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妖精の十字架

作者:雨の日
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~It works together⑥~

急いで甲板に戻るとすでに戦闘は終盤に差し掛かっていた
おもに戦っていたのは、ほかの貴族の護衛魔導士で、襲撃してきた闇ギルドを撃退している
すると、背後から俺を呼ぶ声とともに駆け足の音が聞こえてきた

「ミラ!無事か?」

「うん・・・戦闘はみんなにまかせっきりだったけど、避難はすんだわ!」

「了解残りはまとめて俺がやる。下がってろ」

護衛の魔導士にも同じようなことを言って下がらせる
俺は口元に魔力を集中させた

「・・・覇竜の、咆哮ッ!」

わざと外して怪我は負わせない。もちろん船を壊すこともない
俺の膨大な魔力の量に、闇ギルド団員は勿論、味方の魔導士も唖然としている

「即刻立ち去るか、遣り合うか、好きにしろ・・・」

その言葉にみなが我に返りいちもくさんに海に飛び込む。正確には、海にある自分たちの船に、だが
船が去って見えなくなるのを確認した後、俺とミラは船室に避難させた貴族の方たちを迎えに行く。一応魔力探査を行うがなんの反応もないから闇ギルドは完全に撤退したのだろう。だが、ボラにオークションの品を全て持って行かれた可能性が大きい

「・・・みなさん、もう大丈夫です」

「闇ギルドは俺らで追っ払った。とりあえずは安全だ」

恐る恐る部屋から貴族が出ていく。俺はケビンに駆け寄り、肩を貸しながら立ち上がり、言った

「悪い、つらいとは思うが少し確認してほしいことがある」

「な、なんでしょう」

足取りもおぼつかない。いや、あまりの恐怖に腰が抜けてるやもしれん

「・・・宝物庫の中身が全部やられた可能性がある。それを確認してほしい」

「え!?」

申し訳ない気持ちで肩をかしながら船底に向かった






「・・・・やはり、全部盗られましたね」

・・・やられたな

「すまない。必ず取り戻す」

「いえ、そこまでしてもらわなくて大丈夫です。盗まれる覚悟ぐらい出来てますよ」

しかし表情は暗い
その時、ミラがなにか思い出したようだ

「!クルス!さっきね、何人か捕まえたんだけど、その中に見たことある顔があったの!昼間の奴!」

昼間・・・。あぁ絡んできたあいつらか
しかし今このタイミングでなぜ話した?

「なにか聞き出せる、かな?」

「・・・可能性は薄いが聞いてみるか」

再び肩を貸して、甲板に戻った




「ん・・・んぅ」

スキンヘッドの男が縄についたまま目を覚ます

「ん、起きたか」

俺の顔を見るなり、男は目を見開き、驚きの表情をなんの遠慮もなく表した

「あぁ!!あ、あなたは!」

ん?あなたは?

「兄貴と呼ばせてください!!」

「・・・却下」

突然すぎる。しかも、闇ギルドの人間を舎弟に持つことなどしたくない

「だって!昼の戦闘かっこよかったっす!惚れました!兄貴と」

「却下!」

「・・・クルス、落ち着いて本件から逸れてる」

ミラになだめられ体から溢れそうになっていた魔力をなんとか抑えた

「・・・俺、闇ギルドなんか入りたくなかったんです。ただ金が必要で・・・。だから!」

「だから正規ギルドの奴にとりいろうと?」

せつない表情の男の顔を月明かりが照らし、俺の冷たい視線が突き刺す

「・・・ちがいます。せめて何か人のためになって置きたくて。だって俺、評議員に突き出しますよね!?いや、むしろ突き出して俺にやり直すチャンスを下さい!!」

「お前を評議員に突き出すのは当たり前だ。しかし、やり直すチャンスはただでやるわけにはいかない」

「ねぇ、ギルドの情報をくれない?」

ミラが横から口を挟んだ
成程、こっから情報を得る流れに持っていくのか

「・・・わかりやした」

そして、以外にも細かいところまで話してくれた。どうやら本当に闇ギルドに入ったことに後悔しているらしい
一通り情報をもらうと、いろいろと焦らなければいけないことがうまれた
簡単に説明すると、このまま放っておくと、s級クエストから10年クエスト級のレベルになってしまうほど危険な状態だ

「・・・助かった。お前は俺らに協力してくれたと評議員に口添えしておこう」

「いいっすよ・・・これが俺なりのけじめです」

俺は少しだけ口角をあげてミラとともに船室に急いだ

「・・・いろんな人がいるんだね」

「あぁ。闇ギルドの奴らには上に感化されてるだけの奴も多いみたいだな」

悲しいことだ。やめたくてもやめられない。そしてつかまって裁かれる
今の世の中、闇ギルド=悪。だからな

「すまん、急いで船を進めてくれ」

ケビンは頭に氷を載せながらこちらを向いた

「いそがないと!人命がかかっているんです!」

ミラの剣幕が凄かったのか、ケビンは急いで操縦士に速度上昇を促した
そして、かなりの速度で走った船は、20分で港に着いた

「お二人はこれからどうするのですか?品がない以上ここから先の護衛は必要なくなりますが?」

「安心しろ、こっからバイクで5分のところにさっきのギルドの本拠地がある。潰して、財宝とり返してやるよ」

そんな、そこまでしなくていいです。と言いたげなケビンの言葉を待たずにミラが

「大丈夫ですよ?クルスは強いですから。ね?」

首を少し傾けて俺を信用しているまなざしを向けてきた
もちろん俺は期待を裏切るつもりはない

「と言うわけだ。悪いがしばらくここで待っててくれ。すぐに戻るから」

「お、お気をつけて!」

ヤムルに殴られたところがまだ痛むだろうに、無理して立ち上がる
その姿に俺はケビンの商売に対する思いの強さを感じた

「ミラ、つかまってろ」

バイクに跨り、アクセルを入れる

「えぇ、いつでもいいわ」

俺は一気に加速して、港から闇ギルドに向かって走り出した 
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