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転生者拾いました。

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蒼風の谷
  おぼろに

 
前書き
すみません。また公開設定忘れてました。 

 
「セリナ!援護頼む!」
「了解!」

 悠々と佇むキザ男にセリナの援護を受けつつ躍り掛かる。
 
「 Donner・Magier!Beine wie Blitzschlag(雷の如き脚)!」
「うらぁぁ!」

 添付魔法を身体に纏い思いっきり剣を振りかぶり袈裟懸けをかけ、ついで切り上げる。
 しかし手応えがない。

「挨拶もなしに突っ込んで来るとはやはり蛮人だ。」
「どういうことだ!」
「名乗れっていってるんだよ、平民風情が!」

 こちらの攻撃は全く通らないからてっきり幻かと思ったが相手の足蹴がオレのすねに当たった。実体があるのかよくわからない。
 
「だが、平民風情が名乗るべき名はないか。なら貴きボクが麗しき名を聴くがいい!
 ボクはサイモン・K・イースト、東部王国の第一王子だ!」
「サイモン・K・イースト!?おまえが!」
「サイモン様と呼べ!」

 サイモンの右手に突如として大剣が出現し、指揮棒を振るうが如く片手で振り回す。
 ただ、得物が大きい分隙も大きいはずだ。

「ぐっ……!?」

 しかし隙らしい隙が無い。あの細身のどこにこんな力があるんだ。
 一旦は受け止めたが一撃で手がしびれた。故に握力がなくなっていく。

「はっはっはっ!このボクにかなうわけがないだろう!」
「いちいちうるせー!」
「Donner・Magier!Pfeil des Donner(雷の矢)!」

 セリナの援護射撃を受けて一旦さがり、体制を整える。
 しかし手がしびれたためいつもの武器が使えない。

「カズヤ、これを!」
「!サンキュー!」

 セリナが自身の細剣(レイピア)を腰から抜いて俺に渡した。さっきまで持っていた直剣に比べ格段に軽いレイピアは手がしびれていても落とすことはないはず。

「いくぜ!」
「どう足掻いても無駄だ!」

 オレはレイピアを握りしめ、凄まじい速さで連撃を入れるが効果が見られない。
 どうすれば……。
 思考の間も連撃は止めずサイモンの体を貫く。いくら刺してもまったく変わらない。

「どぅしたのかね?平民!」
 
 大剣がフルスイングされ壁を抉りつつ近づいてくる。
 寸前のところでかわすも大剣は二周目三周目と回っており、不用意に近づけなくなった。

「セリナ!」
「うん! Donner・Magier!Eingehende Telegramm Issenn(来電一閃)!」

 稲妻がセリナを中心に四方八方に走り、あたりを焦がす。
 フレンドリーファイアを防ぐためオレは一心に稲妻を避ける。その間もサイモンから目を離さない。
 当たってはいるが効いた様子はない。

「平民は自らの敵を倒すのに同胞をも傷つけるのかね?嘆かわしいことだ。」
「うるさい!」

 今度はレイピアに魔力を纏わせての刺突。単純な物理攻撃が通じないなら魔法を持って倒す。
 オレの手から黒い魔力が迸り次第にレイピアを包み、元の白銀の輝きは失われ、代わりに漆黒の輝きが宿る。
 それをまっすぐサイモンの心臓めがけて撃つ。
 狙い違わずレイピアは大剣に阻まれることなくサイモンの胸を穿ち、おまけとばかりに纏わせていた魔力は解放して追加ダメージを与える。

「ぐあぁぁ!!??」

 ようやくダメージらしいダメージが入ったが、サイモンが断末魔をあげると量子状になり崩壊した。

「なん、なの?」
「魔法体、だったのか?」

 あまりに衝撃的だったから油断なく警戒する。

「いやはや驚いた。あれを倒すとはね。」

 突如背後から男の声が聞こえた。
 振り向けばそこにはさっき倒したはずの男がいた。

「あれを破ったのは君たちが初めてだ。一応賞賛しておくよ。」
「どう、いうこと、だ?」

「魔法ということだ、平民。」

 今度は反対から同じ声が聞こえ、そちらも見る。
 こっちもサイモンだ。似ているだけの人間じゃない。瓜二つ、いやそれ以上にそっくりだ。

「第二ラウンドといこうか。」
「今度は手加減しなしだ。」 
 

 
後書き
光り輝く闇の念
唄う巫女の声

次回 煉獄 
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