戦国異伝
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第百二十五話 独眼龍の上洛その六
その信長について政宗は言うのだった。
右手の稲葉山の頂上の三層の天守閣、信長が築かせたそれを見た、そのうえでこう言ったのである。
「家臣にするのもよいな」
「織田信長をですか」
「殿の家臣に」
「そうじゃ」
片倉と成実に対して言い切った。
「管領にでもしてやろう、武田、北条もな」
「では関東管領は」
ここで成実は少しふざけて主に問うた、
「誰にされますか」
「そのままじゃ」
謙信でいいというのだ。
「西国探題は毛利じゃ」
「そうなりますか」
「そうじゃ、あと徳川にも何かやるか」
家康についても言うのだった。
「あ奴にもな」
「徳川というと徳川家康ですな」
「三河の」
「そうじゃ、あの者じゃ」
家康についてはあまり知らない感じの二人に言ったのだった。
「三河の麒麟も重く用いるぞ」
「徳川家康、そこまでの者ですか」
「殿が織田や武田と並べられるだけの」
「その通りじゃ」
まさにそうだというのだ。
「あの者もまたな」
「そうした家と比べると小さいですが」
「それでもですか」
「ははは、徳川は当家より大きいぞ」
伊達は四十万石、徳川は五十万石だ。やはり徳川の方が大きい。それで政宗も笑って言ったのである。
「小さくはないぞ」
「それはそうですが」
「それでもやはり」
「石高は小さいがあの家は見事じゃ」
徳川家はそうした家だというのだ。
「兵は強く家の中はまとまり家臣は粒揃いじゃ」
「まさに上がっていく家ですか」
「徳川は」
「しかも政も見事と聞く」
それもだというのだ。
「大きくなるわ」
「左様ですか」
「あの家もまた」
「これからどう低く見ても百万石の家になる」
一口に百万石と言っても相当なものだ、それだけ大きな家は天下に数える程しかないのが現実である。
「若しかしたらわしともな」
「天下を争うと」
片倉が問うた。
「それだけの者ですか」
「うむ」
「三河の麒麟もまた」
「今天下には英傑が多い」
家康もその中に入れての言葉だ。
「わしと天下を争いそしてじゃ」
「やがてはですか」
「皆わしの家臣になる者達よ」
ここでも不敵な笑みを見せる政宗だった。
「誰もがな」
「そしてその殿が目指される天下は」
「楽土よ」
満面の笑みで片倉に答える。
「まさにそれよ」
「楽土ですか」
「そうじゃ、平安楽土じゃ」
まさにそれだというのだ。
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