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久遠の神話

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第四十五話 二度目の激突その十五

「それは獅子ではない」
「誇りがなければ」
「本来のネメアの獅子もだ」
 ヘラクレスに倒されたオリジナルもだというのだ。
「獅子だった」
「誇りがあったからこそ」
「ヘラクレスと誇り高く闘い」
 そしてだというのだ。
「誇り高く死んだ」
「それでヘラクレスの毛皮になったらしいけれど」
「誇りある者は誇りある者を知る」
 こうも言う獅子だった。
「それ故にヘラクレスも俺を己の象徴としたのだ」
「誇りがあるから」
「そういうことだ。それではだ」
 ここまで話してだった。獅子は四本足で立ったまま述べた。
「また会う時を楽しみにしている」
「次に闘う時は」
「より強くなっているな」
 上城の強さと成長を楽しみにしている言葉だった。
「それを見せてもらおう」
「そう。その時に」
「それではな」
 こう告げてそれから姿を消した。後にはいつも通り黄金が残り上城はそれを手に入れた。そうしてから樹里にこんなことを話した。
「僕は強くなってるかな」
「私はそうしたことはよくわからないけれど」
 この前置きから答える樹里だった。
「それでも。今まで生きているわね」
「剣士の戦いの中でね」
「それは凄いことじゃないかしら」
 樹里が言うのはこのことだった。
「何があっても生きているってことはね」
「それはなんだ」
「ええ、ただね」
「ただって?」
「上城君前に誰かに言われたのよね」 
  樹里はその上城の青を見ながら話す。彼はもう剣を収めいつもの姿に戻っている。剣を持っていない普段の彼に。
「生きていればいいって」
「この戦い自体がね」
「そうよね。確かそれを言ったのは」
「銀月さんだったかな」 
 彼女に言われた記憶があった。それ故の言葉だった。
「そうだったかな」
「あの人だったの?」
「確かそうだったと思うよ」
「そう、あの人なの」
「銀月さんいつも僕に死なないで欲しいって言うじゃない」
「ええ、それはね」
 それはその通りだと樹里も言えた。彼女も聞いていることだった。
「あの人よく言ってるわね」
「それでだったと思うけれど」
「怪物との闘いだと。危ないところがなくなってきたわ」
「そうなんだね」
「前よりも楽に生きられる様になっているのなら」
 戦いの中でそうなっているのならというのだ。
「それは強くなったってことじゃないかしら」
「そうなるかな」
「そんな風に思うけれど」
「じゃあそうなのかな」
 上城は首を捻りながら樹里に応えた。
「僕は生きられる様になってきたのかな」
「それが強くなったってことじゃないかしら」
「そうなんだね。それじゃあね」
「最後まで生き残るわよね」
「うん、絶対にね」
 上城は樹里にそうすると答えた。
「僕は生きるから」
「そうしてね。本当にね」
「最後の最後までね」
 微笑んで樹里に述べる。そうした話をしてだった。
 上城と樹里は帰路に戻った。その中で樹里はこうした話題に変えてきた。
「クレープ食べたくない?」
「クレープ?」
「そう、何かね」
 女子高生にコンスタントに人気のあるそれをだというのだ。
「食べたくない?」
「そういえば最近クレープって」
「食べてないわよね」
「うん、そうだよね」
「だからね。それもあるから」
 それでだというのだ。
「クレープ食べない?」
「じゃあ駅前に行く?最近美味しい屋台ができたよね」
「そうね。スタープラチナの系列だったかしら」
「あのカラオケボックス?そういえば居酒屋もやってたよね」
「ゲームセンターもね」
 同じビルでやっている、経営は家族で行なっているのだ。
「カラオケボックスでいつも美味しいクレープ出してるけれど」
「それでなの」
「クレープ職人の人を雇ったのかな」
「そうなのかしら。とにかくあの屋台もね」
 そのスタープラチナの関係だというのだ。
「そうなのね」
「うん、今度は屋台もはじめたんだね」
「そうみたいね。じゃあ」 
 樹里は上城の話に頷いて述べた。
「そのお店に行ってね」
「うん、それでね」
 上城も応える。
「一緒にクレープ食べよう」
「そうしましょう」
 二人で笑顔で話してそうしてだった。闘いの後で二人は日常の中でも最も楽しい時に入った。それは上城にとっては掛け替えのない時になろうとしていた。


第四十五話   完


                   2012・9・7 
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