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SAOもう一人の聖騎士

作者:ビビック
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追想~金色の炎、白銀の灰塵~

 
前書き
シュピーゲル君を活躍させてあげたいこの頃です。せっかく、せっかく・・・・・・・いい子にしたのに・・・・・・・ッ! 

 
シュピーゲルSaid

シノンと僕を背に乗せた僕の相棒『月駆』(つきがけ)は、名前の由来となった黄金色の翼をはためかせて空を駆ける。その速度は、ありとあらゆる存在の追随を許さない。
・・・・・・・とは言いながらも、つまり僕達は周囲のMobの注意を引き続けている訳だ。正直、少しでも速度を緩めたらおしまいである。

「シュピーゲル?私一人じゃ流石に限界があるわよ?速度を上げるか、一旦停止して迎え撃つしか無いかも」

・・・・・・そうだよね。
逃げちゃ駄目だ。と言うかもう逃げられない。この場で血路を開いて切り抜けるにしても、死に戻りしてしまうにしても、一旦反転してMobを迎え撃つしか無いだろう。僕はそう決意を固め、愛剣を抜き月駆の手綱を打った。

「せああっ!」

空中で急制動し、飛び掛かって来るリザードマンの上級戦士・・・・・・・『リザードマン・パラディーノ』が突き出す槍を頭を斜めに傾けてかわし、すれ違い様の水平斬りで斬り捨てる。片手剣水平単発技、『ホリゾンタル』。半月形の青い軌跡が、白銀色の鎧を断ち割りその下の胴体を斬り裂いた。

「シュピーゲル、上!」

『リザードマン・パラディーノ』を撃破した僕はシノンの警告で頭上を見上げる。そこに滞空していた『モノ』に・・・・・・僕達は喉を干上がらせた。そこにいたのは・・・・・・黒い竜鎧で武装した黒竜に跨がる、一人の騎士だった。

「・・・・・・最悪だわ。こんなところで、『魔騎士』に出くわすなんて」

『魔騎士』とは、ALO内で最も忌み嫌われるMobのひとつだ。アインクラッドのフロアボスに匹敵する高度なAIを持ち、漆黒の炎を吐く黒竜を従えている。その上、プレイ時間や身のこなしなどで戦う相手を選び、強者を執拗に狙う、有名なPKM(プレイヤーキルモンスター)だ。その上人語を理解し、プレイヤーを揺さぶると言った特殊な能力も与えられている。

「ククク・・・・・・『灰塵剣』のシュピーゲルだな・・・・・・我の名は、『霊速』のザーゲイル・・・・・・いざ・・・・・・尋常に勝負・・・・・・!」

前口上をいい終えるや否や、凄まじいスピードでこちらに突貫してきた。Mobの動きは速い・・・・・・だが、AIで学習していない初見の相手に対する軌道はまっすぐで、読みやすい。

「おおおおおおッ!」

右から左へ振り抜かれる横殴りの一撃が、ザーゲイルのそこだけ妙に白い銀の大型片手直剣(バゼラート)が眼前にせまる。
目は瞑らなかった。なぜなら、あの剣は”僕の体に触れてすらいなかったのだから„

ギリギリのスウェーで横薙ぎの一撃をかわし、鎧の隙間・・・・・・脇の下に突きを放つ。ソードスキルは使う余裕が無かったので威力はあまり籠っていないが、それでも弱点を攻撃したので少しは効いた筈だ。

「成程・・・・・・確かに灰塵の様につかみどころの無い男よ・・・・・・しかし、一撃が少々軽すぎるぞ・・・・・・!」

くそ・・・・・・!
やはりだ、パワーが違いすぎる。純粋な『速さ』に特化した僕では、堅い装甲に護られたこの騎士に致命傷を与える事が出来ない。刻一刻と僕らを取り囲むMobが増えていっている以上、それは致命的な事だった。

「キュイ!」

月駆の鳴き声が聞こえた。それはあたかも、『俺を使え』と、そう言っている気がした。

(・・・・・・そうだね、月駆)

「月駆!」

手綱を打ち、魔騎士に向かい突進する。あまりに直線的な軌道に、彼も騎士道を刺激させられたのだろう、迎え撃とうとぐっと剣を引く渾身の突き技の溜めを作って突進してきた。

「今だ、月駆!」

僕は、月駆から飛び降りた。
僕と言う重りが無くなったことで一気に加速した月駆は、鋭い爪を一点に集中させて魔騎士の胸に渾身のキックをかます。すぐに背後へ振り向き、剣を前に突き出し、刀身に手を添えて半身に構え、呪文の詠唱をしている僕に火球を放った。

「行くぞ、月駆ぇ!」

月駆が轟然と放つ火球を、僕の剣が貫いた。
僕が唱えた魔法は『属性武器化魔法』。何かしらのMobをテイムしたテイマーだけが使える特殊な魔法で、そのMobが放つ属性攻撃をそのまま武器に変え、自らの攻撃に上乗せする魔法だ。
ワード数も少なくMobが強力であれば強力であるほど威力も上がる優秀な魔法だが、同時にMobの攻撃と合わせるタイミングを誤ればもろに自分が攻撃を喰らってしまうリスクが付きまとう、Mobとの信頼関係が肝心な魔法である。

・・・・・・・そして、僕の身長の倍近い長さを誇る黄金の炎剣を、僕は真横に構えた。

「おああァァァァッ!」

右から左へ、左から右へ。一撃一撃が燃える炎の波となり、僕達を囲む軍勢を焼き払い、斬り払い、灰塵へ還す。僕のオリジナル・ソードスキル、水平七連撃技『アッシュ・トゥ・アッシュ』。

「ぬ・・・・・・・おおおお!」

六撃目の水平斬りを、銀色の剣で受け止める。この攻撃で仕留め損ねれば、もう後は無い。一定時間動きが止まっていたため、ちかちかと黄金の輝きが薄れて行く。兜の下はどんな顔か分からないが、薄く微笑んでいる様に見えた。が、僕には、勝利の女神がついている。

「が、あああああ!」

神速でほとばしる矢が、腕ごと銀の剣を吹き飛ばす。彼が僕との鍔迫り合いに気をとられている間に、シノンが得意の遠距離射撃で彼の肩を撃ち抜いていたのだ。

「らあああ!」

剣がなくなり、まともに六撃目を喰らって切り揉み回転しながら竜の背から吹き飛ぶ魔騎士。ラストの七撃目、渾身の突きが、月駆の蹴りによって穿たれた罅に突き込まれた。その瞬間魔法効果が切れ、黄金色の爆発となり内側から魔騎士を焼き尽くした。
黒い鎧の破片と金色の炎が放射状に広がるその光景は、どこか咲き誇る花に似ていた。

「今だ!」

既にシノンと月駆は包囲陣から抜け出そうとしている。それを追い、僕も全速力で翅を振るわせる。月駆の背にある鞍から身を乗り出し、全力で手を伸ばすシノンへ、僕も全力で手を伸ばす。
がしっ・・・・・・・。僕の手が、予想よりずっと柔らかいシノンの手をしっかりと握り締めた。

「よし、逃げるよ!」

急いで鞍に跨がると、僕は月駆の手綱を打った。 
 

 
後書き
活躍・・・・・・出来たのかな?これは。 
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