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八条学園怪異譚

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第二十九話 神社の巫女その一

                    第二十九話  神社の巫女
 二人はお寺に行った次の日も部活に出た、そこで。
 先輩に対してこう言われたのだった。
「ええ、普通にあったわよ」
「お公家さんの世界にもですか」
「あったんですね」
「そう、男同士の恋愛ってね」
 それがあったとだ、先輩は部活の合間の休憩の時に話した。
「それはね」
「ううん、そうなんですか」
「お坊さんやお侍さんだけじゃなかったんですね」
「日本社会全体にあったのよ」
 僧侶や武家に限ってはいないというのだ。
「平安時代でも普通にあったわよ」
「じゃあ百人一首に出てる人でも」
「そういう人いたんですか?」
「そうかも知れないわね」
 先輩は二人の問いを否定しなかった、そのうえで麦茶を飲みながら言う。ここでも麦茶を飲んでそのうえで話すのだった。
「それはね」
「織田信長とかだけじゃなかったんですね」
 愛実は日本の歴史上最も有名な同性愛者の一人の名を挙げた、ただし彼は女性に関してもそれなりであった。
「そうだったんですね」
「空海さんだってそうだったわよ」
 日本の歴史上最大の天才の一人だ。
「あの人が持ち込んだって話もあるし」
「あの空海さんがですか」
「日本に持って来たんですか」
「それ以前からあったって説もあるわ」
 この辺りははっきりとしていない、実際のところは。
「そうしたことを書いた日記も残ってるし」
「自分どの男の人と付き合ったか、ですか」
「そういうのを書いた日記があるんですね」
「あるわよ、美少年趣味も女装もあったわよ」
「何かそれって」
「そうよね」
 二人は先輩の話を聞いて顔を見合わせて話した。
「今の同人誌の世界と一緒よね」
「女装とかもあるって」
「その織田信長だってそうじゃない」
 先輩は愛実が出したこの人物から話した。
「あの人女装もしてたから」
「何か普通に凄い人だったんですね」
「お祭りで天女に扮して踊ったのよ」
「へえ、そうなんですか」
「肖像画見る限り男前だしね」
 このことでも有名だ、肖像画にある信長は細面で整った顔立ちの微男子である。実際に妹のお市の方は戦国随一の美女と言われ兄である彼もその顔立ちでも有名だった。
「若い頃のことだから」
「何か凄いんですけれど」
「同性愛者で女装趣味もあったって」
「そうよ、日本じゃ昔からそういうことが普通だったから」
 それで今にも至るというのだ。
「特に驚くことはないわよ」
「お寺だけじゃなくて」
「その他にもですか」
「遊郭とかでもあったから」
 遊郭もいたのは女だけではなかったのだ、所謂男娼もいたのである。
「面白いでしょ」
「あの、ひょっとして先輩って」
「そうした趣味が」
 二人は先輩の饒舌とにこにことした顔からふとこう思った。
「所謂腐女子ですか?」
「ボーイズラブ嗜好なんですか?」
「安心して、どっちかっていうと女の子だから」
「えっ!?それってまさか」
「あの噂の」
「だから、物語としてはよ」
 そちらの方が好きだというのだ。
「実際は彼氏がいるから」
「そうなんですか」
「実際はノーマルなんですね」
「そうよ、だって女の子相手だと子供が出来ないじゃない」
 だからだというのだ。 
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