八条学園怪異譚
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第二十九話 神社の巫女その十
「それ位じゃ」
「二十ですか」
「そうじゃ」
「多いですね」
「何、八百万の中のほんの二十じゃ」
博士はその程度に過ぎないと話す。
「多くはないぞ」
「そうなんですか?」
「実際には八百万では利かぬしな」
日本の神々はそこまで多いというのだ。
「さっきも言ったが次から次に増えておるしな」
「だからですか」
「そうじゃ、まあとにかくあの神社に行った時はな」
「わし等がおるぞ」
大天狗がここでまた二人に言って来た。
「友達もおるから安心せよ」
「凄い先輩がおられてもですか」
「それでもなんですね」
「うむ、面倒な娘だがな」
とにかくこのことは否定されない。
「夜はいつも飲んでいるが気にするな」
「わかりました、それじゃあ」104
「今晩にでも神社の方にお伺いします」
二人は大天狗にこう話してそのうえでこの日に神社に行くことにした、このことを決めてからだった。
博士の研究室を出てから二人で高等部の方に歩きながら話をした。愛実から聖花に言う。
「とう思う?」
「神社の先輩のこと?」
「そう、凄い人みたいだけれど」
話すのは彼女のことだった。
「どうなのかしらね」
「お会いするのが、よね」
「心配だけれど」
こう言うのである。
「厄介な人らしいから」
「天狗さん達が言うにはね」
「天狗さん嘘吐かないからね」
誇り高い種族なのでそれはない、天狗はそうしたことはしないのだ。
「だから間違いなくそうだから」
「そうよね、面倒な人だっていうのはね」
聖花も愛実のその言葉に頷く。
「間違いないわね」
「本当にどうした人かしら」
「お酒大好きで酒癖が悪くて」
聖花はこのことを言う。
「しかも毎晩飲んでるっていうから」
「それが問題よね、私達夜に行くのよ」
その夜にだ。
「それを考えたらね」
「ええ、絶対にその飲んでる時に行くから」
「問題よね、どうなるのかしら」
「不安ね」
とにかくその先輩への不安は尽きなかった、だが行くと決めていた。
それでこの日の夜にその学園内の神社に二人で行った、境内に入ると早速烏天狗達が二人を迎えに来た。
「やあこんばんは」
「ええ、こんばんは」
「今日もお願いね」
二人は烏天狗に応えた。
「じゃあ今からね」
「泉と、だけれど」
「お嬢はもう飲んでるから」
「出来上がってるよ」
烏天狗達の口調は沈んだものになる、暗い森の中に神社が浮かび上がっている、二人はその中で天狗達と話しているのだ。
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