DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
第3話:悲しい現実
(山奥の村)
リューノSIDE
この村(時代)に来て数週間が経つ……
村の人達も協力はしてくれているみたいなのだが、全然お父さんの情報は入ってこない。
目立つ人なのだから情報くらいは入ってくると思ってたのに……
とは言え諦める訳にもいかず、今日も町から帰ってきた大人に話を聞きに行く。
本日は、客の来ない宿屋を経営しているポサダさんを尋ねます。
宿屋なんか潰して、他の事をやれば良いのにって言いたいけど、言わない方が面倒がなくて良い。
「こんにちはー……ポサダさん居ますか?」
「……………おやリューノちゃん!?」
普段は誰も居ないはずなのに、ポサダさんは客室で誰かと会話をし、それを区切らせて私の前に現れた。
「え……お客さんが来ているの?」
「そ、そうなんだよ……昨日、町からの帰りに森の中で迷っている人を見かけてね……」
………で、安易に村のルールを破ったのか?
興味本位で客室の方を見ていると、その客が顔を出し私と目があった!
「お、お父…さん……?」
驚いた事に、その客というのは私のお父さんにソックリなのだ!
「父? 君の? ……残念だか私は違う」
私が驚き呟くと、お父さん似の男性は額にシワを寄せ、私のお父さんである事を否定する。
分かっている……否定されるまでもなく、この男が私のお父さんでない事は!
ただ顔が似ているだけ……
髪の色が銀髪だし、瞳もお父さんと違って怖い感じがする……
何より雰囲気が全然違いから、この男がお父さんであるハズがないのだ!
「わ、分かってるわよ! 私のお父さんの方が、アンタよりもっとイケメンなんだから……違うって事は分かってるの!」
男のプレッシャ-に飲まれそうになった私は、慌てて大声を出し彼の存在を拒絶する。
「ちょ、ちょっとリューノちゃん……お客さんに対して失礼だろ!?」
「うるさいわねメタボ親父! 私のお客さんじゃないんだから、関係ないわよ!」
失礼な事を言っている自覚はある。
でも大声を出してないと、この男の恐怖に包まれ泣きそうなのだ!
「随分と口の悪いお嬢さんだ……この村の子供は、君だけなのかい?」
「いえ……他にシンという男の子も居りますよ」
私が恐怖で固まり男を睨み続けていると、ベラベラと村の事を喋り出すポサダさん。
勝手に村の事を教えてんじゃないわよ!
もしかしたら、この男は子供を攫って商売する悪人かもしれないのに……
私やシン……シンシアが危険になっているかもしれないのに!
怖くなった私は、急いでシンの下に駆け付ける。
バトウのオッサンに剣術を習っている最中だけど、それを遮って危険を伝える。
そんな時だった……
村の入口の方から叫び声が聞こえてきたのは!
リューノSIDE END
(山奥の村)
シンSIDE
突然村に魔物の大軍が押し寄せてきた!
俺は驚き何も出来ずに固まっていると、父さんが近付いてきて、俺とリューノちゃんを村の地下室へと連れて行く。
今まで行き止まりだと思っていた地下室の壁を押すと、更に奥へ部屋が続いている。
そこに俺とリューノちゃんを入れると……
「良く聞きなさいシン……私達はお前の本当の両親ではないのだ」
「え、何を言ってるの父さん!?」
「詳しい事を話している時間は無い……ただ知っていてほしい事は、お前が伝説の勇者である事だ。何れ現れる魔界の帝王を倒す天空の勇者である事だ!」
「お、俺が……伝説の勇者!?」
「そうだ……だから我々村の者は、お前を外界から隔離し秘匿して、立派な勇者になる様育ててきたのだ」
「で、でも……俺は父さんと母さんの子供だよ! 二人を尊敬し愛しているよ!」
俺は父さんに抱き付き泣きながら現実を否定する。
「ありがとうシン。私もお前を本当の息子と思って育ててきた……」
「ちょっと! そんな事より魔物が迫って来てるんでしょ!? みんなで力を合わせて、奴等を追い払いましょうよ! 私だって戦えるのよ……この鞭とヒャドの魔法を使って……」
その通りだ……リューノちゃんの言う通りだ!
俺が伝説の勇者であるのなら、襲ってきた魔物など蹴散らしてやれば良いのだ!
父さんから離れると、腰に下げた銅の剣を確認し、臨戦態勢を取る。
「お、おい……お前達は「シン、リューノちゃん!? まだこんな所に居たのね?」
父さんが何かを言おうとしてたのだが、現れたシンシアが遮る様に話しかけてきた。
何時もの優しい表情はなく、厳しく緊張している表情で……
「二人とも聞いて……敵は直ぐそこまで攻めてきているわ! 此処が最後の砦になるわ……魔物の中に、毒を撒き散らす奴が居たから、二人ともこの薬を飲んでおいて」
そう言うと小瓶に入った薬を俺とリューノちゃんに手渡すシンシア。
俺もリューノちゃんも言われるがまま薬を飲み干す。
すると突然身体が痺れ声も出なくなってきた!?
持っていた小瓶を落とし、その場に蹲る……
そして父さんとシンシアを見上げ、何かを言おうとする……が、声が出てこない。
「ごめんなさいシン……ごめんなさいリューノちゃん……」
「済まんなシン。お前はまだ成長途中の勇者なのだ……いま敵の前に姿を現せば、確実に殺されてしまうだろう……それだけは避けねばならない。お前は人類の希望なのだから!」
「貴方達が飲んだのはエルフ属に伝わるシビレ薬よ。目が覚めた時には薬の効果は無くなっているから、抵抗せずに受け入れなさい……抵抗すれば苦しいだけだから」
そこまで言って俺の身体を床に寝かし付けると「モシャス」と魔法を唱え、俺と同じ姿になるシンシア。
「目が覚めたら、巻き込んでしまった無関係なリューノちゃんを連れ、この村を離れなさい……貴方が彼女を守らなきゃダメなんだからね! ……大好きだよシン」
そう言って、この隠し部屋を閉じ魔物達の下へ出て行くシンシアと父さん。
彼女は俺の姿で魔物の前に出て、俺の代わりに殺され安心させる気だろう。
そんな事ダメだ! 俺はシンシアを助けなきゃならないんだ!!
勇者とか世界の平和とか、そんな事どうでも良いんだ……大好きなシンシアを守らなきゃ……
ぶ厚い地下室の壁から、外の音が聞こえてくる。
『お前が勇者シンか?』
『そうだ……私が天空の勇者シン! お前等魔族などこの場で滅ぼしてくれる!』
『ふん! 活きが良いボウズだな……良いだろう、魔族の王デスピサロ様が直々に殺してくれよう!』
違う……それは俺じゃない!
俺の大好きなシンシアなんだ……手を出さないでくれ……
俺は祈った……
心の底から祈った……
だが、その祈りは通じることなく、俺の意識を奪って行くだけ……
目が覚めた時、全てが夢で……父さんも母さんも、シンシアも村のみんなも……全員が無事であればどんなに良いか……
無力な自分が憎いよ……
シンSIDE END
後書き
リュカさんは、人質になってしまった自分の所為で父親を目の前で殺され、さらに10年間も奴隷として育ってきた……
そんで、あんな性格に成長してしまったけど、シン君はどうだろうか?
彼はどんな性格に成長するのだろうか?
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