいですね。どこかで時間を・・
って、ちょうどいい時に電話が来ました。3人とも先に行ってください。
後から私も向かいます」
「「わかりました」」「わかったわ」
信乃は携帯電話を持って人気のない非常階段の方へと歩き出した。
3人は服コーナーへと歩き出すと、
「佐天さん、良かったですね! そのブレスレット!」
「//うん、可愛いでしょ//」
顔を少し赤くして答えた。
「それだけじゃないですよね~! これは信乃さんのプレゼントみたいでしたから!」
「初春見ていたの!?」
「はい、ばっちりと!」
「へー、それ信乃にーちゃんのプレゼントなんだ」
「変な意味はないですよ! これはお近づきの印って言ってましたし、
初春や御坂さんにも何かプレゼントするつもりだって言ってました。
ってそれよりも、ほら! いいパジャマあるじゃないですか! 見ましょう!」
「逃げられましたね。もう少し来るのが遅かったら面白いこと聞き出せたのに
残念ですね、御坂さん」
「・・・」
御坂は反応がなく、その目線の先はとあるパジャマが飾られていた。
サイズ的には中学生の御坂が着ても問題ないが、デザインは小学生が好みそうな感じの
ピンクを中心としたものだった。
(かわいい・・)
御坂はそんなことを考えていると
「アハハ! 見てよ初春このパジャマ!!
こんな子供っぽいの今時着る人いないよね!」
「小学生の時くらいまではこういうの着てましたけどさすがに今は・・」
「そ、そうよね! 中学生になってこれはないわよね! うん、ないない!」
御坂は慌てるように2人の意見に合わせた。声は若干裏返っている。
声が少し変だったのに違和感を感じたようで「ん?」と佐天と初春が行ったが、
気のせいだと片づけたようで、
「あ! 私、水着の方見てきます」
「水着でしたらすぐそこに」
といって2人は子供っぽいパジャマから離れた。
(チャンス! 一瞬合わせてみよ!)
御坂は2人に気付かれないように急いで服を掴んで鏡の前に立った。
「それ!」
鏡には御坂が見たかったパジャマを合わせた自分が写り、
そして
「何やってんだビリビリ」
鏡には先日戦った上条も写っていた。
さらには
「その子供の時から同世代よりも幼いグッズが好きなのは知ってましたけど
中学生になっても変わってないみたいですね」
信乃も写っていた。
「え、な、は、何であんたがここにいんのよ!? 信乃にーちゃんまで!!」
「いちゃいけないのかよ。てかビリビリに兄弟いたんだな」
「私は親戚みたいなもので御坂さんの兄ではありませんよ、上条さん」
「え、会ったことあったっけ?」
「会ったことはないですね。でも、先日御坂さんと河原で遊んでいるときに
大声で『上条さん死んじゃいますよ!!』って言ってましたから名前は知ってます」
「ってあれを見ていたのかよ! てかビリビリの親戚なら止めろよ!
本気で死ぬかと思ったんだぞ!!」
「面白かったのでつい。それに“右手の無効化”があれば問題なかったみたいですし」
「!? お前知ってんのか!?」
「だから見ていたっ言ったでしょう? 簡単なことですから予想がつきますよ。
まあ、あくまで予想でしたけどその反応でしたら予想は当たりみたいですね」
「あんたたち私を放っといて勝手に話しないでよ!」
御坂が怒って話に入ってきた。額からは電気が少し出ている。
今にも飛び掛かりそうな雰囲気だったが
「おにーちゃーん」
そこに女の子が上条に向かって歩きてきた。
「このおようふく、あれ? トキワダイのおねーちゃんだ」
「昨日のかばんの子?」
「御坂さん、上条さんの妹さんと知り合いですか?」
「違う、俺はこの子が洋服探してるって言うから案内しただけだ。妹じゃない」
「そうなの? 私はこの子は昨日会ったのよ」
「トキワダイのおねーちゃん、昨日はカバンありがとう!
あのね、今日はおにーちゃんに連れてきてもらったんだ!
オシャレの人はここに来るってテレビで言ってたの!」
「そう、今ででも十分かわいいわよ」
「どっかの誰かさんと違ってな(ボソ)」
「って何よあんたヤる気!? だったらいつぞや決着を今ここで」
「やめなさい」
ビシッ!
信乃が御坂の頭にチョップを入れた。
「信乃にーちゃんなにするの!?」
「何考えているんですかこんな所で」「お前の頭はそれしかないのかよ」
信乃と上条は同時に呆れて言った。
「こんな人の多い所で始めるつもりですか?」
「そうだぜビリビリ」
「うっ!!」
御坂は2人に言われて気付き、詰まって黙り込んでしまった。
何も言えずにいると、
「ねーねーおにーちゃん、あっち見たい」
少女が上条の服を引っ張った。
「お、わかった。じゃあ俺らは行くよ。またな」
「はい、またの機会に。
っと、その前に自己紹介しましょうか。
私は西折信乃、高校1年です。
敬語のしゃべり方は・・・・癖なので気にしないでください」
さすがにキャラ作りとかは言わなかった。
「おう、俺は上条 当麻(かみじょう とうま)、同じ歳だ。よろしく」
「ちなみにわたしは風紀委員をしています」
「なおさら昨日のけんかを止めろよ!」
「おにーちゃんはやく~」
「はあ、わかったわかった。じゃあな、西折、ビリビリ」
「じゃーねーおねーちゃんー! ばいば~い!」
2人は歩いていった。
「上条さん、面白い人ですね」
「どこがよ! あんなイラつくやつ!」
「御坂さんって短気なんですね、というよりバトルマニアみたいなところありますね。
もう少し時と場合を考えてた方がいいですよ」
「う、我ながら見境ないな・・。まあとにかく、初春さんたちのところに行こう」
「そうですね」
2人は洋服コーナーから出て佐天たちがいる水着のコーナーに向かった。
しかし、信乃が急に立ち止まり御坂も気付いて信乃を振り返る。
「どうしたの? あ、水着コーナーだからまた男がいたらとか気にしてるの?」
「・・・・」
「信乃にーちゃん?」
「いえ、そうですね。男がいては嫌でしょうし、もう少し時間をつぶしてきます。」
そう言って信乃は立ち去るように歩いて行った。
「? なんか変だったけど、別にいいか」
「御坂さん、どうですこの水着! 可愛いでしょ!」
「あ、本当だ。他にも似合いそうなのがあるわね」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
(嫌な予感がする)
信乃はデパートの階段を駆け下りながらそう考えていた。
(この感覚は・・なんだろう、SWATにいた頃のなんだったかな)
信乃は空白の4年間にSWATの爆弾処理班に所属していたこともある。
SWATとは Special Weapons And Tactics:特殊火器戦術部隊の略称であり、
対テロにも活躍するアメリカの特殊部隊である。
なぜ信乃がSWATに所属していたかはまた今度の話。
信乃が感じているのは全く根拠のないただの勘だ。
しかし、それはSWATの頃に嫌と言うほど感じていた感覚。
(もしかして、爆弾か?)
嫌な予感の正体を思い出し、信乃はさらに急いで階段を下っていた。
つづく
後書き
宝石の話は
皆川亮二さんの漫画『ADAMAS』の話を元にしています。
この作品には宝石使いは出てこないのでご心配なく。
ついでに『D-LIVE』なネタを混ぜ込みました。気付きました?
作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。
皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。
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