【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)
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03 離反
シャローム辺境を制圧した結果、もう後には引けなくなった反乱軍。
勝つか滅ぶか二つに一つなのだが、戦争というのは戦いの瞬間は短く、その間の準備が膨大なものなるわけで。
シャローム辺境部の統治という仕事が反乱軍の前に突きつけられたのだった。
「このたびは勝利おめでとうございます。
これは、ささやかですが反乱軍の資金に使っていたたげればと」
貿易都市バルナの代表が皆を代表して軍資金の書かれた紙を私に差し出す。
実際の資金は馬車などでゾングルダークの倉庫に収められているはずである。
街を守ってもらいながら、その態度が終始日和見だった事もあって、パルナの商人たちはかなりあせっているらしい。
実際にこの献上金のほとんどをバルナが出しているらしい。
私の血まみれの純白のドレスの修繕を無料で請け負ったのもその表れだろう。
遠慮なく便乗させてもらったが。
「ありがとうございます。
我々は帝国とは違います。
その証拠に、税金ついては一律40%に抑えたいと思っています。
これが、反乱軍リーダーであるデスティン・ファローダの署名いりの布告文です。
各都市ごとにお渡ししますのでご確認を」
各都市の代表の顔色が変わる。
少なくとも反乱軍が負けない限りこれでこれらの都市は反旗を翻さないだろう。
「エリー様でしたな。
今後の要求については貴方に尋ねればよろしいのか?」
問いかけてきたのは自治都市ファルサラの代表。
そのあたりは既に想定済みの質問である。
「正確には、私が陳情を受け付ける形になります。
反乱軍はリーダーの元で合議して決めているのです。
リーダーのデスティン、ゼノビア騎士ランスロット、そして占星術師ウォーレンと私がそのメンバーです」
実際に仕組みを決めたのは私だけど。
戦闘は向こうも準備があるからある程度の時間は取れるけど、日々のトラブルとかは待ってくれないし、その対処を間違えれば反乱軍への不支持に変わりかねない。
だからこそ、いち早く仕組みを決める必要があったのである。
「我々は帝国の打倒まで個々の都市の自治に関与するつもりはありません。
都市間の諍いについては、かつてと同じくロシュフォル教会にお願いしたいと考えています。
司教様。
よろしいでしょうか?」
「わかりました。
神の名の下に、公正で公平な裁きを心がけるよう努力いたします」
もちろん、教会司教には根回し済みである。
帝国下で弾圧された原因の一つに、この都市間調停がある。
国より権威がある場合凄くやっかいになるのだが、弾圧した結果がヒャッハーなので文句が出るとは思えない。
まぁ、ゼノビア復興時に確実に問題になるのだろうが、今はごたごたで反乱軍の足を引っ張られたくないのが優先である。
「エリー様。
一つお尋ねしたいのですが、この地に居た盗賊や賞金稼ぎなどが逃げ出して野に隠れているのはご存知かと。
これらの対処についてはいかにお考えなのかお聞かせ願いたい」
城塞都市バリケシールの代表が私に尋ねてくる。
これも想定していた質問である。
「現在、反乱軍はペシャワールへの進軍を計画しています。
野に逃げ込んだ盗賊や賞金稼ぎの掃討ですが、降伏した連中を使おうと考えています。
彼らは現在、工業都市アブデラをめぐる戦いで生じた死者の弔いと埋葬に従事していますが、この掃討を持ってその忠誠を見たいと考えています。
彼らの中に、街に対して害をなした者もいるでしょう。
その処罰については、これらの行為によって恩赦を出す事にし、野の連中の掃討時の降伏兵については都市ごとの裁きにお任せしたいと考えています」
私の説明に街の代表達は渋い顔をする。
そりゃそうだ。
この時点で反乱軍に寝返った連中についてはお咎めなしと言っているのだから。
だが、その先も帝国と戦う以上は戦闘経験がある連中というのは貴重である。
「これはお願いになるのですが、反乱軍は勝利を得るために勇者を求めています。
もちろん、その勇者達にもちゃんと契約金を払いたいと思っています。
彼らを集めていただけないでしょうか」
私の言葉に少し顔色が変わる街の代表達。
どこも復興などで人手が足りない状態で街の人間など出したくは無い。
つまり、夜盗連中を捕まえて下っ端はこっちに回せと言っていると気づいたのだ。
で、契約金については途中で彼らの懐に入っても私は知らないと暗に言っている。
飴と鞭できっちりと抱き込んだ事で、これらの政策についてついに反対はでなかった。
「では、今度は復興についてお話を。
このシャローム辺境は交易都市、工業都市、魔法都市などを抱えています。
また、街道も整備されているので、これらの都市間の産物を交易都市より販売する事でこの辺境を復興させます」
大雑把な区別だが、交易都市は交易都市間の交易によって潤い、工業都市と魔法都市はその名のとおり工業品と魔法品が特産物なる。
城砦都市というのは傭兵などが多く兵が特産品と言え、自治都市というのは食料品が特産物である。
で、ついでだが拠点となる都市は基本自治都市で、食料が集まっているからというのが大きかったりする。
人も人以外も食べないと生きていけないのだ。当たり前の話なのだが。
「また、交易都市パルナと交易都市ダスカニアとの交易協定が締結され、交易船が出ている事を先に話しておきます」
交易協定。
要するに、隣の面の街と交易をする事で双方の産業を育成しようという策だ。
シャローム辺境部とウォーレンの島は海を隔てるのみで、船で行き来ができる。
とはいえ、ウォーレンの島の人口は全部あわせて15000人おらず、私がいるゾングルダークの方が多い始末。
シャローム辺境部の生産力を満たすにはほど足りない。
だからこそ、豊かな消費地を用意しないといけないのだが、実はそれについては当たりをつけていた。
「現在、貿易都市ブライトンロックと交易協定を結ぼうと交渉中です」
隠しマップドラゴンズヘヴンは独立しているだけあって人口が多く、一都市平均50000人、島全体で250000を数えるとても豊かなドラゴンの楽園なのだ。
そして何よりも、まだこの時は妖術師アルビレオがいない。
反乱軍を支える豊かな後方地帯になってくれるだろうし、アルビレオに備えてある程度の兵力を残しておかないといけないな。
あ、もしかして拾ったドラゴンの親、ここに居るんじゃないか?
会議を続けながら、私はそんな事を考えていたのだった。
兵士をちゃんと戦場に送り届ける事というのは、それ自体が才能である。
基本徒歩だし、武器に荷物を背負って行軍だから疲れもたまる。
まぁ、このあたりは降伏したジャイアントやヘルハウンドあたりに荷車を引いてもらって行軍させればいい。
問題は魔法の別側面にある。
魔法というものの存在で女性兵士が当たり前かつ大量に戦場に投入されているのだ。
つまり、風紀が乱れる。
で、その状況でモラルが下がるとどうなるかという実例が私の目の前に広がっておりまして。はい。
口笛を吹くわ、卑下た視線で眺めるわ、女性側は敵意丸出しだわ。
降伏した連中を率いての残党掃討戦の前の一コマである。
デスティンやランスロット、ウォーレンはシャロームへの進撃の為に手が回らない以上、私が引き受けざるを得なかったともいう。
ファイターが80人、アマゾネスが50人の計130人が私を敵意の視線で見つめていた。
面白いもので、先の戦いでクラスチェンジした連中はそれだけ頭が良かったらしく、こちらが言う前に協力的だったりする。
とはいえ、全面的に従っている訳も無く、兵士達の横でお手並み拝見とナイトやバーサーカー、ヴァルキリーやアーチャー、ウィザードにウィッチ達がにやにやしているのがこちらから丸見えなのですが。
なお、敵側クレリックは協力強制という形だったので、こちらとの関係は友好的である。
これも先にロシュフォル教会に根回しをしていたのが効いている。
「黙れ!」
「姫様の御前だぞ!」
実際に隊を動かすギルダスとミルティンが叱り付けるが、聞きやしない。
あげくに、
「姫様って、夜の方も姫様なんですかぁ?」
「あら、腰を振って喜んだりして」
下ネタがらみは女性の方がどきづい。
あからさまな嘲笑をアマゾネスから頂いて、ため息をつく。
「ばう」「ばう」
「ぐぁ?」
私の護衛にとそのままついてくれているアラウンと、最近脱皮したばかりのドラゴンことポチ(命名)が私が侮辱されたのをわかったらしく『攻撃していい?』と私に尋ねかける。
お願いだから待機してて。
こんなのでも居ないと手が回らないの。
「私がこの隊を率いるエリーよ。
とりあえず、諸君に言っておく事が一つだけあるわ。
何かやらかしたら、全体責任なのでよろしく」
うん。
まったく聞きやしない。分かっていたけど。
だから、体に叩き込もう。
「なお、全体責任な理由を話しておくわ。
この呪文、範囲が絞れないのよ」
その一言で、兵達のざわめきが止まる。
まぁ、もう遅いんだけどね。
「天駆ける星々の輝きよ、我が下に集いて汚れし大地を浄化せん!
スターティアラ!!」
HP半壊した兵達への回復作業で出発は大幅に遅れたが、少なくとも兵達は私を侮る事はなくなった。
その後の掃討作戦は二日をかけて行われ、その掃討に成功。
その間にも志願兵などが志願した事で反乱軍は700人まで膨れ、200の兵をゾングルダークに残して進軍を開始した。
反乱軍先鋒はラワピンジを占拠。
シャロームの領主ギルバルド率いる帝国軍2000がこれを迎え撃つ。
ここにシャローム開放の戦いが始まろうとしていた。
兵はこちらの方が少ない以上、何処で迎撃するかが焦点となる。
敵の帝国軍は傭兵や夜盗崩れが主体で数は多いが指揮も低い。
辺境の戦いと同じで耐え切れたら勝ちである。
その為、防衛戦を行う場所は自治都市バンヌと定め、先に降伏した連中とランスロットを中心にした300をここに配置。
残り150はデスティン指揮でラワピンジ防衛とバンヌを攻める敵の背後を叩き、私率いる50人がゾングルダークとラワピンジを繋ぐ街道上にあるロシュフォル教会に陣取っている。
戦いは空中戦から始まった。
ホークマンとグリフォンのユニットが上空から襲い掛かり、こちらのグリフォンと戦闘する。
この迎撃はこちらが都市にいた事と洋上のオクトパスに気をとられた敵が攻撃を分散した事で成功し、第一波をしのぐ事ができた。
やはり、夜盗くずれや傭兵ばかりだけあって連携がとれていない。
オクトパスが海に居る事のこの安心感たるや。
主戦場が海岸線を走る街道沿いだから、いつオクトパスに背後を突かれるか不安で仕方ないらしい。
「バウ!」「バウ!」
アラウンが吠えて敵の存在を知らせる。
いくら夜の忍者が優秀でも、ヘルハウンドの鼻をごまかす事はできない。
「ニンジャよ!
同士討ちをしないようにね!」
明かりを赤々と灯し、森の影に隠れていたニンジャの姿を浮かび上がらせる。
「ばれては仕方ない!
敵リーダーの首をとれ!!」
別働隊は背後を突く為にその人数はそんなに多くは無いが、ニンジャがいるのが厄介だった。
とはいえ、敵とて計算外のものがここにいるなんて思っていなかっただろう。
「ぐぁぁぁぁ!!」
「ド、ドラゴン!!
何でこんなところに……」
このゲームユニットごとの移動速度の違いで各個撃破というのは結構できる。
で、以外に見落とされているのがLユニットの大きさだ。
特にドラゴン。
遅いわ、魔法に弱いわと評価がいまいちだが、こいつが盾として前衛に居る場合、おそろしくユニットが硬くなる。
おまけに教会という回復拠点に篭城しているのだから、簡単にはやられない。
「ええい!
リーダーだ!
リーダーを狙え!」
「了解!
かとんの術!」
「きゃっ!」
忘れてた。
ニンジャは後方だと忍術攻撃できるんだった。
火傷はたいした事無いが、連続で食らうとまずいな。
じゃあ、早めに決めちゃいますか。
私が手をあげると、隠れていたウィッチ達が一斉に呪文を唱える。
もちろん、私もその詠唱に加わった。
「閃光を操りて、我、この者を鎖で封ず影を打ち消せッ!
スタンスローター! 」
次々に敵のナイトとニンジャが麻痺で動けなくなる。
動けるニンジャ達が逃げようとして背後回り込んだアラウンやアマゾネスの弓についに動きを止めた。
「降伏しなさい。
悪いようにはしないわ」
「……わかった。
私はどうなっても構わないが、配下の者は手をかけないでほしい」
「約束します。
拘束しなさい!」
このナイト、リドリーと言うのだけど、シャローム領主ギルバルドの古くからの家臣だったらしい。
ニンジャみたいな特殊職それなりに有能が人が率いているだろうと当たりをつけていたが、案の定である。
で、彼経由でギルバルドの葛藤を知る。
知っていたけど。
「お願いです!
どうか、ギルバルド様とシャロームをお救いください!」
「わかりました」
もちろん、助ける事は確定事項である。
とにかく兵が足りない。
ゲームだったらリストラ要因だったろうに、後方の占領地の統治を考えたら使える人材はいくらあっても困らない。
ギルバルドとカノープスの関係も加えてデスティンに知らせる為に手紙をアラウンに走らせた。
二日目の敵の攻撃も飛行ユニットからはじまったが、連携が取れていないから航空優勢をとる事ができない。
その隙を突かれて、デスティンの部隊が敵の背後を急襲。
この攻撃に帝国軍は耐え切れずに崩壊。
攻めてきた1500の内、半分以上を失う大敗北を喫して貿易都市チャンジガルに撤退していった。
敵損害の750の内、死者が半分で残りは負傷・降伏。
こっちの損害は100なのだが、その半分は先の降伏組だったりする。
再編の為一日を費やし、降伏後にこっちに志願した連中で部隊を再編。
もちろん、再編途中でもデスティンは休んじゃいない。
ウォーレンを共に連れて城塞都市バハーワルプルにてカノープスと面談。
一度は断られたけど、カノープスの妹ユーリアに会ってヒクイドリのハネをもらい、カノープスを仲間にする事に成功する。
この結果、降伏したホークマン連中がカノープスの説得で協力してくれ、これ以後の航空優勢はこっち側に大きく傾く事になった。
四日目。
再編成が終わった反乱軍500は貿易都市チャンジガルに向けて進撃。
航空優勢を握っている反乱軍に対し、兵力は750とまだ勝っている帝国軍は一撃で勝負を決めようとチャンジガルより出撃。
ここで決戦が行われた。
場所は海岸と山が競った隘路で少数の兵で守れる反乱軍有利な場所。
この時点で、勝負はついたようなものだった。
「オクトパスが!
オクトパスが海から襲ってくる!!」
「味方のホークマンとグリフォンは何処に行ったんだ!?」
海からオクトパスに急襲され航空優勢下で攻撃を続ける反乱軍に対して、帝国軍は組織的抵抗ができずに崩壊。
カノープスが指揮するホークマンによる航空優勢下での追撃は信じられないほどの効果をあげ、帝国軍はチャンジガルに帰る事無く全滅した。
一方、私が率いる降伏兵を主体にした別働隊は、城塞都市サジガバード、魔法都市レニナカンを開放。
怪しい連中も多いが、スターティアラ一発で黙らせ、都市を開放する事でその不満を治めていった。
こういう手合いは勝ち馬に乗りたがる。
だからこそ、今勝っているのがこっちだと分からせるだけでおとなしくなるものなのだ。
あと、降伏した兵達をリドリーが管理したのも大きい。
『帝国の犬』と罵られながらもギルバルドについていた忠義の騎士である。
無能であるはすがない。
万一に備えてギルダスとミルティンに監視をさせていたが怪しい所もなかったらしい。
この時点でペシャワールに篭っているギルバルドとの兵力差は逆転していた。
とはいえ、城攻めとなるとちょっと厄介である。
「ご苦労様でした。
リドリー。
別働隊は、明日自治都市アナトリアを開放した後で本隊に合流してペシャワールに攻め込みます。
それに先立って、貴方を開放します」
「!?」
何を言っているのか分からないと言った顔をしているリドリーに対して、私は淡々と言葉を続ける。
「明日の決戦、ギルバルドの傍にいなさいな。
カノープスが説得するだろうけど、貴方もその場にいるべきよ。
ギルバルドを正しい道に導いてあげて」
「…………感謝を。
失礼」
私の言葉が理解できたらしく、一筋の涙を流したままリドリーは私の天幕から立ち去ってゆく。
控えていたギルダスとミルティンがびっくりしたようなあきれたような顔を浮かべるが知らん振りをする。
事、ここまに来ると勝つことではなく、どう勝つかが大事になってくる。
それが反乱軍占領下のシャローム統治にものすごく響いてくるからだ。
民の為に帝国に従う事を強要された忠臣が、反乱軍に加わる事はおおきな影響力になる。
あるのかないのか分からないけどカオスフレームが見えないならは、このあたりの行いはおろそかにしてはいけない。
「さぁ、明日も早いわよ。
この戦いを終わらせましょう」
戦いは自治都市アナトリアを私達が開放した時には既に終わっていた。
リドリーの説得によって、カノープスが反乱軍についた事を知ったギルバルドが無血開城し、彼はデスティンとの一騎打ちによって倒された。
そのまま止めを求めたギルバルドにカノープスが助命を求めデスティンはこれを了承。
こうして、反乱軍はシャローム地方全域を制圧したのである。
後書き
オリキャラメモ
リドリー ナイト
ギルバルドの家臣。『帝国の犬』と罵倒されているシャローム領主ギルバルドを見捨てなかった忠臣。
この手のキャラを増やす事で占領地行政を描いてゆく予定。
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