仮面ライダーディザード ~女子高生は竜の魔法使い~
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epic7 驚愕…新たな敵・ベクターノイド
6月下旬のとある朝…芸術科の女生徒達が、朝からにぎにぎしく話し合っていた。
「ねぇ聞いた?今日来る転校生の話。」
「聞いたわよ、何でも絵にかけては天才級の女子だって。」
「しかも、海外から来て…この間まで京都にいたらしいの。かなりスタイルがいいのかな?気になるわぁー!」
「そうなると、エリカちゃんに新しいライバルが誕生する事になるわね。」
そう、今日芸術科に転校生が来るのである。
しかもかなりの美少女らしく、同じ芸術科の男子もまた噂話に花を咲かせていた。
「おい、聞いたか?今日来る転校生…かなりグラマーらしいぞ!」
「待て待て、グラマーってそれ死語だから。…にしても、どんな子なのか気になるわな。」
「あぁそうだな。話だと北欧から来日して、京都の高校にいたらしいけどな…。」
「北欧から来て京都へ、そしてここかぁ…一体どんな子なんだ?」
あちこちで転校生の話がささやかれる中、ほんの少し遅れて教室に入ってきたエリカは、のんびりと自分の机に向かいカバンを下ろすと、いそいそと身の回りの整理を始めていた。
無論、そんなエリカの元にも友人は話を聞きにやってくる。
「ねぇエリカちゃん、今日転校生が来るって話、聞いた?」
「転校生?…あ、はい、話は聞いてますよ。」
「で、どんな子なのか話していたけど…エリカちゃん、何か知らない?」
「…そうですね。」
しかし、エリカから返ってきた答えは意外なものだった。
「実は、私の幼なじみなんです。」
「「「Σえぇぇぇぇぇっ!!?」」」
「「「Σうそだろっ!!?」」」
クラスの全員が大絶叫する中、授業開始のチャイムが鳴り、小林先生が教室に入ってきた。
「はいはい、みなさん席についてー…朝からずいぶんにぎやかだけど、何かあったのか?」
「はい、実は今日来る転校生の事で、話が盛り上がってました。」
「あぁ、転校生の事ね。でもまずは全員席について。」
そして全員が席につき、小林が皆に話し出す。
「では、今から転校生を紹介しますから…みなさん騒がない様に。」
今か今かとせかす生徒達をよそに、小林は「あー、入ってきて」と転校生を教室に招き寄せた。
そして、転校生は軽い足取りで入ってきた…その身におだやかな風をまといながら。
肩まであるブロンドの髪に北欧人ならではの整った顔立ち、赤と青のオッドアイにエリカと同じ細身の体型。
「えー、彼女が京都から転校してきたスゥエーデン人のセシリア・ナハト君だ。さぁ、あいさつを。」
「はい、セシリア・ナハトです。みなさん、よろしくお願いします。」
「「「おぉぉーっ!かわいいーっ!!」」」
男子学生達が湧く中、セシリアはエリカのいる席の方を向くと軽く手を振り、にこやかな笑顔を見せた。
「ヤッホー、エリカちゃーん!」
「セシリアちゃん!」
(((やっぱり、エリカちゃんの話は本当だったんだ…。)))
セシリアはエリカのところまで来ると、互いに手を取り合い喜び合い、その光景を見た他の生徒はエリカの話が本当だった事を、改めて確認したのであった。
「でもよかった、またセシリアちゃんと一緒だなんて…本当に奇跡みたい。」
「私もそうだよ、エリカちゃん。本当に会いたかった!」
「セシリアちゃん、これからもよろしくね。」
「うん!」
二人の話が盛り上がる一方、小林はいつになったら授業を始めればいいのかずっと待っていたが、結局しびれを切らした小林が「はーい、話はそこまでね」と強引に切り上げ、ようやく授業に入る事ができた。
そして、放課後。
二人は下駄箱で立ち話をしながら、サラを待っていた。
もちろん、エリカはサラにセシリアを紹介するためである。
「セシリアちゃん、これから先輩と一緒に帰るけど…やっぱり緊張する?」
「うん、緊張するね。何だかドキドキするよ。…ところでエリカちゃん、サラ先輩ってどんな人なの?」
「うーん…先輩は、すごく腕の立つ指輪職人で、私は町のみんなを守るために先輩の造った魔法のリングを使って、事件を解決しているのです。」
「…そうだった、エリカちゃんが魔法使いだった事、すっかり忘れてた!」
「Σ忘れては困りますよ!!?」
「えへへ、冗談だよ~。」
「ん、もゥ…。」
エリカの答えに、セシリアがわざとボケてエリカを呆れさせる…そんな二人の明るくも楽しい会話が続く中、やっとサラが二人の前に現れ、にこやかな笑顔を見せていた。
「おまたせ、エリカちゃんに…あなたがセシリアちゃんね?」
「はい、サラ先輩ですね?よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくね。さぁ、家に帰りましょうか。」
「「はい!」」
セシリアがペコリと頭を下げてあいさつしたところで、三人は足並みそろえて校門を抜け、二人は早速セシリアをたちばなに連れて行く事にし、セシリアも満面の笑顔で二人の後について行った。
三人がたちばなに着くと、まずエリカから先に入り厨房でドーナッツを揚げていたしずかに声をかけた。
しずかも、ドーナッツ作りの手を止めエリカの方を向く。
「しずかさーん、こんにちは!」
「おや、エリカちゃんかい。…あれ、後ろにいる子は誰だい?」
「私の幼なじみのセシリアちゃんです。今日転校してきましたので、しずかさんのドーナッツをぜひ食べさせてあげたいのです。」
「おやそうかい、それは嬉しいねぇ。…セシリアちゃん、私が腕によりをかけて作ったドーナッツをどうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
セシリアは、整然と並んだドーナッツを見回しながらどれを食べようかと迷った後、手にしたトングを広げてドーナッツをトレーに乗せていく。
結局、エリカはいつものプレーンシュガーを2つ選び、サラは黒糖プレーンと新メニューのヨーグルトクリームを、セシリアはやわらかケーキドーナッツとカリカリ揚げ饅頭をトレーに乗せていた。
ちなみにカリカリ揚げ饅頭とは、アーモンドの粉を練り込んだドーナッツ生地を薄く伸ばし、そこにこしあんを包んで揚げた…言わゆるあんドーナッツである。
三人は代金を支払い店を出ると、足取りも軽くサラの館へと引き返していった。
三人が館に到着しようとしていたのと丁度同じ頃、城北商店街近辺をパトロールしていた警官からの通報を、署内で待機していた片桐が受けていた。
それによると、城北商店街にあるロータリーで二体のホムンクルスが乱闘をしている、と言う情報であった。
「ホムンクルスが仲間割れ?まさか、信じられん!」
『はい、自分も目を疑ったのですが…片方は虎に似たマッチョ系で、もう片方は宇宙人みたいな姿をしていました。』
とここで、片桐は部下の報告に疑問を抱いた。
通常、ホムンクルスは動物をモチーフとした者が多く、報告にあった宇宙人型は見た事がない。
…おそらく、どこかの錬金術師が実験で作り出した強化スーツだろう、片桐はそう考えていた。
「宇宙人?そんな姿をしたホムンクルスなぞ聞いた事もないが。」
『とにかくこのままでは被害は大きくなるばかりです。片桐さん、至急応援を!』
「わかった、すぐに応援に向かう!待ってるんだ!」
『はい、お願いします!』
百聞は一見にしかず…そう思った片桐は、アームズリング一式を入れたバッグを手にし表に出ると、コネクトリングを使って魔法陣から一台のバイクを取り出し、それに乗って現場に向かった。
一方、城北町商店街ではホムンクルス同士の(?)戦いが数分程続いており、商店街の人々は呆然としていた。
そのホムンクルスは、片方は以前ディザードと戦い痛手を被ったパワード・タイガー、もう片方は全身を白い色の宇宙服みたいな装甲に身を包んだ、頭部に大型電子機器を搭載した楕円形のヘルメットをかぶった謎の人物で、両手に銃を装備しており所かまわず砲撃を続けていた。
片桐に連絡をした警官達も両者の激しい戦いに手が出せず、遠くから見ているしか手はなかった。
そもそもの発端は、パワードタイガーが魔法陣で商店街にテレポートしてきた事から始まる。
以前負った傷はすっかり癒え、新たに白銀の胸部アーマーを装備しており万全の体制で待ち構えていた。
目的は当然、仲間達を倒してきたディザードを倒す事…ただそれだけである。
(さぁかかって来い、ディザード…俺は以前よりも数倍パワーアップしているから、負ける気が全くしないぜ。)
そう、パワードタイガーは前回の戦い以来負の力を貯め込む事に集中し、昨夜になってようやく負の力の充填が完了…ついでに新たな力まで手に入れていたのである。
もしこれで負ける事があったら、散っていった仲間達に申し訳が立たない…パワードタイガーは己の心に強く誓い、あぐらをかいて待ち続けていた。
待ち続ける事数分、今日は来ないのか…とあきらめかけていた、その時。
目の前に光の輪が現れ、ユラユラとゆれていたのである。
パワードタイガーは待ってましたとばかりに立ち上がり、両拳をガシガシぶつけて待ちかまえていた。
奴か、それとも別の存在か……?
パワードタイガーは、今か今かと舌なめずりしながら光の輪を見つめていたが。
しかし、現れたのはディザードでも何でもない白い宇宙人型の変な敵。
さすがのパワードタイガーも、期待はずれの敵に内心苦笑していた。
がしかし、目の前の奴が誰だろうが関係あるものか、相手を無視するのは俺のプライドが許さねぇ…パワードタイガーは取りあえず白い宇宙人型に質問をぶつけた。
『…テメェは何者だ。』
『……。』
『何かしゃべったらどうなんだ!』
『……。』
すると、宇宙人型の敵は両手を銃に変形させパワードタイガーの足元に発砲してきたのである。
ヂュンッ、ヂュンッ!!
『…貴様に話す事はない。相手になるなら、相手しよう。』
『…ふん、ようやく答えたか。しかも俺に向かって発砲するとは、いい度胸だな。』
『貴様なぞ、私の敵ではない。古き人造人間よ、お前達は早く異世界に帰るがいい。』
『そんな事言われちゃあ、黙ってる訳にはいかないな。いいだろう、竜の魔法使いが来るまで相手になってやらぁ!』
こうしてパワードタイガーと謎の敵との戦いが始まり現在に至っている。
「…な、何だこりゃ!?ロータリーがメチャクチャじゃないか!!」
「あ、片桐刑事!ご覧ください、あの二体のおかげでロータリー周辺が大パニックですよ。」
片桐が到着し辺りを見回した頃には、ロータリーの近辺には破壊された木々の残骸が散乱しており、住人は完全に近所へ避難して迷惑そうな顔で成り行きを見守っている。
確かにこのままだと、いつまでたっても全くらちが開かないのは明白。
仕方なく片桐はアームズリングとドライバーオンリングを取り出し、手早く変身すると右のリングをコネクトリングに変更、それを使用してメタルカリバーを取り出し二体のいる戦場に向けて走り出した。
「待て待て待てえぇぇぇぇ、こんな街中で戦うな…いい加減にやめろ!」
『ん?テメェは確か、竜の魔法使いのオプション…。』
『貴様の様なおまけと戦っても、たかが知れている。おとなしくその場から離れるのだ、ケガしても知らぬぞ!』
「そこの死にぞこない、俺は玩具菓子のおまけか!それに反対側の宇宙人、お前の方こそ去るんだ!巻き込まれても知らないぞ!!」
アームズはメタルカリバーに取り付けられたエンチャント・フォンに指をタッチし、画面に出た項目から属性魔法を選択、そこから風を選んでタッチした。
『エンチャント・ストーム!!』
エンチャント・フォンから音声が発せられると同時に刀身に風の力がまとわれ、渦を巻いて巨大な柱を形成する。
あまりの出力にアームズは一瞬よろけそうになったが、すぐに体制を立て直すや一直線に二体の敵目がけて走りだした。
「うわっ、おっとっとっ…こいつはとんでもないじゃじゃ馬娘だな。いくぞ!!」
時を同じくして、エリカら三人はリビングでドーナッツの袋をテーブルの上に置き、セシリアから京都在学時の土産話を聞いていたが。
キイィィィィ…ン。
ザッ、ザッ、ザザザ…。
三人はホムンクルス出現のシグナルをキャッチしたが、反応がおかしかった。
片方はクリアに反応するが、もう片方はノイズが入っているのか雑音に近い反応をしていたのだ。
「…?」
「この反応は…。」
「何だか反応がおかしいね。スッキリしないと言うか、やかましいと言うか。」
何か嫌な予感がする…エリカはセシリアをサラに任せ館から出ようとしたが、急にセシリアがエリカを止めた。
巻き込まれたら大変とばかりに、エリカは留まる様説得するが。
「エリカちゃん、私も行く!」
「セシリアちゃん、私は遊びに行く訳じゃないの!…ごめんね。」
「セシリアちゃん、お願いだからここにいて。エリカちゃんはホムンクルスと戦うために行かなくちゃならないの。」
「ううん、そうじゃない。さっき変な雑音が聞こえなかった?」
「あ、そう言えば…。」
「私も聞こえていたけど、それがどうしたの?」
「その雑音、実は私も関係してるの。」
「セシリアちゃんが?どうして?」
すると、セシリアは二人に臆する事なく自分自身の事を話し始めた。
それこそ、今後に関わるであろう重大かつ心強いカミングアウトを。
「実は私…超能力者なの。」
「え、それ本当なの?」
「セシリアちゃんが…なるほど。だから、先程雑音が入ったのですね。」
この世界では、一般に属性リングが使えるか使えないかで魔法と超能力は区分されており、属性魔法を使えた魔法使いが属性リングを返上し超能力者に路線変更した…というケースは全く珍しくない。
そう、エリカや片桐も属性リングが使えなければ、超能力者になっていた可能性があったのだ。
となれば、先程の雑音も魔力か超能力かを区別する点で簡単に説明がつく。
このカミングアウトにサラは驚き、エリカは先程の雑音にどうしても引っかかる部分があったため、かえってスッキリしていた。
「…でも、大丈夫かな。相手はかなり手強いかもしれないのに。」
「あ…でも、超能力が使えない私にはすごく心強いですよ。セシリアちゃん、早く行きましょう!」
「うん、急ごう!」
エリカは笑顔でセシリアに声をかけ、コネクトリングでマシン・アバタールを取り出すとセシリアを乗せ、現場に向かって走り出した。
エリカ達が現場に到着すると、アームズが二体の敵を相手に丁々発止の戦いを展開していた。
パワードタイガーは肩で息をしながら何とか大剣を振り回し、宇宙人型は疲れた様子すら見せずに銃を構え、アームズに発砲を続けている。
アームズはと見れば、メタルカリバーの属性を雷に切り替え宇宙人型に攻撃しているが、どういう訳か命中しているものの…まるでそよ風が肌に当たっているかの様にしか感じておらず、逆に砲撃を喰らい後退していた。
「!…片桐さん!!」
「あの白い鎧の人が、そうなの?」
「はい、片桐刑事は私と同じ魔法使いなのです。」
「へぇー、そうなんだ。」
エリカはマシン・アバタールから降り、コネクトリングでディザーソードガンを取り出すとガンモードに変形させ、宇宙人型に砲撃したが。
『…新たな敵か。ふんっ!!』
宇宙人型は薄く輝くバリアを張り弾丸を弾き飛ばすと、エリカに向けて砲撃を開始した。
すると、セシリアは人差し指を交差させ×の字を作ると静かに念じ、飛んできた弾丸を全て弾き飛ばしたのだ。
「セシリアちゃん、ありがとう。」
「いえいえ、…それよりエリカちゃんは早く片桐さんのところに!」
「あ、はい!」
エリカは猛スピードで走り出し、手早くDZルークに変身するとディザーソードガンをソードモードに組み直し、ディザーハルバーダーを魔法陣から取り出し左手に握り直すや二刀流でパワードタイガーに斬りかかっていった。
パワードタイガーもDZルークを視界に捉えるや、アームズから標的をDZルークに変更し大剣を構えて走り出した。
「片桐さん、お待たせしました!」
「エリカちゃんか!すまない!!」
『現れたな…竜の魔法使い!今日こそテメェをブッ潰してやるぜ!!』
「あなたは、あの時の!ですが今回は負けません!!」
同じ頃、セシリアと宇宙人型は互いににらみ合いながら相手の出方を伺っていた。
セシリアは宇宙人型が攻撃する事を見越して右の手刀に念力を込め、左手には…おそらくテレキネシスで取り寄せたのだろう自動小銃が握られ、宇宙人型に銃口をロックオンしている。
(まさか、こんなところでコイツとはち合わせするなんて…。)
(あの女、超能力者なのか?…ならば、無視する訳にはいかない!)
宇宙人型はセシリアに危険を感じたのか、両手の銃を念力で格納すると何もない空間から光の輪をを作り、そこから刃先が赤く輝く巨大な鎌を取り出すやセシリアに向けて振り回していった。
『貴様は確か…。止むを得ん、今ここで始末し我らの憂いを取り除く!』
「私だって負けられないよ!あんたの様な奴を放っておくと、何をするかわからないから!」
DZルークとパワードタイガー、セシリアと宇宙人型…双方で戦いが始まってから数分、アームズは後方に下がりメタルソードを魔法陣にしまうと、ガトリングリングを取り出し右手中指に装着、間髪入れずドライバーに触れた。
『ガトリング・サモン!!』
そして8連式大型ガトリング砲『クラウソラス』を構え、まずセシリアを援護すべく宇宙人型に向けて砲撃を開始した。
それはセシリアが宇宙人型の鎌を手刀で受け止め、返しで小銃をボディに叩き込んだところへのタイミングである、かわせるはずがない。
『…む?遠くからの砲撃か。しかし!!』
だが、宇宙人型は再びバリアを発生させ弾丸を弾き飛ばす…はずだった。
しかし、それを見逃すセシリアではない。
セシリアは弾の尽きた小銃を投げ捨て、両手を交差し念力を送り始めた。
「片桐さん、援護します!これでも受けなさい!!」
「!?」
すると、宇宙人型が発生したバリアに白い霧がかかり、一部に大きな穴が開いた。
そう、セシリアが念力を増幅させ霧型の中和エネルギーを発生、バリアを中和し攻撃を通しやすくしたのだ。
「墜ちろオォォォォォッ!!」
…叩き込むなら今しかない!
アームズは魔力が尽きる限界までクラウソラスをフル稼働させ、その弾丸を宇宙人型に叩き込む。
全魔力が尽き、クラウソラスの砲身がカラカラと空回りし。
宇宙人型の周辺にも硝煙が立ち上り、誰もがアームズとセシリアの勝利を確信していたが。
だがそれでも、宇宙人型は無傷のまま平然として立っており、表情も先程とあまり変わっていない。
「…ウソ、だろ!?」
「それでも無傷だなんて…。」
すると、宇宙人型はセシリアとアームズに向き直りパンパンと埃を叩くと、穏やかな口調で二人に語りかけてきた。
「今日のところは、この辺にしておこう。…我が名はガンナーベクター、超能力者が生みし未来のホムンクルス・ベクターノイドである。」
「未来のホムンクルス…。」
「……。」
「また会おう、魔法使いと超能力者よ。」
そして宇宙人型…否ガンナーベクターは空中に光の輪を作り、そこから吸い込まれる様にテレポートしていった。
一方、DZルークとパワードタイガーの戦いは未だに決着がつかず、更ににらみ合っていた。
互いに斬撃を決めながらも牽制し有効打を探ってはいたが、中々決め手が見つからず戦いが長引いていたのである。
『くっ…中々やるな!』
「はぁ、はぁ、はぁ…まだまだっ!」
DZルークの方は魔力こそまだ残ってはいるが、当然ながら向こうは魔法対策に抜かりはないはず。
はたして今の状況をひっくり返せるかどうか…。
だが、そんな時だった。
『こなくそおオォォォォォッ!!』
パワードタイガーは一気にダッシュをかけると、大剣を再び握り直しDZルーク目がけて横に振り回したのだ。
DZルークはディザーソードガンとディザーハルバーダーを交差させ魔法壁を発生、防御の構えを取るが。
『…こいつを喰らえ!』
「きゃあアァァァァァッ!!」
パワードタイガーの一太刀はDZルークの防御を魔法壁もろとも砕き、ボディに刃が突き刺さると木の葉が舞う様に吹き飛び、何度もバウンドしながら地面に叩きつけられた。
しかも最悪な事に、今の衝撃で変身が強制解除され、元のエリカに戻ってしまったのだ。
「うぅぅ…。」
『やった、やったぞ!…さぁ、これでトドメだ!!』
パワードタイガーがエリカの元に歩み寄り、大剣を今まさに振り下ろそうとしていた…!!
後書き
次回、epic8 「聖剣…全てを断つ力・ヴァルムンク」
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