久遠の神話
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第四十五話 二度目の激突その十二
「それがね」
「違うわよね、確かに」
「何でだろうね」
上城は首を捻って言った。
「それは」
「怪物なのにね」
「そうそう、戦わないんだよ」
「自分からは決して向かって来ないわね」
「絶対にね。何か仕掛けられても消えるみたいだし」
「変わった怪物よね」
「確か神話のスフィンクスは」
上城はここでもギリシア神話を念頭に置いて話をした。
「あれだよね。旅人に謎ときを仕掛けて」
「それでよね」
「答えられなかったら食べるっていう」
「そうした怪物だったわね」
樹里もこう言う。
「確か」
「朝は四本、昼は二本、夜は三本」
上城はスフィンクスの出す謎を具体的に話した。ギリシア神話におけるかなり有名な話の一つである。それこそ多くの者gが知っている。
「その生き物は何か」
「人間よね」
「オリジナルのスフィンクスは答えられて自殺したけれど」
「あのスフィンクスはまた違うわね」
「うん、戦わないでね」
「私達に色々なことを教えてくれるけれど」
「何でかな」
上城は首を捻りながら述べた。
「それって」
「この戦いについて色々知ってるみたいよね」
「知ってることは間違いないわね」
それは樹里も感じ取っていた。スフィンクスは少なくとも二人よりはずっとこの戦いについて知っているとだ。
それでだ。彼女も考える顔でこう言うのだった。
「じゃあスフィンクスに何か聞けば」
「それでわかるかな」
「どうかしら。ただ知っていても」
「それでもだよね」
「お話してくれるかしら」
樹里はこの時点でどうなのかと思っていた。知っていてもそのことを話すかどうかはまた別の問題であるからだ。
「果たして」
「スフィンクスって何か」
「秘密主義よね」
「うん、あのスフィンクスもね」
この辺りはオリジナルと変わらないというのだ。
「そういうところあるよね」
「確かにね。じゃあ聞いてみても」
「言わない可能性があるね」
「むしろ高いかしら」
その知っていることをだというのだ。
「少なくともそうあっさりとはね」
「言わないだろうね」
「じゃあどうしようかしら」
樹里は上城の横で腕を振って述べた。
「ここは」
「難しいところね」
「うん、まあスフィンクスとは何時会えるかわからないし」
いつも当然前に出て来る。このことは他の怪物達と変わらない。
「その時に聞いてみて」
「答えてくれなくてもよね」
「仕方ないってことにするべきかな」
上城は腕を組んで考える顔になって樹里に述べた。
「そうするべきかな」
「そうよね。その時にね」
「聞いても教えてくれないなら」
「諦めてよね」
「それでいくべきかな」
これが上城の考えだった。結局それしかないというのだ。
そうした話をしながら二人は共にいた。そしてこんな話をした次の日だ。
上城はまた戦っていた。場所は学校の屋上、幸いにして共にいるのは樹里だけで見ている者は他にはいなかった。
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