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三つのオレンジの恋

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第三幕その四


第三幕その四

「この事態はな」
「全く以って訳がわからない」
「その通りだ」
 やはり彼等もスメラルディーナは怪しいと思っていたのである。
「あの黒人女。どう見てもな」
「王子の仰る王女ではないが」
「王は何故あの女と婚礼を認められたのだ?」
「さっぱりわからん」
 だが式は今はじまろうとしていた。詩人達が音楽を鳴らし悲劇役者も喜劇役者も呆けた者もピエロも居並んでいる。彼等がこの国の国家を歌っている。
「王は全てを愛し全てを見ておられる」
「王に栄光あれ、この国に繁栄あれ」
 こう歌われている。王子の座と王女の座には幕がかけられている。それもまた謎であった。
「何故座に幕が?」
「わからない。一体」
「これはどういうことだ?」
 家臣達も貴族達もここでまた首を傾げさせる。その間に王子が来た。横にスメラルディーナを連れて後ろにパンタローネと道化師を従えている。そうしてやって来たのであった。
 彼等は王の前で跪く。王はその彼等に対して言ってきたのであった。
「それではだ」
「はい」
「王子よ」
 まずは彼に対して告げるのだった。
「王女と結婚するな」
「はい」
 そのことには静かに応える王子だった。
「その通りです」
「わかった。それではだ」
 王は彼の言葉を確認したうえで。こうピエロ達に告げるのだった。
「幕をどけるのだ」
「幕をですか」
「そうだ。王子の座と王女の座の幕をだ」
 それをだというのである。
「どけるのだ。いいな」
「わかりました。それでは」
「今すぐに」
 こうして幕があげられる。すると王女の幕に座っていたのは。
「おや!?」
「あれは」
「鼠!?」
 誰が王女の座にいる鼠に驚きの目を向けた。それは確かに鼠だった。
「やけに大きいな」
「しかも何かかなり奇麗だぞ」
「あの鼠は一体」
「よし、そこにいたか」
 ここで誰かの声がした。
「やっと見つけたぞ、やれやれだ」
「えっ、貴方は」
「どうしてここに」
 王子の前にいきなりチェリーが現われた。王子と道化師は彼の姿を認めて思わず立ち上がってその彼に対して声をかけたのであった。
「何故また」
「私達の前に」
「そなたを助ける為だ」
 王子に顔を向けての言葉だった。
「その為にだ」
「私をですか」
「そうだ。王女はいる」
 彼は告げた。
「ここにな」
「ここにとは?」
「ですがここにいるのは」
「鼠ですが」
 二人だけでなくパンタローネも立ち上がって彼に問う。
「それで何処に」
「鼠しかいないというのに」
「それでもいると仰るのですか」
「その通りだ。見るがいい」
 言いながら左手に持っているステッキを鼠に向ける。そうしてこう叫ぶのだった。
「戻れ!」
 この一言だった。すると鼠からぼわんと煙があがった。そこから出て来たのは他ならぬニネッタ王女だった。
「王女!?」
「では鼠が王女だったのか」
「やはりその女は王女ではなかったな」
 王がここで言った。
 
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