とある星の力を使いし者
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第182話
「こうしてお会いするのは初めてですね。
どうも、星の守護者さん。
私はダゴン秘密教団所属、レギンズ=アウラエと言います。」
レギンズと名乗る男は右手を胸に当てて、小さくおじぎする。
アンファルという男と違い、圧倒する威圧感は感じられないが相手はダゴン秘密教団。
麻生が知らない魔術を使ってくる可能性もあるので、警戒を緩めない。
自分を警戒しているのが分かったのか、柔らかい笑みを浮かべながら近づいて行く。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。
私は幹部ですが、他の幹部と比べ私自身、戦闘能力は一般人と変わりません。」
「信じると思うか?」
「まぁ、口では何を言っても信じて貰えないでしょうね。
ですので。」
レギンズは足元にあるテニスボールくらいの大きさの、尖った石を拾いながら。
「百聞は一見にしかず。」
次に彼が行った行為、それは。
自分の腕にその尖った石を刺したのだ。
一度ではない。
何度も何度も何度も何度も。
自分の腕をめった刺しにしても、レギンズの表情は少しも崩れない。
穏やかな笑みを浮かべたまま、自分の腕を刺し続ける。
皮膚は剥げ、血は勢いよく吹き出し、最後には骨まで視認するくらい傷が深い。
後ろでは誰かが吐くような呻き声が聞こえる。
おそらく、住人の誰かがレギンズの自傷行為を見て、吐いたのだろう。
麻生も気分が悪くなったが、警戒を一瞬たりとも緩めない。
「このように私は彼らと違い、法則に身を置いていません。」
(法則?)
聞き慣れない言葉に首を傾げる。
そこ言葉は以前、キオッジアで戦った謎の男も同じ言葉を言っているのを思い出す。
「なので、貴方が銃を創り、私の眉間に向かって撃てばそれで死にます。
これで分かりましたか?
貴方がそれほど警戒する必要もないのですよ。」
レギンズはそう言うが、麻生は不気味に思えた。
どうして弱点とも言える事を敵に話したのか全く分からない。
その不気味さがさらに警戒を強めた。
「はぁ・・・警戒をさらに強めてしまいましたね。
まぁいいでしょう。」
傷口を触ったり、どれほど動くかを確かめながら動かない駆動鎧に歩み寄る。
レギンズは銃で眉間を撃てば殺せると言っていたが、どうにも信用できない。
下手に動く事はできず、麻生は静観し続ける。
「素晴らしい。
人間は実に素晴らしい。
こんな兵器を魔術も使わずに知識だけで開発するのですからね。」
駆動鎧のフォルムを撫でる。
興奮しているのか息遣いが荒い。
「私はね、人間が大好きです。
他の幹部達は下等生物を見下していますが、私は違います。
このような兵器を作る人間は大好きです。
特に学園都市。
一度は行ってみたいですね。
バルド様に言いつけられていなければ、すぐにでも向かいたいくらいです。」
楽しそうに語るレギンズ。
すると、奥の通路から鉄パイプを持った男が一人現れた。
額が切れ、服が泥だらけの所を見る限り、暴動に参加していた住民であるのは間違いない。
男は駆動鎧の傍にいるレギンズを、学園都市の科学者と判断したのか両手で鉄パイプを握り。
「この野郎がぁぁ!!」
走り、レギンズの頭を鉄パイプで殴ろうとする。
しかし、レギンズは視線を男ではなく麻生に向けたまま。
「もう一つ、好きな理由があります。
それは」
鉄パイプがレギンズの顔の横まで迫った所で、あろう事か彼は傷だらけの腕で鉄パイプを受け止めた。
渾身の一振りで殴られた骨は折れ曲がる。
「ひっ!?」
あまりの異常行為に男は息を呑み、動きを止める。
対するレギンズは相変わらず頬笑みを絶やさず、男の首に手で掴む。
掴んだ手の指は男の首にめり込んでいく。
「あっ!?・・・がっ!」
首に指がめり込む痛みと、締め付けられる苦しみで声が出ないようだ。
助けようと思っても、本能が身体にストップをかける。
めり込んでいた指から太い血管のような管が、視認できるくらい浮かび上がる。
男は苦しむ声をあげながら、生気を失っていき、やがて最後にはミイラのような姿に変わっていく。
打って変わって、レギンズの折れていた腕が再生していき、抉れていた肉も内側から新たな肉が再生していき治癒した。
これらの光景を見て、レギンズが男の生命エネルギーを吸い出しているのは間違いなかった。
「人一人には莫大なエネルギーが詰まっており、そのエネルギーを兵器として使えばそれは計り知れない威力を発揮します。
故に私は人間が大好きです。
兵器を作る思考に兵器に活かせるエネルギーも持っている。」
笑顔を浮かべながらミイラになった男の死体を、適当に放り投げながら語る。
人間が好きとレギンズは言ったが、その『好き』は歪みに歪んでいる。
何より彼は人間を見ていない。
人間が作る兵器を、人間のエネルギーを使った兵器が最終的に好きなだけであって、人間が好きと言っているのは所詮、彼の兵器を生かす為に必要だから好きと言っているだけである。
「マッドサイエンティストが。」
「心外ですね。」
がっかりと言った感じに肩を落としながら。
「さて、そろそろ実験を開始しましょうか。
ちょうど、数人ほど人間もいますしね。」
レギンズと目が合ったのだろう、後ろで何人かが短い悲鳴をあげる。
麻生は身構える。
あの時は本能に従ったが今回は自らの意思で動く。
今も本能の警報が鳴り響いているが、黙って彼らを見捨てるわけにもいかない。
足のベクトルを変化させ、数メートルの距離を一瞬で詰め、左手の掌底でレギンスの顎を打ち上げようと考え、ベクトルを変化させ一瞬で近づいた瞬間。
どこから取り出したのか弾が二つしか入らない護身用の拳銃が握られ、接近した瞬間麻生の眉間に銃口を向けられていた。
「なっ・・・」
「実験開始です。」
引き金が引かれ、銃弾が発射される。
麻生の直感ともいえる本能が今までにないくらいの警報を鳴らした。
全力で防げ、と。
無意識に両手に星の力を集め、手を重ねて、銃弾を受け止める。
ただの銃弾ならこれほどまでに防御をとる意味はない。
そう、ただの銃弾なら。
受け止めた銃弾の威力は凄まじく、星の力を纏った両手をもってしても止められず、そのまま後ろに吹き飛んでしまう。
地面を滑りながら、住宅街やレンガの壁を破壊しながら後ろへ飛んでいく。
「ぎがあああああああ!!」
弾丸の威力は衰える事無く、麻生を貫こうとしている。
レギンスは何ならかの魔術を使い、弾丸を強化した。
それも星の力を使っても防ぐのがやっとのくらい。
(これが、奴らの魔術で強化されたのならッ!)
両手に纏っていた星の力を弾丸に流し込む。
彼らの魔術や生物は星の力が弱点。
魔術で強化された弾丸にも効果が期待できる。
案の定、星の力を流し込まれた弾丸はひびが入り、最後には粉々に砕け散った。
周りを見ると、最初の位置からかなり吹き飛ばされたのが分かり、急いで元の場所に戻る。
全身を強化していたため、背中でレンガの壁を破壊していったが怪我はない。
能力を使ってすぐに戻るが、そこにはミイラの姿になった住民が地面に転がっていた。
付近にはレギンズの姿は見えない。
(姿を隠して、不意打ちを狙っているのか?)
と、考えている時にある光景を見て疑問に思った。
助けた住民の数は六人。
最初にレギンズに殺された住民を追加すると七人の遺体が転がっている計算になる。
なのに、この場にある遺体の数は八つ。
(これは一体・・・・)
答えはすぐに出た。
動きを止めている駆動鎧の一つから音が聞こえた。
バゴボゴベギ!!、と骨をかみ砕くような生々しい音が。
視線を向けると駆動鎧がでこぼこにへこみながら変形していた。
頭ともいえる部分や、膨らんだ胸部装甲など全体的にへこんでいき、徐々に西洋の鎧のような形へと変えていく。
駆動鎧の中心には巨大な目玉が現れ、それを中心に全身には血管のような管が万遍なく広がっていく。
また肩にも目玉が現れ、ギョロリと麻生を睨む。
「さぁ、始めましょうか。」
レギンズの声は身にがっちりと纏う鎧のような駆動鎧から聞こえた。
「科学と魔術の混合兵器による実験を!!」
後書き
更新が遅れてしまって本当に申し訳ないです。
出来る限り早く更新していきます
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています
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