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ジークフリート

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第一幕その二


第一幕その二

「全く」
「御前より役に立つからさ」
 こう返す若者だった。
「家に座ってるばかりで役に立たない剣ばかり作る御前よりな」
「ジークフリート、そんなことを言うのか」
「僕は聞いたんだよ」
 ここでその若者ジークフリートはミーメに対して告げるのだった。
「深い森の中でね」
「この森でか」
「何かの囁きを」
 笑いながら彼に告げる。
「そしてその誘うままに角笛を吹くと」
「あの熊が来たというのか」
「友を呼んだのさ」
 高らかな声での言葉だった。
「そして藪の中から出て来たのがあの熊だったんだ」
「あの熊がか」
「そうさ。僕はあの熊が気に入ったんだ」
 笑みはそのままである。
「御前なんかよりずっとな」
「何でまたいつもわしにそんなことを言うんだ」
「じゃあ役に立つ剣を作れ」
 ジークフリートは彼には容赦がない。
「いいな、役に立つ剣をだ」
「それなら一本作っておいた」
 先程言ったその剣のことだ。
「それを使え」
「これか」
 見れば岩の上に一本の剣があった。白銀の光を放つ如何にも鋭そうな剣である。
「これがそうなんだな」
「そうだ。今度は御前の力でも折れはしない」
 ミーメは胸を張って言う。
「決してな」
「それじゃあ」
 ジークフリートはまずその剣を手に持ってみた。そのうえで大きく一振りする。するとだった。
 何とそれだけで剣は粉々になってしまったのだ。一瞬であった。
「何と、この剣も」
「また駄目だったじゃないか」
 ジークフリートはその粉々になった剣を後ろに放り捨ててミーメに告げた。
「何だい、やっぱり御前はへぼじゃないか」
「わしをへぼだというのか」
「そうだ、大法螺吹きだ」
 こうまで言う。
「それでよく巨人だの激しい戦いだの勇敢な行動だの言えるな」
「それはわしが悪いのではない」
「あと熟練した守りだったな」
 ジークフリートの言葉は続く。
「偉そうに言うが僕の剣一本作れないじゃないか」
「それは御前の力が強過ぎるからだ」
 ミーメはそれを話に出した。
「そもそも何だ、さっきの振りの強さと速さは」
「僕は普通の力と速さしかないよ」
「いや、それは違う」
 ミーメはさらに抗議する。
「御前の力はだ」
「そんなに言うのなら僕が使える剣を作れ」
 とにかくそれを言うジークフリートだった。
「いいな、それは」
「何と恩知らずな奴だ」
 ミーメはここでもたまりかねて言った。
「そもそもな。御前はだ」
「何だっていうんだ?」
「わしが育ててるんだぞ」
 このことを言ってきたのである。
「このわしがだ」
「恩を着せるつもりか?」
「そう思うのならそう思え」
 ミーメも流石に頭にきていた。
「御前にいつも色々としてやってるだろうに」
「してやっているか」
「そうだ」
 怒った声で返す。
「いつも優しくして親切にしているな」
「そうだったか?」
「それを忘れたのか?親切にしてくれている相手には喜んで恩を返してだな」
「僕はそんなことを感じたことはない」
 あくまでこう言うジークフリートであった。
 
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