コシ=ファン=トゥッテ
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第二幕その二
第二幕その二
「殿方達は出陣されています」
「だからこそ貞節でいないと」
「余計にそうでなければ」
「兵隊さんがしていることをするだけです」
また兵士のことを話すのだった。
「それだけです。つまり新兵を募集してです」
「それでは神が怒られるわ」
「天におわす神が」
「ここは地上ですよ」
またしても姉妹の言葉をあっさりと返してしまった。
「ですから私を信じて下さい」
「こういう時の貴女は危険だから」
「信じると何かいつも悪いことをしてしまっている気がするわ」
「それは気のせいです。宜しいですか?」
姉妹の言葉は受け流され続けている。
「あのアルバニア人の方々はお嬢様方を好きなのですよ」
「それはそうでしょうけれど」
「私達は」
「自分を好いてくれる人を嫌ってはなりませんよ」
そうしてまたしても己の恋愛観を語ってみせる。
「そう、何人でも」
「何人でもって」
「やっぱり貴女十六歳ではないんじゃないの?」
「れっきとした十六歳ですよ」
しかし本人はこう言う。
「その花の十六歳の言葉ですが」
「私の十六の時はこんなのじゃなかったけれど」
「私も」
姉妹から見てもデスピーナはかなりとんでもないところがあった。
「貴女の過去がかなり気になるけれど」
「何があったのかしら」
「そう、その私の言葉です」
その言葉を受けたうえでまた話す。
「お金持ちで紳士で優しい。アルフォンソさんの仰るように」
「素晴らしい方だというのですね」
「つまりは」
「そういう方に冷たくしてはいけません。何があっても」
「何があっても」
「じゃあ少しは」
また揺れ動く。しかしこれこそがデスピーナの願う方向だった。
「優しくしてあげないといけないのね」
「少しだけなら。いいかしら」
(まんざらではないみたいね)
そしてこのことはデスピーナに読まれていた。
(じゃあ後は丁寧に仕込んでいって)
「グリエルモを裏切って」
「あら、そんなこと言っていませんよ」
フィオルディリージの言う裏切りというのは否定する。
「私は一言も」
「けれど私達があの人達と仲良くなったら」
ドラベッラも言う。
「フェランド達が」
「それには安全な方法がありますよ」
それを知らないデスピーナではなかった。
「それも確実な方法が」
「確実な方法!?」
「そんなのがあるの」
(前から思っていたけれど少し世間知らず過ぎるわね)
姉妹のそうしたところについても考えた。
(まあそれだからこそ誘導し易いわね)
「その方法はです」
内心の言葉を隠してまた姉妹に話す。
「アルバニア人の方々が私達に会いに来るものだと世間に思わせることです」
「そんなことできるの?」
「私はいつも数人の殿方をお付き合いしていますので」
胸を張っての主張だった。小柄だが胸はある。
「それで誰も不思議には思いませんよ」
「けれどあの御二人は」
「あつかましいから」
接吻を求めた時のことを思い出しての言葉だった。
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