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三つのオレンジの恋

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第二幕その二


第二幕その二

「貴方達はそれこそ」
「まさに火と水だ」
 それだと自分で言うチェリーだった。
「ずっとな」
「その通りですね。それでですが」
 道化師は彼の話を聞きながら言葉を返した。
「どうしてここに」
「ここにか」
「はい。私達の前に出て来た理由は」
「やはりあの女のことだ」
 むっとした顔はそのままであった。
「あの女がこの王子に呪いをかけていたことは前から知っていた」
「そうだったのですか」
「機を見て何とかしようとは思っていた」
 王子を見ながらの言葉である。
「しかしその前に肝心の呪いが解けてしまったがな」
「そうすると今度はこの呪いで」
「それでだ」
 道化師の話を受けながら述べるチェリーであった。
「魔女クレオンタの城はこれまでの様にはいかん」
「といいますと」
「魔女はあの城に一人で暮らしている」
 まずはこのことを二人に話すのだった。
「そしてオレンジのある場所はだ」
「台所ですね」
 王子がすぐに答えてきた。
「そこですね」
「わかるのか」
「オレンジは食べるものですから」
 だからだと述べる王子だった。
「食べ物があるのは台所ですから」
「その通りだ。流石にわかっているか」
「はい」
 きっぱりとした声で答える。その声は聡明そのものの声であった。
「そこだと」
「そうか。なら話は早い」
 チェリーは彼の言葉を聞いて頷き。そのうえでまた言った。
「そなたにこれを渡そう」
「これは?」
 見ればそれはピンク色のリボンである。それを王子に対して手渡してきたのだった。
 王子はリボンを受け取った。そうしてそのうえでまた魔術師に対して尋ねた。
「このリボンは一体?」
「魔女はリボンが大好きなのだ」
「リボンがですか」
「魔女とても女だ」
 至極当然のことを話すチェリーであった。
「このリボンを見せれば気を取られる」
「ああ、それでですね」
「それからは」
 王子も道化師もここまで聞いてすぐにわかったのだった。
「その隙にオレンジを手に入れて」
「そうするのですね」
「そうだ。そうすればいい」
 まさにそれだと教える魔術師だった。
「わかったな」
「はい、それで」
「わかりました」
 二人ははっきりとした声で彼の言葉に答えた。
「じゃあそれで」
「やらせてもらいます」
「敵もいれば味方もいる」
 チェリーは二人の言葉を受けてからまた述べたのだった。
「そのことはよくわかっているのだぞ」
「わかりました」
 王子の返事を聞くとすぐに姿を消す魔術師であった。まるで煙の様に姿を消し後には何一つとして残ってはいないのであった。
 
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