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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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01 旅立ち

 その昔、伝説のオウガバトルというゲームがあった。
 DVDゲーム全盛のこの時代において、押入れの奥にSFCと共に眠っていたそれを遊んではまった。
 恐ろしく難しいし、多種多様な物語に悲劇あり救いのなさあり、それでいて希望ありとゲームってこんなに面白かったのかと感動したものだ。
 で、その続編のタクティクスオウガもまた違う魅力でどはまりしたのたが、全体を俯瞰できて戦争をしていたオウガバトルが私は好きだった。
 さて、そんな伝説のオウガバトルで何気に思っていた事が一つある。
 ゲーム最初の反乱軍の蜂起。
 よくあれだけの軍勢を集められたよなと。
 その解答が、今目の前に広がっていたりするのですが。

「つまり、よその世界から適正者を見つけてきてはスカウトしていたという訳ですね。
 占星術師ウォーレン」

 見た所、表情が読めない老人だなというのが私の最初の印象だった。
 彼と私の間にはタロットカードがその境界を示すかのように宙に浮かんでいる。
 私を表しているのだろう眼前に浮かぶタロットは『女帝』。
 うわぁ……女オピニオンリーダー役かよ。
 そして気づく。
 隣に浮かんでいる『皇帝』のカードの前に現れた赤髪の男性。
 あ、こっちが本命じゃない。

「与えられた運命に従いますか?
 逆らいますか?
 その選択はお任せしましょう」

 多分巨大な魔法使って神おろし状態なウォーレンさんなんですが、気づけよ。
 私、黒髪の日本人!
 しかも女子高生!!
 こっちの心のつっこみなんて知らず、赤髪の男性ことデスティン・ファローダが運命に導かれてその『皇帝』のカードを手に取る。

「聖なる神々よ!
 我らがリーダーに正義と勇気を与えたまえ。
 そして我らに栄光と勝利を!!」



 

 古の昔、

 力こそがすべてであり

 鋼の教えとやみを司る魔が支配する

 ゼテギネアと呼ばれる時代があった。








 で、なぜか私たちは反乱軍本拠地フェルナミアから一路南の小島に向かっていたり。
 小船を用意して、波に揺られておぇ……酔う。酔ってしまう。

「何でこんな小島になんて行こうって言ったんだ?
 エリー」

「話しかけないで……おぇ……」

 エリー。
 これが私の個々での名前である。
 相良絵梨なんだけど、外人特有の呼び方だと絵梨よりエリーの方が呼びやすいとかなんとか。
 もちろん、私はアマゾネス扱いだ。
 弓なんて撃てないのだけど、クレリック系に転職すればいいやと割り切る。
 うん。
 で、適当な所で反乱軍から離脱して後方にて帰る手段を考えよう。
 というか、あたりはつけてあったりする。
 カオスゲートだ。

「バウ!」
「バウ!」

 デスティンのペットなんだろうヘルハウンドの片方の首が私を見据えて心配そうな顔をしてやがる。
 それでもう一方の顔はちゃんと周囲を警戒しているあたり便利なものである。
 小島に到着。
 あ、なんかヘルハウンドが地面の匂いを嗅いでる。
 放置しておけば埋もれた財宝を発見できるだろう。

「ここに埋もれた財宝があるのよ。
 これからの戦いで必要になるだろうから使えばいいわ」

 地面に足がつくとやっと気分が楽になる。
 使いもしないショートボウと矢はそのまま船においたまま。
 ゲームと違って装備が一つではなく四つであり、このあたりはタクティクスオウガっぽいなと思ってしまったり。
 で、それ以上に食料だの薪だのテントだのが。
 移動の際にヘルハウンドの背に乗せなかったらその時点で私の冒険は終わっていた。きっと。
 レザーアーマーとバトルブーツの着心地はあまりよくはないが、いつか帰る時の為に召喚時の制服は大事にしまっていたり。
 なお、デスティンはレザーアーマーとバトルブーツにレザーウィップという装備だったり。

「エリーは何でそんな事知っているんだ?」
「リーダー候補だった特性ってやつじゃない?
 大丈夫。
 私はあなたをリーダーだって認めているわよ」

 デスティンの怪訝そうな声に私は適当にかえす。 
 というか、まだ気分が悪いのに質問なんてするな。
 あ。
 ヘルハウンドが何か掘り出した。
 どうやら財宝を発見したらしい。

「そういえば、あのヘルハウンド名前ってあるの?」
「あるさ。
 大事な仲間だからな。
 アラウンって言うんだ」

 気づいてみたら日がかなり高くなっている。
 今日中にヴォルザークにあるウォーレンの城に行くのは無理っぽい。
 たしか、この島の拠点全部を制圧しないといけないんだっけ?
 結構時間かかるなぁ。

「そのアラウンが何か見つけたみたいよ。
 これを売り払えばしばらくは大丈夫ね」

 ゲームでは毎日昼に決算があり、占領地からの寄付金と派遣ユニットのコスト支払いが発生していた。
 強いユニットを派遣しまくるとあっという間に財政破綻という苦い思い出は今でも私の記憶の中に残っている。

「バウ!」
「バウ!」

「凄いな!
 これ王冠じゃないか!
 たしかにエリーの言うとおり、これは高く売れるぞ!」

 砂浜に寝そべっていた私がデスティンの声にむくりと起き上がる。
 今、なんて言った?
 王冠?
 そして尻尾ふりふりでアラウンがくわえている王冠を見てがっくりとひざをつく。
 よりにもよってこれかよ。
 いや、嬉しいんだけど。

「どうしたんだ?エリー。
 まさか外れなのか?」

「外れどころか大当たりよ。
 ドリームクラウン。
 伝説のクラス、プリンセスにクラスチェンジできる超レアアイテムよ。
 売るよりも、誰か信頼できるアマゾネスに使わせたらいいわ。
 あーっ!
 当たりなのに資金繰りやり直しじゃない!!」

 砂浜の波の音とばうばうと息を吐いてるヘルハウンドの声に気を取られつつ、私は砂浜に大の字になってがっくりする。
 世の中そんなにはうまくいかないって、何かが頭につけられたのですが。

「ちょ!
 あんた何しているのよ!!」

 起き上がった私がデスティンに指差すと、その腕にまとわれた純白のローブがいやでも目に映る。
 ま、まさか……
 おそるおそる手を頭に触ると、金属質の王冠のようなものが。
 というか、生暖かいよだれもべっとりとついているんですが。おい。

「なるほど。
 これはたしかに伝説のクラスだ」

 腹抱えて笑っているんじゃないわよ!デスティン!!
 何片方の頭をひねって「?」みたいな顔しているのよ!そこのヘルハウンド!!!
 純白のドレスについていたバトルファンでデスティンの頭をぶっ叩こうとしてかわされる。

「何をするんだい?エリー?」

「何をじゃないわよ!!!
 信頼できるアマゾネスって言ったじゃない!!」

 怒り狂っている私を前に、何を言っているのか分からないと言った顔でデスティンが一言。

「だから、信頼できるアマゾネスに使ったじゃないか。
 今の所、君以上に信頼できるアマゾネスは知らないし」

 こっ……このいけめんが……
 そんな顔で、そんな笑顔で断言されたら言い返せないじゃないか。

「こっ、こっ、この………」

「この?」
「「ばう?」」

 まだ、分かっていないデスティンに私は思いっきり八つ当たりの罵声を浴びせる事しかできなかったのである。


「馬鹿デスティン!!!」




 二日目 貿易都市ダスカニア

 貿易都市ダスカニアを開放した時、私とデスティンとアラウンしかいなかったが、即座に歓迎式典が行われたのは、デスティンのカリスマのおかげである。
 そうなのだ。
 そうであって欲しい。

「おはようございます。エリー姫様。
 今日も良い天気ですわ。
 お昼までに城塞都市ゼルテニアも開放するなんてなんてすばらしい心意気なんでしょう!
 応援していますからね!!!」

 ああ。
 宿屋の女将さんの視線がめっちゃ痛い。
 明らかに、住民の視線が『流浪の姫君とその従者』になっていたのが困る。
 ランスロットの情報は知っていたので、先に聞いてみたらあっさりとゼルテニア行きの航路をばらすし。
 今、この瞬間にもウォーレンとその仲間達の査定が行われているはずなんだが、これでデスティンが失格にならない事を祈るしかない。
 で、早船の結果、昼前に城塞都市ゼルテニアも開放。
 これもゲームと違うなと思ったのは、カオスフレームが無い事も合って戦場では都市人口の半分を、戦場外では都市人口の三割を恒常的に徴収するそうだ。
 納得。
 そうでないと軍が維持できないし、その後のゼノビア再建ができないだろうからなぁ。
 なお、神聖ゼテギネア帝国の税率は暴利そのもので六割で良心的というからさもありなん。
 そりゃ、ゼノビアがスラムになる訳だ。
 それはさておき。

 この街でランスロットと顔を合わせたのだが、いきなり姫君に対する礼をとってきましたよ。彼。
 あわててリーダーはデスティンと納得してもらうために一苦労が。
 まあ、男同士の一対一の勝負ってやつでデスティンが勝ったからなんだが。
 あ、ランスロットの配下にギルダスとミルティン発見。
 まだファイターだったけど、この二人近いうちに頭角出してナイトにクラスチェンジするんだろうなぁ。多分。
 ゼルテニアは隠されていた街だけあって、ゼノビア騎士団残党の実質的な根拠地だったらしい。
 ここにいる兵士達がこれからの反乱とゼノビア復興の中核となる。
 そして、私と同じ世界から引っ張ってきたというのはどうもいないらしい。
 そのほとんどは同じ世界や似た世界から引っ張ったみたいなんだが、まぁそのあたりはカオスゲートの仕業にしておこう。
 どうせ今考えてもわからないし。
 外見って大事だなぁと切実に思う今日この頃。
 あっという間に、『流浪の姫君』の二つ名が定着してしまいましたよ。
 彼らゼノビア騎士団残党はデスティンのカリスマと私のこの衣装にリーダーと副リーダーとして認めたらしい。
 あれ?
 私、副リーダー?

 で、三日目朝に昼にウォーレンの待つヴォルザークに。
 もちろん、三日目までの資金はしっかりいただきました。
 面子はデスティンにランスロットとアラウンが前衛で私が後衛である。
 で、戦いそのものは私の力も能力も使う事無く終わったのだけど、何しろ異世界人だからと魔法を知らない。
 で、ウォーレンを師匠として魔法の勉強をば。
 プリンセス補正凄い。
 全部の魔法が使えるってのは伊達ではないが、せいぜい戦闘で使えるのは4つが限度だろう。
 そのうちひとつはプリンセス奥義のスターティアラ。
 レベルが低いからMPも少なく、大規模範囲魔法がスターティアラしか撃てないのが難点だけど、多分これだけでも勝てる気がする。
 残り三つは回復魔法と補助魔法を入れておこう。

 こうして、私のオウガバトルは始まった。
 ゲームではない戦争が。 
 

 
後書き
オリキャラメモ

アラウン ヘルハウンド
 名の由来は冥界の王。
 赤い耳をした地獄の猟犬をひきつれ、青ざめた馬に乗る狩猟家として地上を練り歩くという。 
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