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戦国異伝

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第百二十五話 独眼龍の上洛その十一

「確かにな」
「では東北はあの者が手中に収めますか」
「間違いない、伊達家は水色じゃが」
 これが伊達家の色だ、この家も色で飾っている。このことは織田家や武田家等天下の名のある家と同じだ。
 それでこう言ったのである。
「全ての色を従えてみたいわ」
「織田家の青にですな」
 佐々が応えてきた。
「赤も黒も」
「無論水色もじゃ」
「ですな、全ては」
「ただ、色はよいが」
 ここで微妙な顔になる信長だった、そのうえで言うことは。
「闇は嫌じゃな」
「闇、ですか」
「それですか」
「うむ、闇は危うい」
 それはだというのだ。
「全てを飲み込みそのうえで塞いでしまう様に思える」
「闇といいますと」 
 闇と聞いて言ったのは竹中だった、彼もまた信行のことを聞いていてそのうえで述べたのである。
「どうも近頃世にあっては」
「闇がじゃな」
「はい、戦国の世故でしょうが」
 まだ竹中も気付いてはいない、彼にしてもだ。
 それでこう信長に言ったのである。
「やはり闇が所々にありますな」
「戦乱のせいじゃな」
「どうやら」
「戦国の世は一刻も早く終わらせる」
 信長の第一の夢だ、彼の天下布武にはまずこれがある。
 そしてそのうえでなのだ。
「誰もが笑っていられる世にせねばな」
「必ずや」
「そうでなければ意味がない」
 天下を統一してもだというのだ。
「手は打っていくぞ」
「畏まりました」
「それにしても戦国の世のせいだけではないな」
 信長jはその鋭い勘で気付いた、とはいっても完全ではないがだ。
 そのうえでこう言ったのである。
「本朝には昔から異形の影がある」
「異形ですか」
「その影が」
「それが何かはわからん」
 このことは信長も知らない、だからこう言うしかなかった。
 だがそこにはっきりと不吉なものを感じていた、それでだったのだ。
「土蜘蛛、鬼、色々な名があるが」
「全てあやかしの類であります」
 生駒が言う。
「そういったものは。それに」
「もうおらぬか」
「平安の頃に全て消えております」
 これが生駒の見たところだ。
「影も残ってはいませぬ」
「だから気にすることはないか」
「そう思いまする」
 こう主に述べる生駒だった。
「さすがに」
「鬼や土蜘蛛は人ではないか」
 信長は微かに思ったがそれはすぐに自分で打ち消した、そのうえで袖の中で腕を組みそして言ったのである。
「ではよいな。話を変えるとしよう」
「次はどのお話で」
「竹千代と猿夜叉じゃ」
 家康と長政のことだった、次の話は。 
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