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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第十二幕 「スカウト合戦と笑わない兄」

 
前書き
原作にはない件を追加してみたりする 

 
前回のあらすじ:惨劇回避のオルコット家、その代償


昔の話だ。とにかく兄に追いつこうと足掻いていたユウは、その努力の範囲に格闘技を入れようとしていた。しかし身体能力が化け物級の兄と対抗するのに真っ当な格闘技では勝てない。そこでユウはとにかく空手、少林寺、合気道を初めとする様々な格闘技を、時には古武術やらの類まで手を出しまくった。その結果ユウが辿り着いたのは、昔何処の誰が書いたとも知れない武術の指南書だった。実家の書斎の奥でほこりをかぶっていたそれに記されていた戦法。それこそ今ユウが使う“貴家(さすが)流”という拳術。その指南書に書いてあった内容は、格闘技を知らぬ作家が想像で描いたような荒唐無稽な内容だった。
例えば「拳を立てて一撃目を入れてその衝撃の瞬間に拳を折って二撃目を入れて物質を粉砕する」だの「1秒間に100発以上の拳を叩き込む」だの「極限まで鍛え上げた一本貫手で相手の肉体を突き破り、体内に存在する視神経を引きちぎる」だのetc・・・etc・・・

だが、その頃のユウはどこかおかしくなっていたのだろう。彼はその指南書に載る胡散臭い“奥義”なるものを本気で使うための特訓を開始したのだ。無論結果は言うまでもなく失敗、めでたくユウの最大の黒歴史となった。が、何とも恐ろしい事に、ユウはその奥義のいくつかについて“惜しい所までいっていた”。そのことを兄から指摘されて以来、ユウは“人間やってできないことはそうそうない”という考えを持つようになったのだ。

とはいえ結局兄には勝てず、その頃から兄と共に体力作りや組手をやるようになったのだが・・・ある意味それはユウにとっての失敗だった。なぜならユウはそもそも“兄がどれだけ異常な存在か”をしっかり理解しておらず、兄と同じ運動量をこなしていたのだ。そして、兄に形だけとはいえ着いていけている自分が周囲から見てどれだけとんでもんない存在と化しているかを自覚していなかったのである。
だからこそ、あの試合に多くの一年生女子達がドン引きしていた(一部の特殊な性癖の生徒は別だが)ことも、逆にあの戦いに惹かれた変人共に目を付けられたことも、彼には全く自覚がなかった。

そして、それが後にちょっとした波乱を呼ぶことになる事も、もちろん彼は気付いていなかったのであった・・・・・・



 = = =



どうも皆さんこんにちは、世界の佐藤です。現在食堂に居ます。
今日の朝ごはんはサンドイッチと野菜ジュースです。朝、あんまり食べれない性質なんで。
しかし流石IS学園というか、サンドイッチ一つとってもコンビニのそれとは美味しさがダンチですね~。野菜ジュースとかブレンドがあるんですよ?思わず「コーヒーかよ」と呟いてしまいました。とまぁそれは置いといて・・・

昨日まで男子の周りには客寄せパンダの見物に来た子たちが(たむろ)していたんですが、今日は少々様子が違うようで。
ワンサマーは相変わらずなんですがユウ君の周りが、何というかあれです。
一言で言えば、濃いです。

「という訳でだねぇ・・・ぜひとも君にはボクシング部に入部してもらいたいんですよ!一緒にデンプシーロールをマスターしましょう!!」
「何を馬鹿な事おっしゃいますか!!彼には我が空手部こそふさわしい居場所!ともに伝統的空手の常識を打ち破って海外回ったりしましょう!!」
「いやいやここは我ら柔道部にぜひ!!今ならサービスに私が寝技とか教えちゃうよ?」
「お前たち何を言っているんだ!あの突撃力、我ら伝統ある陸上部にこそ・・・」
「部員が足りないんです!人助けだと思って合気道部に・・・」
「我ら格ゲー研究部でモーションキャプチャのお手伝いを・・・」
「サッカー、やろうぜ!!」

「ど、どうすればいいんだこれ・・・」

明らかに周囲とは毛色が違う、というか具体的には2年生が結構混じっている集団の熱烈スカウト合戦のど真ん中で涙目になってるユウくん。
原因は言わずもがな、昨日ユウ君が見せたスタンドと勝負が出来そうな突き(ラッシュ)である。
いくらISに乗っていて鍛えてるからってあの近距離パワー型としか思えないパンチはとてもじゃないが人間の出来る動きではない。もしそんな人間離れした実力を持った、しかも世界中を見ても貴重な男性IS操縦者を自分の部に招き入れることが出来れば・・・その宣伝効果は計り知れないものがあるだろう。

ぎりぎりぎり・・・

ん?何だこの音。まるでスプーンが力ずくで押しつぶされているような音だな。
何所からしているのか知らないけどまあいいか。
ワンサマーも結構な実力を見せつけたが、インパクトの強すぎたユウくんがすべて持って行ってしまったようで一夏の周りにスカウトはほとんど見当たらない。つーかむしろ「助かった・・・」って顔でユウ君の方角を見ながら十字を切っている。やーい見捨てられてやんのー。・・・あ、ごめんなさい別にユウ君が嫌いとかそういう訳では・・・って私は誰に謝ってるんだ。
お、織斑先生が来た。

「お前たち、いつまで食べて・・・というかスカウトしているつもりだ!さっさと教室へ向かえ!!」
「「「「はい!!」」」」
「や、やっと解放された・・・」

ほっと一息ついたのもつかの間、スカウトのせいで食事が全く進んでいなかったユウ君は急いで残りを口の中に放り込み、そそくさと食器を片づけ始めた。やはり男性操縦者はどうあがいても苦労する定めらしい。


みきみきみきみき・・・

んん?なんだこのスプーンがターミネーター染みた握力で圧縮されるような音。さっき聞こえた音と何か関係が・・・?と思って周囲を見渡した私の目に飛び込んできたのは―――

「ユウが・・・ユウが俺をほっぽり出してあんな訳の分からん変人女共の毒牙に・・・!?ゆ、許さん・・・絶対に許さんぞ貴様ら・・・」
「・・・ぎゃぁぁーーー!?よ、妖怪っ!?」

丁度周囲からは見えない敷居の隙間に、血涙を流しながらスプーンを握力のみで圧縮しながらぶつぶつと呟く男の姿が!!

うっかり言葉にして叫んでしまったけど私は悪くねぇ!!いやもうこれ立派な妖怪でしょ!妖怪きりきりスプーンみたいな名前の!!・・・という冗談は置いておいて、そこにいたのはユウ君のお兄さんの承章さんだった。
いつからそこにいたのかは知らないが、背中からは殺意の波動に似たオーラが溢れ出ている。
なるほど、これが噂の“ブラコンの波動”だろうか。

「なぁ、そこの君」
「は、はい!なんでしょうか?」
「ユウは・・・俺の可愛い弟は、どの部に入ると思う・・・?」
「え、え~・・・そうですね。何か収拾がつかなそうですし、このままいけば
 生徒会が介入して半強制的に生徒会メンバーになるんじゃないですか?」

おそらくこのままいけば更識会長がどこからともなく湧いて出て、なんやかんやでワンサマーと一緒に連れて行くに違いない。という予想の下の発言に、すっと目を細めたジョウさん。なんか顔が怖いです。

「・・・そうか。半強制的・・・生徒会か・・・そうか」

え、何ですかそのリアクション?何で親の仇を見つけた復讐者(アヴェンジャー)みたいな殺気を放ってるんですか?もしや、私ったら間接的に生徒会にジョウさんを(けしか)けてしまったんじゃ・・・?
音もなくどこかへ行ってしまったジョウさん。・・・大丈夫だろうか。会長は裸エプロンとか平気でしちゃう痴女だけどすごく強いよ?痴女だけど。(※痴女の部分は佐藤さんの勝手なイメージです。)あんなのでも一応IS学園の暗部にいる人だよ?まぁ止めないけど。

と、突然服の裾がくいっと引っ張られる。見ると同室のベルーナ君がこちらを見上げていた。
上目遣い・・・だと!?ショタと青年の中間くらいという絶妙な外見年齢がまた私の内なる欲望を・・・って言ってる場合じゃないか。

「どうしたの?」
「・・・時間がない」

あっ、と思い周囲を見ると既に殆どの人が教室へ行ってしまった後だった。
まずい・・・このままでは織斑先生の愛の出席簿が!!
不真面目キャラになった覚えはないので急いで教室に行かなければ。

「・・・じゃあね」
「教えてくれてありがとう!ベルーナ君も遅れないようにねー!!」

そういって手を振り、私はダッシュで教室へレッツゴーするのだった。



そして授業が終わった放課後、私の耳にある情報が入ってくることになる。
それは、『生徒会長が1年2組の男子生徒と決闘する』というものであった。

「ワタシハシリマセーン・・・ナニモシリマセーン・・・」
「佐藤さん、どうしたんだろう?」
「前から思ってたけど佐藤さんってたまに変だよね」
 
 

 
後書き
親善大使「俺は悪くねえ!」
負完全『僕は悪くない』
佐藤さん「じゃあ誰が悪いの?」

多分作者の責任だが海戦型は謝らないのです。 
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