リリカルなのは 3人の想い
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6話 黒木 七実side
目を開くと知らない天井でした。
「なんというテンプレ」
「何を口走っているんだ?」
声の方を向くと、クロノが椅子に座ってこちらを見ていた。
膝の上の読みかけの本が置かれているあたり、結構長い間気を失っていたのかもしれない。
身を起こそうとすると、腹にひきつるような痛みが走る。
「い……つつ……」
「大丈夫か? 一応手当はしたが激しい動きはしない方がいいぞ」
おおう、クロノ君が優しいよ。
「俺の味方はお前だけだよ」
「まあ、怪しい奴とはいえ流石に目の前で吹き飛ばされたら。心配もするさ」
常識人クロノここに推参ってか。
「お前さんは優しいねえ、それに比べてあの年m」
ビュン!
風切り音がしたと思ったら耳の横を魔力弾が飛んでいった。
その魔力弾は扉越しに撃たれたようで扉に風穴が空いている。
………え?
「あらごめんなさい手がスベったわ」
「は……ははは、ま、全く気をつけて下さいよ」
大きな大きなのぞき穴ができてしまった扉を開けて、リンディさんが入室してきた。
思わず乾いた笑い声が口からでる、地獄耳とは恐ろしいものだ。
「ええ、安心して次は間違いなく当てるから」
「まじでおっかねえ!!」
何この人、怖すぎんですけど。
そしてずんずんとこちらに歩いて距離を詰めてくる、美人が近づいてくることに、普通ならどきどきするのだろう。
だが俺はというとリンディさんが一歩近づくごとに、まるで処刑台に一歩近づくような錯覚……だと信じたいものに襲われて、とてもじゃないがそんな余裕はなかった。
冷や汗が吹き出る、体が震える、あまりの恐怖に心臓が激しくビートを刻んでいる。
そしてついにとうとう目の前にリンディさんがそびえ立った。
いや、表現的におかしいのは理解してるが、もうそう表現してもいいぐらいに威圧感がパネェ。
「ねえ、ひとついいかしら」
「は! は、ははははい! 何でしょうか!?」
クロノが隣で哀れむような顔でこちらを見ている。
そんな顔するぐらいなら助けろよ!
「あなたは私たちに敵対する意志はあるのかしら?」
「ありませんありませんありません! 全くこれっぽっちもありません!」
「あら、そう残念」
残念とか言ったよこの人!
「ならよければ私達が地球まで送り届けましょうか?」
「ああありがたき幸せ!」
用はそれだけだったのか、リンディさんは背を向けて悠々と歩き出した。
完璧に部屋から出たところで、蛇に睨まれた蛙状態から解放され、思わず安堵の溜め息が俺の口から漏れる。
「大丈夫か?」
そんな俺を見かねたのか、クロノが声をかけてきた。
「心配するぐらいなら助けようとか思わねえのかよ?」
「すまないが無理だ」
「ですよねー」
何故かクロノと少し打ち解けた気がした。
「そういやお前の名前ってなんていうんだ?」
知ってるけどやはりここは下手なことをして不信感を持たれるわけにはいかず、名前を聞いておく。
「クロノ・ハラオウンだ。そっちは?」
「俺はクロキだ」
俺の名前を聞くとクロノは不可解そうな顔になった。
「日本名は姓と名前があるはずだが?」
「俺名前の方嫌いなんだよ」
七実とか何だよ明らかに女じゃねえか。
だから2人にも名字で呼ぶように言ってるしな、まあ五也はともかくキョースケは元から名字でしか人のこと呼んでないから問題なかったけどな。
「まあ、短いつきあいだと思うけどよろしく頼むわ」
「短いか……、そうなるのは難しいと思うけどね」
え? 何そのフラグ発言。
▼▼
はい、見事に巻き込まれフラグでした。
クロノ曰く現在アースラはロストロギア回収のためにとある世界に、停泊(?)中らしい。
まあここまでは問題ないだろう、実際地球に来たのだって似たような理由だったはずだ。
問題はそのロストロギアのほうだった。
面倒なんで端的に纏めると、リアルバイオハザード的な。
ちゃんと滅びきった世界だったらしく、幸か不幸か死体しかなかったらしい。
まあ少なくとも局員達には地獄だろう。
クロノ曰く肌はグズグズに腐り落ち、ところどころ白い骨をのぞかせ、全身から腐臭をまき散らしながらリアルな腐った死体が近づいてくるとか。
まあしかも残念なことに現実は無情らしく、体にいくら魔力弾を打ち込もうが吹き飛ばそうが何度でも立ち上がり。
もういっその事死体だからということで殺傷設定で頭を打ち抜きもしたらしいが、一体どうやって動いてるのかそれでも襲いかかって来るという悪夢。
時には腕のみとかが地面をはいずってきたとか。
そんなこんなでロストロギアに的を絞って探してるらしいけど、ロストロギアの反応は全ゾンビからも出てるらしく捜査は難航中だとか。
まあ、現在は空を飛べる奴等で空中から、ゾンビを凍らせれるクロノが地道に凍らせながら探してるらしい。
そしてその後のクロノの愚痴は聞き流した。
「どーすっかねえ」
どうしようもねえけどさ。
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