神葬世界×ゴスペル・デイ
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第一物語・後半-日来独立編-
第三十四章 魔女は翔び、鳥は飛ぶ
前書き
久し振りの二人のお方登場。
宜しくスタート。
上空に停滞している日来は、各船を繋ぐ渡り道を集中的に狙われていた。
螺旋を描くように戦闘艦が航行し、タイミングを見計らい砲撃を放つ。
対する日来は防御壁を展開し防御、更には船上からの作業用騎神による鉄球攻撃を行う。
鉄球にチェーンを取り付けたもので、強化系術により衝突時の威力が高い。
作業用騎神と言っても、やはり人よりは数倍の怪力を持つ。
鉄球を放り投げる程度のことではびくともしないし、軽いものを投げるかのように放つ。
欠点としてはチェーンがそれ程長くないため、距離の放れている戦闘艦には威力も何も無いことだ。
しかし、そのことについては既に対処済みだ。
空を駆ける無数の黒。日来学勢院の魔法術師達だ。
箒型の長銃砲、魔箒|《イビルブルーム》に乗る魔法術師達は皆、女子だけだ。
魔法術師は基本翼人族と天人族の女性のみで、反対的に魔法導師は基本翼人族と天人族の男性のみである。
身体の構造が違うためそうなったのではないか、と言われているがまだまだ調べる必要があるらしい。
五人一組、少なくも三人で組ませている。
そして三人一組のなかの内、長い金髪をなびかせ空を行く者が一人いた。
マギト・ゲパルト、金翼を持つ翼人族だ。
左右に同級生の翼人族を置き、彼らを先導するように前へ出ている。
「砲撃を開始する戦闘艦には近付かないようにねえ。後、後輩は先輩の言うことはちゃんと聞くこと。実戦だから命の保証は出来ないよお」
「動きが鈍くなったわね。変に緊張させてどうするの」
マギトの左側にいる長髪の少女は視線を周りに向けながら、後輩達の様子を見ていた。
髪をなびかせながらマギトは、へへへ、と笑う。
「そっちの方が戦いは怖いことだって理解出来るからねえ。戦闘好きにはなってほしくないんだよ」
「争い事にたぎるマギトが言えたことじゃないでしょ」
「ほんとですよ。わたし達が止めてあげないとマギちゃんは止まらないんだから」
「これは照れますなあ」
「褒めてないから。てか正面、敵艦いるけど狙う?」
三人の正面。ワイバーン級戦闘艦が艦首をこちらに向けて、避ける気も無く前進して来る。
戦闘艦のなかでは機動力はトップだが、それはあくまでも戦闘艦のなかでの話しだ。
最大速度になってないのであれば、魔箒に乗る魔法術師には敵わない。
「変わらず加速機狙いでいっちょやりますか」
「噴射には各自気を付けるように。それじゃあ、レディ……ゴ――!」
一艦のワイバーン級戦闘艦に狙いを定め、三人は分散した。
副砲の狙いを散乱させるため、広がり、後方に設置された加速機へ回り込む。
小回りが利かない戦闘艦は急いで加速機を噴かし、方向を変えようとするが無意味だ。
魔法術師達は乗っていた魔箒から降り、自身の翼を広げ宙に浮かぶ。
続けざまに銃砲の役割を持つ身の丈よりも長い鋼の魔箒を反転させ、銃口とも砲口とも取れる、両方の言葉を合わせて銃砲口の役目を放つ加速機を前に現す。
力を込め、拳を握れば、それぞれ赤と青の魔力回路が微かに身体中に浮かび上がった。
血管のように全身に現れて、魔力が流れていることを示す光が走っている。
銃砲口の先に映画面|《モニター》が表示され、充填完了、の文字が映し出されていた。その表示はすぐに消え、次に標準を合わせるためのものが表示された。
映画面に映る十字が乱れ動き、中央の円に加速機を合わせるため姿勢を整える。
マギトは他の二人の動きが止まり、標準が固定されたことを確認した。
「それじゃあ、狙い定めてえ。一、二、三……バ――ン!」
銃砲口から砲弾と呼べる、一つの大きな弾が発射された。
三つの砲弾のなかで、眼鏡を掛けた翼人族の学勢が放った青の砲弾が先行する。が、速度は二つある赤の砲弾よりも遅く、そのままでは後ろから来る砲弾と直撃する。
それなのに三人は、よし、と言いその場から離れた。
次の瞬間。加速機に衝突する前に青の砲弾に赤の砲弾がぶつかり、大爆発を起こした。
爆風に身を揺らしながら、身体を反転させ様子を見る。
物の見事、爆発により加速機を破壊し航行不可能となった戦闘艦は速度が落ち、地に落ちていく。
火と黒煙を上げながら、日来を囲む戦闘艦が一艦減った。
「魔力を込めた攻撃がぶつかった場合、寒ノ魔力が少ない時に暖ノ魔力多ければ衝突した時に大爆発を起こす。その逆の場合は、周囲を一瞬に凍結させる大凍結が起こる。いやいや、おっかないねえ」
落ちる戦闘艦を見ながら、笑みを崩さないマギトは楽しそうに語る。
日来の周りにも彼らと同じ、戦闘艦を落とした者達が多くいた。
戦闘艦に副砲があるとはいえ、全ての死角を無くすことは出来無い。その死角にさえ飛び込めば後はこちらのものだ。
汗を流すも拭うことはせず、次の獲物を探しに再び組を組み直す。
欲張りはせず安全を第一とし、一時的に日来周辺から離れる。
無料提供される生命維持の加護では身を守ることは出来無い。更には日来に今いる魔法術師の殆どは実戦経験の無い、戦闘慣れしていない者達ばかりだ。
慣れていないのに無茶をすることは死を招く。自分でもその可能性は十分にある。
風によって汗が流れるなか、上空から戦況を伺う。
「渡り道の半分は無事みたいだけど、半分は壊されてるわね」
「ここで疑問なんですが、渡り道って重力操作によって出来てるんですよね? だったら壊されてもすぐに修復出来るんじゃないですか?」
再び魔箒に乗り空を回りながら、下にいる日来を見る。
防御壁により守ってはいるが、所々砲撃に当たった箇所がある。
空間移動する前に霊憑山での戦闘により、負傷した箇所に機械部が集中的に修復に向かっているため他の箇所まで手が届いていない状況だ。
さすがは戦闘艦、と思いつつも答えを返す。
「修復は確かに簡単だけど、修復してもまた壊されたら意味無いよね。それに機械部は機械部で忙しいし、渡り道の修復に割ける人材は厳しいから、この戦いが終わるまでは手を付けないと思うなあ」
「材料も鉄とかだから無駄に消費したくないところよね。まあ、私達は私達の仕事をすればとやかく言われないし別にいいんだけど」
「毎度、自分に直接関係無いことは他人事ですねえ」
「だって関係無いのだから仕方無いわ」
「そんな彼女はクールビューティーと言われるのであった」
戦闘中なのに笑う三人の元に、一つの映画面|《モニター》が表示された。
船上が映っており、映る人物は伊達眼鏡を掛けた中二病の同級生だ。
『楽しんでるとこ申し訳無いけど、君に頼み事があるんだ』
「私?」
中二病患者ことレヴァーシンクは、笑みの得たマギトの方を見た。
何用かとマギトは首を傾げ、彼の言葉を聞いた。
『先程“日来”経由で騎神の存在が確認されたんだ。そこで魔装を使える君に戦ってもらいたいんだけど、出来る?』
「どーだろーねえ、んで何機確認出来たの?」
『三機だよ、低空飛行をしていたところを確認したらしくてね。霊憑山での戦いでステルス艦がいたから、流魔関知を発動していたら引っ掛かったみたいだよ』
「なるほどねえ。狙いはやっぱり結界の破壊に向かった日来勢だよね」
『当たり、それも学勢の方をね。入直の方にも連絡して、騎神の調整が終わったら向かうらしいよ。後はネフィアにも頼む予定だ。別に騎神を破壊しろなんて言わないよ、ただ騎神と遊んでもらって戦闘に参加させないためだ』
聞くも、出来れば騎神との戦闘は避けたいところだ。
入直は作業用と言っても騎神の操縦者だからで、自分よりは有利に戦える。一方のネフィアは半獣人族であり、戦闘貴族のご令嬢だ。幼い頃から相当の訓練をさせられ、無論、騎神相手の戦闘訓練もしているだろう。
それに対し自分はパートナーのいない魔法術師だ。
魔法術師は魔力を使う際、体温を犠牲に使用する。
魔力には二種類あり、一つは暖ノ魔力。
使うと体温が上昇する。そのまま使い続ければ体温は上がり、最終的には体内の深部が焼けるか溶けるかして死ぬ。
もう一つは寒ノ魔力。
暖ノ魔力とは逆に、使うと体温が下がる。考えれば分かる通り、最終的には眠るように死ぬ。
自分は前者の暖ノ魔力を使うので、先程汗をかいたのはそれが原因だ。
騎神との戦いは長期戦になることは間違い無い。だからこそやりたくないのだ。
なら体温を冷やせばいいと考えるが……、
それが甘いんだなあ。
自問自答をしている自分がおかしくて、くす、と笑った。
魔力によって犠牲した体温は、魔力でしか完全には回復出来無い。冷却符によりある程度回復力は出来るが、ある程度でしかない。
ならパートナーをさっさと探せばいい。
残念だが、パートナーは簡単に探せるものではない。
魔力で犠牲にした体温は魔力でしか回復出来無い。これが意味することは、自分の魔力と相性の良い魔力を持つ者が必要ということだ。
魔力にも拒否反応というものがあり、自分の魔力と相性の良い魔力を持つ者を探すのはかなりの時間を使う。最悪、相性の良い魔力を持つ者はこの世にいない可能性もある。
だが、自分のパートナーはいるにはいるのだが、とある事情で離れている。
魔装したからといって騎神に敵うわけはないし、早々に敗れる可能性が高い。
他にも心配要素はあり、それは自身の力だ。
この力は本来の自分の力ではない。だからか、この力を使うと時々自分を見失う。
しかし、だからと言って、誰かがやらなければならないのならば。
「分かったよ」
『ありがとう、助かるよ。無理だと思ったらすぐに離脱しても構わないから、出来るだけ時間を稼いでくれ。今から行けば間に合う筈だ、健闘を祈るよ』
「了解。またの連絡は手短にねえ」
手を振り、レヴァーシンクの微笑みが映る映画面が消えた。
力のある者がやらなければ、力の無い者に負担を掛けてしまう。そうはさせない、日来は自分を受け入れてくれた。
そのためなら、この力を使う理由はある。
「本当に大丈夫なんですか」
心配なのか、仲間が声を掛けて来た。
頷き、
「無理はしないつもりだよ。冷却符で何処まで保つかが心配だけど」
「あの中二病野郎、マギトに余計な負担掛けさせやがって……」
「抑えて抑えて、本性剥き出しちゃってるよ」
「あら、いけない。美人な私がこんな言葉遣いはいけないわ」
「女性って怖いですよねえ」
「あ、貴方も女性なのだから、それを言えたことではないでしょ!」
頬を赤め、焦った様子で言う。
それを見て二人は笑い、更に彼女の頬が赤くなる。
悔しそうに、くう、と唸っていた。
「ははは、可愛いねえ。んまあ、それじゃ、行って来る」
「はい、無理はしないでください。絶対に」
「気を付けるのよ。一人じゃ駄目だと思ったら、呼んでくれればすぐに行くから」
「はいはーい、ありがとー。二人も頑張ってねー」
二人から少し離れ、行く前に言葉を交わす。
心配そうな目付きで見てくるが、平気だと、笑い伝える。
何かを言いたそうだが、これ以上時間を割くわけにはいかない。
背を向け、動き出すため加速機の出力を上げる。
数秒後、跳ねるように貯めた力を放ち、行った。
大気を割き、風を割き、二人との距離を開く。
徐々に小さくなるその後ろ姿を見て、二人の魔法術師は叫んだ。
「「頑張って――!」」
返事は聞こえて来ない。何も返そうとはしない。
聞こえていないのか、返事を返す気が無いのか、急いでいるためなのか。
一線を描き、西貿易区域へ飛ぶのを見ていた二人は、姿が確認出来なくなると別の組に加わるために動き出した。
●
日来の左舷前方船・日暮の貿易区画の下層一層目、機械部やらそれ以外の者達が多数集まっていた。
彼らが集まっている中心には作業用騎神が立っており、数人その騎神の近くにいる。
映画面|《モニター》を表示して、何やら作業をしているようだ。
「全く、黄森の連中。アタイの緋翼のロックだけは頑丈にしやがって。普通、他人の騎神いじんないだろうに」
「普通はね。だけど彼ら普通じゃないから」
「アンタそれ、黄森の連中ら全員敵に回すよ」
「くっちゃべってねえで、さっさとやらんか。ジューセンはしっかりやってるぞ。奴を見習ってほしいもんだな」
ゴーグルを付けた、スキンヘッドの褐色男性の大人に入直と継叉は叱られた。
一方のジューセンは騎神の装甲を何かを探すように確認しており、黙々と作業をしている。
「ジューセンは口数が少ないだけだろに」
「だよね。家族いっぱいいるし、絶対家ではよく喋ってるよ。人前では口数少なくしてクールぶってるんだよ」
「……俺は家でもこうだ……」
「こう言ってるぞ、てめえら」
「てか、なんで増田さんはジューセンの味方なんだよ」
「よく働く奴には面倒見を良くする主義でな。お前らもさっさのそうなるように頑張れよっ」
「ウザいね、凄くウザいよ」
「全く同感だね」
口喧嘩まではいかないものの、恨みが感じられる会話だ。
周りの者達は彼らをなだめ、喧嘩に走らないように気を配る。
毎日の作業よりも、こっちの方がキツいと皆は感じた。
ジューセンは騎神の装甲を確認していると、目的のものを見付けた。
装甲の隙間に手を突っ込み、紙のような手触りを感じるそれを掴み、引っ張った。
「……これが最後だ……」
左手に握られてるのは、何やら複雑な文字が書かれた符だ。
しかし普通の符ではない。騎神を起動させないために貼られた封印符の一種だ。
その符を引き千切り、それと同時に騎神が唸り声を上げるように起動し始めた。
「おお、やっとか。騎神本体のロックと、起動のロック。二重ロックとはよくやるもんだねえ。にしても装甲の間に封印符を入れるとか、考えることが解らないねえ」
「とにかく起動したからよかったね。これはジューセンのお手柄だ」
「真面目に働いているか、そうじゃないかの違いだな」
何度見てもゴーグルとスキンヘッド、更に褐色が特徴的な増田は言った。
彼の言葉にジューセンは顔を横に振り、
「……俺はただ符を剥がしただけだ……。
……難しい騎神本体のロックを解除した、二人には及ばない……」
二人とは、入直と継叉のことだ。
彼らに協力した者達は多くいたが、やはりそれらを踏まえても解除したのは二人だ。
自分は騎神の知識が無いため、先程までやっていたようにシステムには手を出さず、外部に手を出す方法を取った。
符を剥がす簡単な作業に比べれば、難しいのに符を剥がし終える前に本体のロックを外してしまった彼らの技量は凄いものだ。
だからだろうか、皆は気を使って封印符を剥がすのは自分一人に任せてくれた。
あの二人に負けないように、それを一人でやってみろと。
ただの労働力でしかないが、その気遣いは嬉しかった。
「何はともあれ、やっと行けるよ。腰装着型加速機|《ウエストスラスター》の具合はどうなのさ」
「良好、良好。さすがは朱鳥天が設計しただけはあるな」
年老いた爺さんが、助手の手を借りながら確認していた。
右肩に乗る入直は、自身の相棒である火炎ノ緋翼の顔を見て微笑んだ。
「お前の最初の相手が戦闘用騎神になるなんて、何処までやれるか分からないけど頑張っておくれよ」
彼女の言葉に答えるように、全機能が起動して唸り声は叫びとなった。
急な高音に耳を塞ぎながらも、何処か楽しげに話し掛ける。
「やる気充分ってかい。いいねえ、準戦闘用騎神となったお前の力。あいつらに見て付けてやろうじゃないか」
「燃えてる、て感じだね」
「当たり前さ、緋翼もアタイと同じ気持ちさ」
「だからだろうね、全機能異常無しだ。まあ、頑張って来て。騎神用の武器はロック解除に時間掛かったからすぐには持ってけないけど、最終チェックを早く済ませてそっちに送るよ」
「頼むよ、準戦闘騎神の改良は途中段階なんだからさ。ほらほら、皆ぼさっとしてないで離れた離れた。加速機で吹き飛ばされてもしらないよ」
払うように手を振る入直の言う通り、吹き飛ばされては困るので皆は離れる。
周りの安全確認をした後、親指を立ててそれを報告する。
皆も応答として親指を立てて、
「行ってこいよ、機械部代表」
口を曲げ、増田が言う。
「おうよ。あ、そうそう、もしアタイが騎神に勝ったら機械部の学勢達仕切ってもいいだろ? 昇格ってやつさ」
「あ? 騎神に勝つだと? ……はは、ははは! これはいいね、お前の緋翼が辰ノ大花の騎神に勝つかどうか。なら負けた時はどうするよ」
「一生アンタの下っぱでいいさ」
「お前が下っぱでも何も得にはねえんだがよ」
「それがレディに対する態度かよ!」
「男勝りのお前が女扱いなわけねえだろうが」
これに周りが笑う。
馬鹿にされたような気がして、ちくしょう、と悔しがる。
しかし、勝てばいい。勝てばいいのだ。
「笑っていられるのも今のうちさ。アタイの本気を見せてやるよ」
「分かったよ、その賭け事に乗ろうじゃねえか。もしお前が勝ったら学勢仕切るのはオレじゃなくてお前でいいぜ」
「言ったからには守ってもらうよ。よおーし、やる気湧いて来たあ――! 翔べ! 火炎ノ緋翼――!」
腰装着型加速機の出力を一気に上げ、緋の鳥型騎神は垂直に翔んだ。
突如として生まれた風は仲間を吹き飛ばす程に強く、空を塞いでいた上の貿易区域の一ヶ所が開いて、勢いそのまま敵艦を越えて上空高く飛翔した。
天上に届くまでは行かないものの、緋の騎神は高く、高く上がり、急斜面を滑降するように西貿易区域へと向かって行った。
帽子が落ちないようにつばを掴みながら、継叉らは日来からそれを見ていた。
「やる気湧き過ぎだって。……それじゃあ、ぼく達も作業に取り掛かろうか」
「にしても、ありゃあちゃんと機能するのか? 使われてるもんが武器用のもんじゃねえから熱に弱いぞ」
騎神用の武器のことだ。
日来には武器用に適した材料が少ない。そのため作業用の材料を代用しているが、武器に適したものではないため故障し易いと思われる。
だが贅沢は言えない、そこは他でカバーするしかないのだ。
「一応は冷却用の術式を入れてるから、どうにかなるんじゃないかな。と言って溶接を防げても使い捨て覚悟に造ったものだから、この戦いで役目は終わるだろうね」
「お前は騎神関係に詳しいからな。さすが中西武国出身、騎神はお任せあれってか」
「中西武国は関係無いよ。ただ機械が好きだから、自分でそのための知識を学んだ。上に立つことに酔いしれたあいつらとは違う」
怒りにも似た感情を秘めた言葉は、何処か覚悟をしたような力強いものだった。
増田はゴーグルで隠した瞳で継叉を見て、ああ、と一言。
「そうだな、出身国なんざ関係ねえな。日来で騎神に詳しい奴は数少ねえ、頼りにしてるからな」
「……人手が必要なら手伝うぞ……」
「ありがと、なら早く取り掛かろうか」
早く取り掛かるのは入直に武器を早く渡すためでもあるが、この作業に関わる者達は必然的に優秀な整備士達であるため、敵艦の砲撃により傷付いた箇所の修復をしている者達の元へと早く彼らを向かわせるためでもある。
役目を持たないものは足早にその場を去り、各自のやるべきことに取り掛かった。
後書き
マギトと入直が騎神へと挑むため、西貿易区域に行きましたね。
今回は前章より時間軸が少し過去のものです。
だからレヴァーシンクが“ネフィアに頼んでみる”と言っていたんですよ。
そして今回は魔法術師について説明がありましたね。
本文中に説明がなされているのでここで説明はしませんが、魔力については少し触れておこうと思います。
魔力とは流魔の亜種のようなもので、全ての生命が内に宿す内部流魔が突然変異を起こして出来たものです。
だったら亜種じゃない?
そこら辺、詳しくないので知りません。
そして魔力を持つのは基本天人族と翼人族です。
人類の種族については後で説明しようと思いますが、天人族の最大の特徴は長寿ということです。
何故この二種族だけなのかはまだ分かってはいませんが、この二種族は共通して高濃度流魔を浴びてしまった人のなかで少数のものが辿り着いた結果であること。
しかし単純に高濃度流魔を浴びて出来のは魔人族も同じであり、魔人族は魔人なのに魔力を持っていないので謎を深めています。
なのでこの二種族は高濃度流魔を浴びて、その際内部流魔が魔力となった。とされています。
原子の元にもなっている、全てのものになる可能性を秘めた祖源体の流魔を相手にしているので詳しい理由は分からず、そう捉える他ないみたいです。
何かと理由を付けたがるのは人の欲と言うもの。そんな考え方をするこの世界の人は頭が柔らかいと言えますが、同時に考えることを止めたとも言えます。
ですが誰もがそんな“なったからなったんだ”みたいな証明出来無いものを受け入れているわけではなく、この世界にも生まれたのには理由があるはずだ! みたいな人は大勢いるため、彼らの今後の活躍で魔力がどのようにどんな形で生まれたのかが分かる日が来ることに期待ですね。
話しは逸れましたが、魔力は流魔とは違うってことをまず覚えておいてください。
これテストに出ますよっ!
今日の授業はここまで。
また次の授業で会いましょう。
起立……、
礼――!
『ありがとうございましたー』
次回はとある女子五人組から。
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