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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第1章
旧校舎のディアボロス
   第18話 十分な理由だ !

 
前書き
さて、何が十分なんでしょう? 

 
「貴方も速く逃げてください!」

 シスターが俺にそう言う。

「そうはいくかよぉ!」

 フリードがやたらとイライラしていた。獲物が逃げた事に怒り狂ってるのか?

「やれやれ。来てみれば、既にもう悪魔共がいないでわないか」
「何ぃ?無駄足ぃ?」
「いや、一人いるね」

 スーツを着た男と女ともう一人黒い服(ゴスロリって言うんだっけか?)を着た女の三人の堕天使が現れた。

「ヒュ~。もう逃げられないぜぇ!」
「それはどうかな」
「フッ。たかが人間風情が面白い事を言う」
「本ッ当!馬鹿ウケェ!」

 ゴスロリの女堕天使が腹を抱えて笑う。

「貴様はあの女の兄か!」

 スーツの女堕天使が訊いてくる。

「千秋が言っていた堕天使か?ならそうだが」
「そうか。貴様の妹には借りがあるのでな。貴様の首でも贈ってやるとするか」
「……やれやれ。ずいぶんと余裕だな?」
「当ッたり前でしょう!たかがちょっと力があるだけの人間が私達に勝てる訳ないでしょう!」

 まあ、実力が分からねえ今の段階で無闇に戦う気は無いが。
 とりあえず、ここは退くとするか。……無論、俺一人じゃないがな。
 俺は手に持っていたスポーツドリンクが入った袋を捨て、シスターの下まで駆け出す!

「「「「なっ!?」」」」
「えっ!?」

 堕天使達やフリード、シスターが驚愕の声を上げる。
 何故なら、俺は『雷刃(ライトニングスラッシュ)』をシスターの喉元に突き付けていたからだ。

「き、貴様ッ!?」
「おいおい、女の子を人質とか、えげつないねぇ!?」
「利用出来るものは何でも利用してるだけだ……」

 堕天使達は明らかに焦燥していた。
 やっぱりな。
 俺の中で予想は確証に変わった。

「動くなよ……」
「「「「………」」」」

 堕天使達は完全に無力化されていた。

「………」

 シスターの方はかなり怯えていた。
 ……怖い思いさせて悪いな。

「……貴様、そのままどうするつもりだ?」

 スーツの男堕天使が訊いてくる。

「とりあえず、退かせてもらう」
「ハッ!結局、ウチらが怖いんだぁ。このチキンがぁ!男なら掛かってこいよ!」

 ゴスロリの女堕天使が挑発してくる。

「……勝手に言ってろ」
「ぐぅ!?」

 挑発が通じなかったからなのか、ゴスロリの女堕天使が悔しそうにする。

「あ、そう言えば。おい、堕神父」
「んだとうッ!」
「こいつも拝借したぞ」

 俺は懐から丸い物体を取り出す。

「げっ!?」

 俺が取り出した物を見て、フリードは顔を引き攣らせる
 それはフリードが持っていた閃光弾だった。蹴りを入れたときについでに拝借した物だった。

「じゃあな」

 カッ!

 閃光弾を床に叩き付けると、部屋に閃光が走る。
 閃光で堕神父達が怯んだ隙に俺はシスターを抱え、家から出るとジャンプで屋根に登り、走るなり、跳ぶなりをしてその場から離れる。

「きゃっ!?ひゃあ!?きゃあ!?」

 動きが激しいせいか、シスターが悲鳴を上げまくっていた。

「喋ってると舌噛むぞ」
「ムグッ!」

 俺の言葉を聞いて、シスターは両手で自分の口を塞いだ。
 さて、とりあえずどうするか?このままじゃ、堕天使達に追い付かれるだろう。かと言って部長の所に行くのはマズイだろうしな。本来、シスターは悪魔の敵側の人間だ。それを悪魔側に連れていくのは色々と問題がある。
 だからって見捨てると言う選択肢は無い。
 イッセーに頼まれ掛けた訳だからな。イッセーは俺にこの子を助けろと言おうとしたが、そうすれば俺の身が危険になると思い、その言葉を口にしなかった。
 やれやれ。水くせえんだよあのバカ。それぐらいの事ぐらい、頼りやがれ。
 それに、この子は本来なら敵であるはずのイッセーを庇ってくれた。
 助ける理由は十分以上にあった。
 さて、この子の事をどうするかだが、この手しかねえか。なら、まず家に向かわねえとな。
 俺はさらに飛ばして家に向かう。


ー○●○ー


「ここは?」
「俺の家だ。ここで待ってろ」

 俺はシスターをリビングで待たせ、姉貴の部屋に向かった。部屋にあるタンスから姉貴の服を上下、適当に取り出す。そのまま、シスターがいるリビングに戻る。

「これを着ろ。姉貴のお古で悪いが」

 俺は服をテーブルの上に置き、廊下に出る。

「……あのう、着替えましたが」

 その言葉を聞き、俺はリビングに入る。
 シスターは斬られたシスター服じゃなく、姉貴の服を着ていた。サイズが大きいのか、少しダボダボだったが。

「あのう、この服は?」
「あの状態じゃ、動きづらいだろうからな」
「あ、ありがとうございます」
「それよりも、一つ訊く。お前、あいつらの下に戻る気はあるか?」
「えっ!?」

 シスターはかなり驚いた様な声を上げたが、やがて首を横に振った。

「なら、俺が家を出て、五分後に俺が向かった反対方向に逃げろ。俺が堕天使達を引き付けておく」
「っ!?」

 シスターは俺の言葉に驚愕の表情を浮かべる。

「ど、どうしてそこまでしてくださるんですか!?」
「ん?」
「ついさっき会ったばかりなのに……」
「そうだな。確かに俺とお前はついさっき会ったばかりだ。お前の事はイッセーの話してた事でしか知らない。普通の奴なら、ここまでやる義理はねえ」
「ならッ!」
「イッセーが助けようとした」
「えっ!?」
「それで十分だ。俺にとっては助ける理由になる」
「貴方は……一体……?」
「ただのあいつのダチだ。それ以上でも、それ以下でもねえよ」
「………」
「分かったら、さっさと逃げる準備をしてろ」

 そう言い、玄関に向かおうとすると…。

「あ、あのッ!」
「ん?」
「まだ、貴方のお名前を聞いてません」

 やれやれ、律儀だな。

「士騎明日夏。明日夏で良い。確かお前はアーシアだっけ?」
「はい。アーシア・アルジェントと申します。明日夏さん、また、どこかで」
「ああ。また何処かで、シスターアーシア」

 ……難しいだろうがな。
 そう思いながら、俺は堕天使達の下に向かう。 
 

 
後書き
はい、イッセーが助けようとすれば、明日夏にとってそれだけで十分な助ける理由になるのです。
 
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