真剣で武神の姉に恋しなさい!
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クリス登場
前書き
さすがにだらだらと日常パートをやるわけにも行かないのでクリスを投入します
ではどうぞ。
千李と大和が秘密基地を訪れてから一日置いて川神学園に転校生がやってくる金曜日早朝。
千李は川神院で一子の稽古をつけていた。実は昨日の夜千李がうっかり口を滑らせ転校生であるクリスがフェンシングの名手であることをいってしまいそれに反応した一子が今日決闘をするからそのために稽古をつけてくれと言い出してしまって現在に至るわけだ。
……うかつだったわねー。一子も百代程じゃないにしても戦いが好きなわけだから反応するのは分かってたのに……
昨日の失態を悔やみながら千李は一子のなぎなたによる攻撃を軽くいなしていく。
一子の攻撃は確かに一般人または並ぐらいの武闘家と比べればすばらしいものだが、千李にしてみればまだまだ甘ちゃんだ。
攻撃をよけ続けられ一子の額には汗が浮かんでいる。
「ほら。そんなぐらいじゃないでしょ一子。もっと打ち込んできなさい」
千李は軽く一子を叱咤する。
その言葉を聞いた一子は再度構えなおし大きな声で言った。
「押忍!!」
掛け声とともに一子は薙刀を振りかざす。
一子のやる気満々な姿を見ながら千李は微笑した。
……まったく頼もしい限りね。
その後二人の稽古は朝食の時間まで続いた。
「じゃあ私行くからお前らは先に行ってなさい」
ちゃっちゃと朝食を終えすでに千李は身支度を整えてクリスを迎えに行くために先に出ようと廊下に出たところで、百代が声をかけた。
「姉さん。転校生が可愛いからって手を出すなよ?」
ふざけ半分に百代が言うと千李は笑いながら返答した。
「お前じゃないんだからそんなことしないわよじゃあ行ってくるわ。一子!稽古の時言ったとおり今日は学校に着いたら体力温存しときなさいよ」
「はーい。いってらっしゃい千姉様」
一子はしっかりと返事をし千李もそれに頷くと足早に川神院を出た。
川神院を出た千李はクリスが泊まっているホテルまでの道のりを歩いてた。
……ふむ。ここら辺もあまり変わってないわね。
歩きながら千李は一年間空けていたせいで町がどのぐらい変わっているかを吟味していた。
「うーん。大々的に変わったところは見えないけど……。ん?」
ふと千李が歩みを止めた。
千李の視線の先にはビルとビルの隙間から少し見える建設途中の建物があった。
「何かしらねあれ……。おっとそろそろホテル前に行かないと」
千李は視線を戻す。
……後で調べてみる価値ありね。あそこ。
そのままホテルへ再度歩き出した。
しばらく行くと千李の目の前に目当てのホテルが現れた。
「ここね。えっとクリスはっと……」
千李は辺りを見回したがクリスの姿は確認できない。
……まさか寝坊?
彼女の頭に不安がよぎった。
クリスは確かに真面目で何でもそつなくこなしそうなイメージがあるが、その実かなり朝が弱い。
もし千李がドイツに行った頃のままであったならば今でもそれは健在だろう。
「まいったわね。何号室かは中将から聞いてないし」
悩んでいると後ろに大質量の気配と獣くささがした。
千李が振り返るとそこには白馬に乗った金髪美少女がいた。
「待たせてしまったな千李さん」
少女は凛とした声で言った。
この少女こそ千李が探していたクリスもといクリスティアーネ・フリードリヒだ。
クリスの登場に仕方に千李は軽くため息をついた。
「さてでは学校に行くとしよう」
千李の呆れ顔が目に入っていないのかクリスは馬を走らせようとしたがそれをいまだに呆れ顔の千李が止めた。
「待ちなさいこの馬鹿者」
「な!?ば、馬鹿者とはなんだ馬鹿者とは!!」
馬鹿者発言にクリスが馬上から千李に食って掛かる。
それを気にした風もなく千李は続けた。
「そのまんまの意味だってのよ。何でお前は現代日本で馬で通学しようとしてるわけ?」
「え?だって日本ではこれが当たり前なんだろう?だがなぜ自分以外で馬に乗っているものがいないのだ?」
クリスは不思議そうに辺りを見回した。
……そりゃそうでしょうよこの日本馬鹿が。
「とりあえず馬から降りなさい。首が疲れる」
「ああわかった」
言うとクリスは颯爽と馬から降りた。
その姿でも相当な絵になるのはまぁさすがと言うべきか。
「それで千李さん?なんで馬で通学してはいけないんだ?」
「別にダメってわけじゃないわ。今でも馬に乗るのは法令では違反じゃなかったはずだしだけどね」
「だけどなんだ?」
クリスの聞き返しに千李はまたため息をつきたくなった。
……この娘はもう少し自分で考えるということをした方がいいわね。
「いい?馬だって生き物なのよ?いくらお前が馬を操るのがうまいと言ってもどうにもならないことがあるでしょ」
その言葉にクリスは聞き返すことはせず小首をかしげた。
……コイツは……。
我慢できなくなったのか千李は大きなため息をついた。
「思いつかないなら教えてあげるわ。クリスその馬の馬糞の世話は誰がするの?」
千李が聞くとクリスは大きな声で笑い始めた。
「アハハハハ!な、何を言ってるんだ千李さん。自分の浜千鳥がそんな粗相をするわけないだろう」
そのままクリスは腹を抱えて笑い続けた。
……つーかその馬浜千鳥って名前だったんだ。
そんなことを思いながら千李が笑い続けるクリスを見ているとふと鼻腔に据えたような臭いを感じた。
臭いのするほうを一瞥するとものの見事に浜千鳥が粗相をしていた。
そしていまだに笑い続けているクリスの肩に手を置き耳元でこういった。
「お宅の浜千鳥君ものの見事にやっちまってるけど?」
その言葉にクリスが「え?」と言う反応を取り浜千鳥の方を振り返るとクリスの顔が驚愕に染まった。
「ど、どうしたと言うんだ浜千鳥!こんなこといつもならないはずなのに!?」
「多分はじめてきたところだから緊張して出ちゃったんじゃない?それよりそれの処理は誰がすんのかニャー?」
動揺を隠し切れないでいるクリスに対し千李はニヤニヤと意地の悪い視線を送る。
その視線に「うぅー」とうなるクリスであったがクリスのほうに向き直りもじもじとしながら言い始めた。
「せ、千李さんその、えっと……」
だがそこで止まってしまったおそらく先ほどまで自分の言っていたことが邪魔をして頼むに頼めなくなっているのだろう。
そんなクリスに対し千李は小刻みに肩を震わせながら聞いた。
「なに?」
……ダメ。クリスからかうの楽しすぎる。
その千李の様子にクリスの目じりに若干涙がたまり始めた。
……ヤバイ超可愛い。
その様子に今にも吹き出してしまいそうな千李だったがもしここで吹き出してしまえばクリスが本泣きするのは必然だろうと思い、必死に笑いをこらえながら携帯を取り出し川神院に連絡を取った。
「……ええ。そうそのホテル……正面に白い馬がいるから。うんよろしく」
携帯を閉じもはや半べそ状態のクリスに向き直ると千李は言った。
「川神院にいる修行僧の何人かに来てもらって浜千鳥をひとまず川神院で預かることにしたわそれでいいでしょ?」
千李の言葉にクリスはこくんと頷いた。
「はぁ。まったくとても強いように見えて全然泣き虫は直ってないわね」
そうたしなめすとクリスは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「まぁいいわ。それよりそろそろ行きましょう。学校に間に合わないわ」
「あ、ああ。そうだな行くとしよう千李さん」
学校と言う言葉に気を取り戻したのかクリスはぱっと明るくなった。
……単純。
「あと私のことは好きに呼んでいいけどもし学校で三年と離すときは先輩をつけるのを忘れないようにね。中にはそういう呼び方じゃないとダメな奴もいるから」
「わかった」
「じゃあ行くとしましょうか」
千李が言うとクリスは横に並び二人はそのまま二人仲良く通学することとなった。
道中千李がクリスに聞いた。
「クリスは島津寮に住むんだっけ?」
「うん。既に荷物も送ってあるからだいじょうぶだ」
クリス答えに千李は「そう」と答えると続けた。
「お前が所属することになってる2-Fには島津寮に住んでる奴らがほとんどだから仲良くね」
「わかった。日本の友達が増えるのは私としてもとてもうれしいことだから仲良くできるようにがんばるぞ」
そういうとクリスは手をぐっと握り締めた。
……まぁあんまり無理しすぎなければいいけど。
若干の不安は残ったが千李はクリスを信じることにした。
真面目すぎるところもあるが基本的にクリスはとてもいい子だ、冗談が通じないことは少し汚点かもしれないがそれもこれから直していけばいいだろうと千李は思った。
二人が話しながら登校しちょうど橋に差し掛かったところで昨日と同じように道着を着た男性が立っていた。
「またか……」
「どうしたんだ千李さん?」
千李が嘆息混じりに漏らした言葉に反応しクリスが千李の方を見る。
すると橋の上にいる男性が千李の存在に気づいたのか千李に声をかけてきた。
「川神千李さんですね?」
「ええ。そうですが貴方は?」
千李はこの男が何故ここにいるのかわかっていたがあえて聞くことにした。
すると男は軽く会釈をした。
「申し訳ありません。私古武術をやっている陰山と言うものですそれで今回貴方のおじいさまである鉄心氏にお相手をしていただきたく参ったのですが、貴方か百代さんを倒さなければ駄目だと言われてしまいまして」
「それで私と戦いに来たと。それでいいですか?」
千李は陰山が言い切る前に聞いた。
陰山は一瞬顔を歪ませたがすぐに先ほどような優しげな口調になり決闘を求めてきた。
「はい。そのとおりです。では今からでも」
「構いませんよ。ごめんねクリスちょっと遅くなるけど平気かしら?」
「ああ。私は大丈夫だ。それより千李さんの戦いが見れるんだこれほどうれしいことはない」
クリスは目を輝かせていた。
……このあたりは一子に似てるのよねぇ。
千李は持っていた鞄をクリスに預けると陰山に言った。
「そこの川原でいいですか?」
「はい。構いません」
相変わらず人当たりのよさそうな笑顔で陰山は答える。
二人はそのまま川原に降りていった。
川原で千李と陰山は対峙する。
そして陰山が構えを取ったときだった。
「いい加減本性出したらどうですか?陰山さん」
「本性?なんのことやら」
千李の問いに対し相変わらず陰山は笑みを浮かべながら答える。
その様子に千李がくつくつと笑った。
すると先ほどまで笑みでいた陰山の顔から笑みが消えた。
「なにがおかしいのですか?」
「いやなぁに、一生懸命いい人ぶって自分のことをさらけ出さずにがんばってるなぁっと思ったらおかしくって」
もうばれてるのに、と千李が続けると陰山はついに本性を表した。
「いつから気づいてたガキ?」
「てめーが私に話しかけてきたときからだよ」
陰山の問いに対し千李はいつものやさしめな口調から一転語気を荒げ始めた。
「つーかあの爺さんも馬鹿だよなぁ。お前みたいなガキとこの俺を戦わせるなんざどうかしてるとしか思えねぇぜ」
「ご託はいいさっさとはじめろ三流」
冷ややかな言葉で千李は答えた。
その言葉が気に障ったのか陰山は千李を睨む。
「おい。今何て言ったガキ?」
問いに対し千李が大きく吹き出した。
「何が可笑しいんだテメェ!!」
陰山は怒気を孕んだ声で千李に聞いた。
「いやだってさそんな今時アニメの悪役でも言いそうにない言葉を平気で使っちゃってるあたりが可笑しくって可笑しくって。これが笑わずにいられるか」
千李はそのまま陰山を挑発するように腹を抱えて笑い始めた。
「なめやがって!クソガキがぁ!!」
痺れを切らし陰山は突っ込んでくる。
千李はいまだに笑っている。
笑い声は既に興奮状態である陰山をさらにたきつけた。
そして千李の前にまでやってきた陰山が千李に拳を放つ。
「油断してんじゃねーよクソガキィィィィィ!!」
叫びながら陰山は勝利を確信した。
こんな正確だが陰山は普通に強いしかしそれはあくまで一般人からすればだ。
目の前にいるのは一般人とはかけ離れた力を持つバケモノ川神千李。
そんな彼女に気も使えないましてや感じることすらできない男の拳が届くわけもなく。
陰山の拳は千李がいたところを素通りした。
変わりに上からの強い衝撃が陰山を襲った。
「――――――っ!?」
声にならない悲鳴を上げ陰山は地に伏せる。
……な、なんだ何が起きた?あのガキはどこに?というかなんださっきの上からの衝撃は!?
混乱している陰山をよそに千李は地に伏している陰山の背中を踏みつける。
「ぐぇ!?」
カエルがつぶれたときのような声を出し陰山はもがいた。
「ふーん。意識があるのか。まぁ腐っても武術をやってただけはあるってことか」
だけど残念と千李は付け加え続けた。
「いくら体は丈夫だったとしてもテメーの拳はてんでよえーよ」
言うと千李は陰山から足を離す。
開放されたことで逃げ出そうとする陰山だったが今度は背中ではなくわき腹に強い衝撃が走った。
千李が陰山のわき腹を思いっきり蹴り上げたのだ。
まぁ思いっきりといっても力の十分の一にも満たない力だが。
だがそれでも陰山を吹き飛ばすには十分だった。
陰山は一度多馬川の水面でバウンドし水切りの要領で跳んで行ったかと思うと向こう岸の川原の土手にめり込み動かなくなった。
動かなくなったのを確認すると千李は静かに言い放つ。
「二度と私の前に現れんじゃねー三流……いや……五流野郎」
死合いが終わった千李にクリスが駆け寄ってきた。
「千李さん!アレはやりすぎじゃないか?」
「いいんだよあいつは。私の爺さん馬鹿にしたし、そもそも死合いをするときに礼儀を払わなかった。私はちゃんと挑んでくる奴は優しく相手をするけどああいう輩には容赦しないからね」
千李が言うとクリスは「そうだったのか」といい引き下がった。
「それより急がないと遅れるわねちょっと走るわよ」
「ああ。わかった」
二人はそのまま走って川神学園まで登校した。
後書き
どうだったでしょうか?
一日飛ばしてクリスを登場させてみましたが変なところありますかね?
次はワン子対クリスそして金曜集会の話までやります。
感想・ダメだし・アドバイスなどドシドシやってくださいお待ちしております。
では
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