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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第4話 新たな日常の現状

 
前書き
クロスものとしての設定回です。 

 
 ははは。

 目を背けていたんだが、やっぱりダメなのか。

 「海鳴市」「月村家」、この2つから連想するモノは………。

 はい、そうですね。「リリカルなのは」ですね………。

 おかしい。「ネギま!」の世界で、主人公の双子の弟に転生したと思ったんだが。何が起こっているんだ?

「おーい。サギ君。聞いてる?」

 気付けば、忍さんが目の前でひらひらと手を振っている。

「どうしたかな~?」

「いえ。こう何と言えば良いのかわからないんですが」

「うんうん」

「月村家は魔法使いというか、裏世界に関わっているんでしょうか?」

「あ~。なるほど、なるほど。どうも歯切れが悪い話し方だと思ったらそう言うワケね。そんなに幼いのに秘匿意識があるのは良いことね」

 ということで忍さんから教えてもらったのは、今後も踏まえて大変有意義なことだった。

 月村家はここ海鳴市を中心とした静岡県南西部を裏世界で管理している家系だ。

 ここでいう管理というのは、いわゆる裏世界全般、魔法や呪術、怪異(鬼、悪魔、妖魔、妖怪、魑魅魍魎から荒神、荒御魂といった祟り神なども含む人に仇成すモノの総称)が跳梁跋扈する世界を表の世界から秘匿する役割のことを言う。術者による一般社会への逸脱した行為への処罰や秘匿、一般人の怪異からの守護なども入るみたいだ。まぁ、「Fate/stay night」でいう遠坂家のようなものらしい。

 所属的には関西呪術協会傘下の中部魔術協会の所属になり、忍さん達のお父さんはそちらの重鎮らしい。
 もっとも表の会社経営の関係でご両親が海外を飛び回っているので、もっぱらその方面は忍さんが代理をしているそうだ。

 うん、関西呪術協会があるということは、「ネギま!」の世界から「リリカル」な世界に移ったというのではなく、いわゆるクロスした世界みたいだ。しかも、「夜の一族 (たぶん)」が関西呪術協会に所属とかワケわかんない。

 で、その他話しの中で出て来たキーワードを結びつけると予想通り関西呪術協会と関東魔法協会の仲は悪いみたい。

 うん、まぁ、あれだ。
 正確には同じ源流のはずの魔法使いと魔術師なんだけど、いわゆる魔法世界に所属する魔法使いと地球---そもそも旧世界なんて言う蔑称自体、魔法世界所属の関係者以外使わないらしい。こちら側の人間は地球または地球世界という---に所属する魔術師は明確に区別され、日本だけでなく全世界規模で魔法使いと地球の術者全般の仲は悪いらしい。

 ………、思いっきり魔法使いの家系なんだが。
 しかも「英雄(ナギ)」の息子とか。

 あ、ちなみにこの「英雄」だけど、魔法世界の「英雄」であって、日本では「英雄(笑)」という見方らしい。

 これは関西呪術協会の(おさ)の近衛詠春さんも同じようだ。まぁ、実際はもっと最悪だが。


  ☆  ★  ☆  


 古くは奈良平安の時代にさかのぼる陰陽寮から続く関西呪術協会---つまり日本の術者組織の頂点---の代々の(おさ)を近衛宗家が担ってきた。それが現関東魔法協会の理事近衛近衛門が若かりし頃に出奔したところからおかしくなった。当時は近衛宗家の将来性確かな有能な青年の1人が出奔して出て行っただけであった。それが、近衛近衛門が関東魔法協会の理事に就任する前後に近衛宗家が全滅したのだ。
 非常にきな臭い。
 もちろん、色々関与は疑われたが、その多くは仕事中の事故死であり、偶然だと片付けられた。
 だが、とにかく新たな長を選出しなければならなかったわけだが、宗家の唯一の生き残りだとしても、出奔し、しかも関東魔法協会の理事になっている人間、というか魔法使いに関西呪術協会の長を務めさせるわけにはいかず、結局、近衛分家で将来を嘱望されていた近衛ほのか嬢が、近衛近衛門の養女となることで近衛宗家を継ぎ、関西呪術協会の新たな長に就任することで決着した。

 あるいはここで、近衛宗家以外から新たな長を立てるという選択をしていれば良かったのかもしれない。

 時は二十数年前。後に魔法世界で「大分裂戦争」と呼ばれる大戦が開戦した頃である。

 関東魔法協会と繋がるメガロメセンブリア連合は彼らが旧世界と呼ぶ世界の住人に戦力を求めた。
 関西呪術協会はそれを拒否。
 何の縁もない---というか、潜在的以上に敵対勢力である---ところから戦力を求められてほいほいと出す者がどこにいよう?

 ただ、そんな中で、若い者や血の逸る者の中から「義勇兵」というカタチで戦争に参加する者が出て来る。これらの大部分は自らの力の研鑽あるいはその力を試す場として戦場を求めた者である。この中には後に「紅き翼」として知られる「青山詠春」もいた。

 それ以後も再三再四に渡り大戦参加の要望が関東魔法協会を通じて関西呪術協会へとあったが、長である近衛ほのかは断り続けた。

 が、ある日突然翻意し日本全国の傘下組織から人を集め、魔法世界へと送り出す。その際、後方支援・医療行為のみ行うとして、100人の担当術者と200人の護衛を送っている。
 なお、「近衛近衛門からの義理の親子としての圧力」「婚約者である青山詠春を守るため」等、この判断に不満に思う人々から臆測紛れの誹謗中傷が多々流れている。

 で、この300人が無事戻って帰れば良かったのだが、この日本の最精鋭とも言える優秀すぎる集団は、その優秀さ故に非凡な結果を出し、後方から前線へ、前線から最前線へと送られてしまう。当然、抗議はすれど満足な返答はなく、戦時故に流されてしまう。

 そして、悲劇は起こる。

 「グレート=ブリッジ奪回作戦」という魔法世界の歴史に残る激戦で、かの集団は最前線に引っ張り出される。事前の決め事は完璧に反故にされた。
 作戦中盤、序盤から押し込まれていたヘラス帝国は、隠し玉ともいえる最終戦力鬼神兵らを投入し戦線は大きく帝国側に傾く。そしてそれをひっくり返すため、連合側は最強戦力たる「紅き翼」を投入し、その名に違わぬ破壊力で、広域殲滅魔法らにより戦線をひっくり返す。

 連合の「英雄」の誕生である。

 が、その広域殲滅魔法により、日本から送り出された300人の集団は壊滅する。味方であるはずの「英雄(ナギ)」によって。
 これはわずかに生き残った数人が謀殺を恐れ、連合上層部から隠れながらなんとか日本へ帰り、報告した「事実」である。

 そしてそれ以前から、ただ「グレート=ブリッジ奪回作戦で全滅した」と謝罪も賠償もない報告のみで終わっていたメガロメセンブリア連合ひいては関東魔法協会と、関西呪術協会の関係に完全な溝ができる。

 そして魔法世界を救った「英雄(笑)」青山詠春の帰還と関西呪術協会の長近衛ほのかとの結婚。
 東洋最高の魔力と思われる近衛木乃香の出産。

 そして仲間を祝いに来た「紅き翼」の訪問と関西呪術協会の総本山への逗留。

 何故か復活したリョウメンスクナノカミとその再封印をする「紅き翼」。

 復活の原因の調査や発表もされぬまま、その功績?による近衛詠春の関西呪術協会の長への就任。

 ちなみに就任への組織内からの期待は、1.健全な組織運営、2.次期当主である近衛木乃香への教育、3.魔法世界でのネームバリューによる先の大戦での謝罪と賠償、そしてそれらの後、4.関東魔法協会との「対等」な組織交流、にあったそうだ。





 総て叶わなかった。





 次期当主である近衛木乃香へのつなぎとしてしか考えられてない新たな長、近衛詠春は完全なワンマン体制を敷き、彼と詠春派と後に呼ばれる自派閥以外誰も望んでいない「親関東」路線を取る。ちなみにこれは他派閥からは「関東への隷属」としてかに見られていない。
 近衛詠春は悲惨な大戦を経験し、「とにかくみんな仲良く」と考えていたようだ。

 結局、大戦初期から自分の意志で参加していた近衛詠春にとって戦争に参加するということは、そこで技量拙くあるいは運悪く死んだとしても自明であり、当然のことであり、その覚悟もあった。
 なので、戦争に参加して死んでも自業自得であると考えているのかも知れない。

 まぁ、自分の意志で参加していた人はそうかも知れないが、「グレート=ブリッジ奪回作戦」で味方に殺された仲間は、自分の意志ではなく上からのあやふやな指示での強制参加であり、その身内にとってそれでは納得いくわけがない。当たり前である。

 なおかつ、母親を亡くした自分の娘近衛木乃香を「普通」に育てるため、何故か関東魔法協会のお膝元である麻帆良へ独断で送っている。

 ぶっちゃけ、つなぎの長でしかない者が真の正当な後継者を敵対組織へ送ったのだ。

 喧々諤々、組織はもうずたぼろである。

 というのが、現在の日本の裏世界の組織の現状である。



  ☆  ★  ☆  



 バカ親父殿、何やってくれちゃってるのかな………。





 どう考えても素性がバレるとまずいよなぁ、コレ。



 などと思いつつも、忍さんには父親がしたことを謝罪しつつ、素性を全て暴露。





 何故かって?

 隠し通せると思えなかったからさ!

 役者が違いすぎるわ!!

 前世のことを話さないだけで精一杯だわ!!!



 で、まぁ、村でのナギ教(笑)の態度などを交えつつ本音で話し、「できれば、日本でナギの息子としてではなく一人の一個人として生きたい」という希望も述べた。



 で、結論から言うとその望みは叶えられた?



 忍さんから「実は………」と話されたのは、すずかちゃんがオレを助けてくれた時のこと。

 池から出たオレは生命力が尽きかけた瀕死の状態であり、すずかちゃんがオレの血を吸って自分の血を戻すという「夜の一族」の吸血鬼の異能によって、オレの生命力を継ぎ足してなんとか事無きを得たらしい。これは後の考察で、魔力がかなりあるオレの血をすずかちゃんが取り込んで、生命力として血を戻したから、たまたま助かったというのがわかっている。

 まぁ、この時点で「夜の一族」について説明されてしまったのだが。
 これは死亡フラグじゃないよね?


 すずかちゃんには、

「(吸血鬼なんて)恐くないの?」

と聞かれたが、オレとしては「魔法もあるんだから吸血鬼もいるよね。(少なくとも麻帆良に真祖が1人いるし)」程度の認識でしかなかったので、

「ありがとう、すずかちゃん。おかげで助かりました。すずかちゃんはオレの命の恩人です」

と頭を下げたら、泣かれてしまった。

 まぁ、他人(ひと)とは違うということをネガティブに思ってしまうのはしょうがない。

 「よしよし」と頭を撫でたら、涙は止まったが今度は真っ赤になっちゃった。こういうスキンシップはあまりされたことはないみたいだ。

 なんか、忍さんとノエルさん、ファリンさんからの視線が生暖かい。そこ、「あらあら、まぁ、まぁ」とか言わない!

 さて、じゃぁ、日本に来てからずっと不審に思っていたことを聞こうか。

「ところで、このオレの体からずっと立ち昇っている湯気みたいのは何なんでしょう? 別に体に悪いモノじゃ、ないんですよね?」

「「「「えっ?」」」」

「え?」 
 

 
後書き
この世界は「ネギま!」と「リリカルなのは」がクロスしている世界になります。作品が続けば、クロスしている世界が増やせると良いな、と思ってます。
海鳴市が静岡にあるのは単に関西と関東の間にある地勢が欲しかったからです。
「夜の一族」としての異能は血を吸って戻すという行為によって、「生命力を含む身体能力が一時的に上がる」というもので、この段階では吸血鬼化しない、という設定です。 
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