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万華鏡

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第三十一話 怪談話その五

「若し泳げないで海に落ちたら」
「終わりだよな」
 美優はサファイアを溶かした様なその海を見て話す。
「もうな」
「だから皆泳げるのね」
「徹底的に教えられるんだろうな、やっぱり」
「そうよ」
 ここでまた里香が言う。
「この学校は特にね」
「やっぱりそうか」
「もう完全に泳げる様になるまでスパルタだから」
 文字通り徹底的に教えられるというのだ。
「厳しいわよ」
「言うまでもなかったか」
「本当に泳げないと何かあった時にそれで終わりだから」 
 つまり海の藻屑になるというのだ。
「だから泳げることは絶対なのよ」
「沖縄でも泳げない人いたけどな」
 だが海上自衛隊は仕事柄絶対だというのだ。
「それでもなんだな」
「そうなの、服を着たまま泳ぐ訓練もあるらしいわよ」
「あっ、いつも水着じゃないからね」
 彩夏は里香の話でこのことに気付いた。
「というか船に乗ってたら」
「水着じゃなくて制服や作業服だから」
 そうなるというのだ。
「それで泳ぐ訓練もしてるの」
「いざという時に備えて」
「死ぬから」
 また言う里香だった。
「本当にそこまで考えて訓練してるのよ」
「自衛隊って厳しいわね」
 彩夏はここまで聞いて述べた。
「そういうことまでしてるのね」
「生きる為にって言われたわ」
「あれっ、けれど戦争をするから死ぬじゃない」
 その時はというのだ、戦争をすれば戦死者が出るのは言うまでもない。
「そうなるわよね」
「けれど出来る限りね」
「生きる為になの」
「言われたの、自衛官は死ぬことが仕事じゃないって」
 これも最初にここに来た時に言われたことだ、自衛官の仕事は死ぬおとではなくこれがそうだと言われたというのだ。
「国民の皆を守ってね」
「それで生きることなのね」
「それが仕事って言われたの」
「そうだったのね」
「そう、物凄く強い声で言われたの」
 こう話すのだった、そして。
 里香も海を見た、そこから言うことは。
「生きる為に泳げる様になってね」
「私達を守ってくれるのね」
「そうなの」
「有り難いわね、自衛官の人達って」
 琴乃もその海を見る、今彼女達の背には白亜の建物、神殿を思わせる建物がある。そこに彼女達のガイド役を務めている自衛官が笑顔で来て言ってきた。
「あの建物を背に記念写真を取られてはどうですか?」
「あっ、凄い綺麗ですね」
「何か神殿みたいな場所ですね」
「入学式や卒業式に使われる場所でして」
 そうした場所だというのだ。
「この学校の自慢の場所の一つなんですよ」
「うちの学校にもあんなのないわよね」
「そうよね」
「あそこから神様が出てもね」
「不思議じゃないわよね」
「ははは、流石に神様はいません」
 自衛官もそれは笑って否定する。
「それでもです」
「この学校のですか」
「名物の場所の一つなんですね」
「映画の撮影にも何度も使われています」
 ここでこのことが話される。 
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