ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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コラボ
~Cross storys~
episode of cross:開始
アインクラッド第二十層主街区【サンカレア】
のどかな森林と草原が主流の、取り立てて景勝地でもなく、観光地でもなく、とくに実入りのいい場所でもない。
さらには、主ボリュームゾーンも過ぎているこの階層には、中層プレイヤーすらも訪れずに人はゼロにも等しい。
だが、今はそんな閑散とした空気は欠片もない。
ざわざわ、がやがや。
数え切れないような人が溢れていて、気のせいか普段ならば空しく響くのみのNPCの掛け声も戸惑いがちな雰囲気が混じっている。
あちらこちらで、まるでお祭りの時のようにプレイヤーが出す屋台が並んでいて、景気の良いドラ声を響かせていた。
それもこれも、今日の午後二時から開始される大規模デュエルイベント《守護霊達の亡霊》を見るがために集まった者達だ。
なにせ、参加するのが攻略組も攻略組、その中でも選りすぐりの歴戦のトッププレイヤー達だからである。
呆れたことに、誰が勝つかで賭けも始まっている。
その中身は…………ご想像にお任せしよう。
それらの露店を回って、しこたま買い込んだ食い物という食い物を頬に詰め込み、リスのようにぱんぱんになっている顔中に笑顔を浮かべつつ、レンは歩いていた。
ちなみに経費は、《六王》請求である。
「レンはがめつい」
隣を歩くユウキがそう言ったが、レンは全く気にせずに笑顔で返す。
「いいじゃん。貰っとくものは貰っとかないとね」
「………………………………………」
はぁ~ッ、と大きなため息を洩らすユウキのさらに隣。
チョコレート色の肌を持ち、長い黒髪を後頭部で一まとめにしてポニーテールにしている女性プレイヤーが言った。《柔拳王》テオドラである。
「それより、レン。いいのか?もう少しで始まるぞ」
時刻は午後一時と四十分。開始のセレモニーはもう始まっている時間帯だった。まぁ出ないのだから、別に三人には関係のない話だが。
「ん~?もうひょっとだへ………?」
「「……………………………………」」
数分後、イラッとした女性プレイヤー達に引きずられていくレンの姿があった。
───卿らよ。それではこれで我の演説は終了するとしよう。存分に楽しんで欲しい」
シキとシンが開催セレモニーが開かれている転移門広場についた時、結構本格的に作られたステージの上にいた《白銀の戦神》ヴォルティスがスピーチを終えたところだった。
あまり人との接点が薄いシキでも、知っている。アインクラッド最強と名高い戦士サマだ。
この広場が作られたそもそもの目的である転移門からは、さっきから途切れることなくプレイヤーが吐き出されている。青い転移光が、マスコミのカメラのフラッシュみたいに瞬いては消える。
「よかったじゃねぇか。少なくとも、退屈はしなさそうだぜ」
隣を腕を組みながら歩くシンが、他人事のように言う。いや、まあ実際に他人事なんだけれども。
「無茶言うなよ………。っと、そうだ。訊き忘れてた」
「?なんだ?」
「HPはどうなるんだ?まさか《全損決着モード》じゃねえよな?」
アインクラッドでのデュエルには、大きく分けて三つのモードがある。
一つ目は《初撃決着モード》。相手の強攻撃がクリティカルで入るか、HPが半分を切ったら負けというモードである。
安全面を考え見て、このモードが現在アインクラッドで最もよく用いられるモードである。
二つ目が《半減決着モード》。これは名前の通りで、HPが半分、イエロー表記になったら負けというルールだ。
これにしたらいいのではないか、と思われるかもしれないが、それでも決まり手がクリティカルヒットだったりするとHPが危険域まで落ち込むために、あまり用いられない。
そして最後の三つ目が、《全損決着モード》だ。ルールは極めて単純。
相手のHPをゼロにした者の勝ち。
最後のはかなり当たり前だし、絶対にありえないことなのだが、それでも一応とシキはシンに訊いた。モノホンのデスバトルロワイヤルに放り込まれたら、堪ったもんじゃない。
幸いにも相棒は、はははっと笑って正常な反応を示してくれた。
「んなわきゃねぇだろ。お前、イベントの説明文見てなかったのかよ」
「んなもん、見てねぇよ」
シンは呆れたような声色で、実際にやれやれとか言いながら言った。
「これだよ、これ」
そう言いながら、相棒が取り出したのは拳大くらいの石だった。不思議な石だ。その大きさは、手に持つくらいにちょうどいいのだが、見た目が非常に変わっていた。
何と言えばいいのだろうか。
例えて言うならば、薄い岩石の皮一枚で塞き止められている溶岩と言えばいいのだろうか。内部は詳しくは見えないのだが、僅かに赤に近いオレンジ色が漏れ出して、なにかと神秘的な様相を漂わせている。
「んだそれ。お前のか?」
「バーカ、これはお前のだ。こいつを持ってれば、どんな攻撃を受けてもHPが1より減らないんだと」
シンが投げてきたソレを空中キャッチする。
「へー、便利なもんくれるんだな」
「まぁ当たり前だが、イベ専用アイテムだぞ」
「当たり前だろ。こんなチートアイテムがあって堪るか」
そんな掛け合いをしつつ、シキは聴覚にぎゃーぎゃー騒ぐ子供の声を聞いた。
シンも気付いたのか、二人して声のした方向を見る。
そこには、深い紫というちょっと珍しいストレートの髪を揺らす少女と、褐色の肌を持つポニーテールの女性に引きずられていく、真っ赤なフードコートに黒のロングマフラーを着た少年の姿があった。
大昔の西部劇のように引きずられていく少年は、いまだに元気が残っているのか、ぎゃーすか騒いでいる。
「「………………………………」」
何となく憐れみの目を向けて、シキとシンはその奇妙なトリオを見送った。
「さ、さぁて、もすぐだぞ。急げよ」
微妙になった空気を書き換えるように、大きな咳払いと共にシンが言う。
その言葉に、シキは視界端に浮かぶ時計クロックを見た。デジタル表記のそれは、午後一時五十五分を指していた。
盛り上がりは、最高潮になっていた。
時計の針が五十九分を指し、特設ステージに開始の宣言をすると言うNPCの町長が上がった。
豊かな白髭を生やすその町長を、ゲツガが、シキが、ホークが、セモンが、レンが見る。
数百の人数が溢れ変える広場の中央、数多くの視線を集める町長は、少し焦らしてから厳かに言い始めた。
「………永劫とも言える時と時空の中、会いまみえ、邂逅した者達よ」
イベントの開始とも言えるその合図に、広場に集まるプレイヤーの中で、その五人だけが奇妙な違和感を感じた。
何かとは言えない。ただ何か、意識の片隅にチリッと弾けるものがあっただけだ。
五人がそれぞれ思い思いに首を傾げている間にも、町長の話は続いていく。
「全く、本当に此度の偶然には驚かされた。天文学的な数字の下、お前達は今ここに集結しているのだ。これでまた一つ、《エラー》が蓄積された。これであのお方の目的も、また一つ階段が踏まれた」
穏やかな顔をした町長の口から発される、意味不明かつ支離滅裂な言葉に、広場に集まる一同の顔にも、やっと訝しげな色が浮かんだ。
それと同時に、五人の胸中の違和感は無視できないものになっていく。
「まぁ、これもあのお方の予想足り得た事なのかもしれないな。《扉》を開けた、あのお方ならば………」
そこまで町長が言いかけたとき、とうとうプレイヤーの集団の中から口々にブーイングが起きた。
「意味ワカンネーこと言ってんじゃねぇぞ!」
「そーよ!それより、早く始めてよ!!」
広場のあちこちから漏れ出る不平不満。パッシング。ブーイング。
だが、その大きなうねりとも言える声を聞いても、白髭町長の顔色は欠片も変化しなかった。ただ、人当たりの良さそうな表情を、どこか無機質めいた、意思なきロボットのような色を混ぜた。
ゾクリ………、と。
嫌な、途轍もなく嫌な感じの悪寒が、突如五人の背中を滑り落ちた。
マズい。何だか判らないが、ここに居たら絶対にマズい。
本能が発する警告音に従って、五人はそれぞれの付き人と連れ立って、この場から己の体を引き離そうとする。
だが───
その行動さえも見下すような口調で、町長は言った。
「よかろう。貴様らの望みどおり、始めてやろう。喜べ、そして畏怖せよ。これが貴様らの望んだ───」
そして、その白髭の下から発された音という名の空気の振動が、一同の聴覚を揺らす前に
世界から、音が消えた。
五人だけが取り残された広場の中央で、白髭を生やしたNPCの言葉だけが、いやによく響いた。
「───コロシアイだ」
後書き
なべさん「はい、始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!」
レン「あぁ~、休暇終わっちゃったぁ~。楽しかったのにぃ」
なべさん「お前遊んでただけだろ!しかもメインヒロイン(ロリ)ときゃっきゃうふふと戯れてたんだろ!?」
レン「何て酷い言い方。カグラねーちゃん、しくったな」
なべさん「しくってない!お前だろ、カグラを寄越したのは!引っ掻き回されただけで終わったぞ!!」
レン「え?トドメは?」
なべさん「しとらん!てめーらホントにいい加減にしろよ!!」
レン「はぁ………」
なべさん「本気でため息をつかないでくださいますか?」
レン「そんな些細なことはさて置いて」
なべさん「さて置かないで!?」
レン「今回はいきなりラストでベタ路線思いっきり外れたな」
なべさん「まぁね。俺はアブノーマルな人ですから?」
レン「………ドヤ顔きめえ。はい、自作キャラ、感想を送ってきてください!それではー」
──To be continued──
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