魔法少女リリカルなのは 在り来りな転生記
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第九話 届かない思い
何回か言っている通り、俺は空中戦は苦手だ。あの何とも言えない浮遊感とかが結構苦手なのだ。それでも、陸戦は得意か? と聞かれると、陸戦ならまだマシと言うレベルなのだが……。
よってあいつが空中で飛び回っていたとしても、俺は地上で弾幕を張ることを余儀なくされるわけで……。
「ちょこまかと飛び回りやがって……。当たりゃしねえっての」
『マスター。落ち着いてください』
「分かってるっての! って、危ねぇ!」
絶賛セレネと言い争い中の俺に対し、魔力で形成された衝撃波が飛んでくる。
それを避けること自体は一応出来るのだが、正直もう少し手加減をして欲しい。そう、本気で思えるほど実力に差がありすぎる。
そんな事を考えていると強力な光が横から発せられる。……しまった。
「アルフ! 気をつけろ!」
そういった頃にはもう遅く、アルフはユーノの発動した強制転移魔法に巻き込まれていた。
「……よそ見している暇なんて……あるのか?」
その言葉とともに、正面から横一文字に斬り付けられる。
なんとか防御には間に合うが、それはただ間に合っただけで完全に防御しきれたとは言い難い様な不恰好なガードになってしまった。
だからこそ、目先の攻撃にとっさに反応してしまった俺は、次の攻撃に対し為すがままにされるしか選択肢が残ってない。
「龍牙斬!」
それはあいつも分かっていたようで、畳み掛けるように鋭い連撃が俺に襲いかかる。
ガードも避けることも出来ずにその攻撃を食らってしまった俺は、そのまま無様に地面を転がることに。
そしてその状態の俺に対して、また佐倉が畳み掛けようとやって来る。
「そう何度も同じ手にかかると思ってんじゃねぇぞ」
「……!!」
戦闘経験はなくとも、喧嘩慣れはしていた前世の俺。
転がっているときにとっさの判断で回転の勢いを殺して立ち上がり、銃弾をあいつに叩きこむ。
その攻撃はあっさりと避けられてしまうが、今はそれで問題ない。とりあえず距離を取ることは出来た。
「はっ、その程度かよ」
明らかにボコボコにされているのは俺の方だが、口調だけは強気に相手を煽る。
「……」
とは言ってもそんな簡単にあいつはその言葉に乗ってくれない。さすがにチンピラほど単純じゃないよな……。
「……お前は何のために戦う?」
「は?」
さっきまでほぼ一方的に俺のほうが話しかけていたが、今度は佐倉の方から話しかけてくる。
それにしても何のために戦うか、か……。そんな事、俺が一番自分自身に聞いてみたい。
前世でも喧嘩は多かったが自分自身から喧嘩を振ったことはないし、強い奴と戦いたいなんて無駄に熱い向上心なんて俺の中にはないはずだ。
どんなに心の中を探ったとしても、もともとそこがカラッポなのだ。”答え”なんていくら探したって見つかるわけがない。
「じゃあテメェは、何のために戦うんだ?」
答えを見つけるための質問を佐倉にしたって見つかるわけがない。そんな結論を自分の中で出し、佐倉のしてきた質問を逆に返す。
自分に返されると思ってなかったのか、あいつの動きが止まる。
その一時の休憩の内に遠くに見える、桜色と金色の光の方を見る。恐らく高町とテスタロッサが戦闘を行なっているんだろう。今の高町が相手なら、テスタロッサが負ける事は無いはずだ。
「……俺が戦う理由は、もう二度と自分に嘘を付かないために。……もう二度と自分の無力さを嘆かなくて済むようにだ!」
つかの間の休憩も終わり、そんな言葉とともに佐倉が放つ剣術が俺を襲う。
「セレネ。ブレードモード!」
『了解しました』
佐倉の剣を受けるために、俺はセレネを二挺拳銃から双剣へと変える。
銃の状態よりかは確かに受けやすいが、そもそもこの状態は相手を無力化するのを目的にしていて1体1の打ち合いは苦手分野だ。
受けることはできても、ただそれだけで攻撃に移ることが出来ない。そのため結果としてこのままでは突破されることになる。
1体1用のモードもあるが、あれはまだ使いこなせてないからな……。
そんな事を考えながらそのことを悔やむ俺。
「ま、そんな事考えても何も始まんねーか」
だが、すぐに考えを切り替える。
無駄……とは言わないが、違うことを考えている暇は無く、下手をするとこのまま押されてしまうからだ。
何度かお互いの剣をぶつけ合う。それで分かったのは筋力は明らかに佐倉の方が上だということだ。
佐倉のデバイスと現在の俺のデバイスは質量の合計は目分でだいたい同じくらいだ。
それを俺は両手に分けているため、利き腕でない左の方は少し遅くのは確かだ。しかし、利き腕である右手ではこっちのほうが動きが早いはずだ。
しかし佐倉はそれを感じさせないように俺の動きと同じような速さで剣を振ってくる。
おいおいおい、いくら転生した時間が遅いって言ってもこんなに実力差があるのかよ……。
そんな愚痴を吐いたとしてもその答えが、この結果だろう。
まず俺は自分は”弱い”という現実と向き合わなくちゃならないらしい。
とは言っても現在アルフは飛ばされていて、テスタロッサは戦闘中。この一番面倒くさいバランスブレイカーを足止めできるのは目下戦闘中の俺しかいないらしい。
「玉砕覚悟で行けばなるようになりますか……」
「……行くぞ」
その言葉と同時に構えを直し、こっちに突っ込んでくる佐倉。
玉砕覚悟とは言ったが、受けに回ることになる俺。二刀流のため攻撃を食らうことはないがそれを捌くことで手一杯になってしまう。
ここまではさっきと全く変わらない行動だ。そう、ここまでは……。
「人間ってのは学習するから強くなれるんだよな」
何発か攻撃を流した後、両手に持つ権を剣を同時に佐倉の剣に叩きつける。
「楽しく一人で……飛んで来い!」
そう言いながら動きの止まった佐倉を蹴り飛ばす。あいつも地面を転がりながら上手く起き上がろうとしている。が……
「悪いが、ゲームセットだ」
「……!」
そう言いながら剣をあいつの首元近くの地面に突き付け動きを止める。
「普通だったら避けられただろうな、お前の身体能力なら」
「……何が、……言いたいんだ?」
独り言のように佐倉の方を見ずに話していた俺に佐倉が反応する。
ここまで言ったら俺が何かしたというのは分かっているだろうが……。
「種明かしをしたマジックほど淡泊なものはないだろ? 精々、次にあった時までに攻略できるように頑張っといてくれ」
そう言いながら肝心なところはぼかしておく。
種明かしをすると、無理やり違う魔力を打ち込まれたせいで一時的に体がクラッシュしているだけだが、擬似的な拘束術程度には使える。
「ま、その体じゃ、もう戦闘は続けられないだろ」
『put out.』
俺がそう言うとほぼ同時にレイジングハートからジュエルシードが出される。
テスタロッサはちゃんと高町に勝てたようだ……。
「レイジングハート! 何を!?」
「きっと、主人思いのいい子なんだ」
テスタロッサがそう言いながら出されたジュエルシードを手に取る。
さっきまでの騒がしさが嘘のような静けさが、この場を包み込んでいる。
「帰ろう。二人とも」
「さっすが私のご主人様。じゃあね~、オチビちゃん」
「じゃあ、また会おう」
テスタロッサ達がそう言うと同時に俺は佐倉に向かって、そう言いながらその場を去る。
「待って!」
その場を去ろうとした俺たち、というよりテスタロッサに対して高町が声をかける。
「できるなら、私達の前にもう現れないで。もし次あったら、今度はもう、止められないかもしれない」
だがその高町に対してテスタロッサが発したのは、他人が聞けば”もう関わるなという”冷たい言葉。
一応、俺たちにはこれがテスタロッサなりの優したということは解るが……。
「名前……あなたの名前は?」
それでも、突き放されても尚話を続ける高町。
今のがテスタロッサなりの優しさだとしたら、これも彼女なりの優しさなのだろう。
「フェイト。フェイト・テスタロッサ」
「あの……私は……」
テスタロッサは自分の名前だけを言うと高町の話の続きを聞かずに、そのまま飛び去る。
それに続き俺とアルフもそれに続く。
「バイバイ~」
最後にアルフがそう言いながら俺たちは去っていく。
クラスメイトとして高町の力になりたいとも思うが、それはさすがに身勝手すぎる。
自分の意志でテスタロッサの力になると決めた俺が、今更高町の力になろうだなんて虫が良い、ただの卑怯者だ。
そう思い、後ろを振り返らず頭を振る。
そう、自分で決めたことなのだ。今更やり直せないし、もう元には戻らない。
上空に光る満月。美しく、悲しさとはかけ離れているそれが、ひどく悲しく見えたのは高町の感情を写している様に見えたのか、俺の感情を写している様に見えたのか、それとも……。
後書き
前回から少し遅れましたが、無事第九話投稿です。
今回長めの戦闘描写ですが、何か”ただ事実を書き連ねている出来の悪い作文”みたいになってしまいました……(汗)
何なんでしょうね? 何が足りないかと言われると色々足りない気がしますが、何より足りないのは”速さ”なんだと思います。(決してネタでは有りませんww)
戦闘のスピーディーさが欠けていたため恐らくこの様な結果になったのだと思います……。
決して手を抜いたわけでなく、これが現在の全力なのでご了承ください。(もちろんこれから努力して、戦闘描写を書けるように慣れて行こうと思います)
二回目の戦闘。それぞれの、すれ違う思い。大地は自分の行動が正しいのか疑問を持ち始める……。
誤字脱字指摘、感想等お待ちしています。
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