八条学園怪異譚
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第二十八話 ご開帳その一
第二十八話 ご開帳
愛子は家の居間で妹の愛実とその幼馴染みである聖花に八条学園のことについて話していた、二人に聞かれたからだ。
どら焼きを冷やした麦茶で食べつつこう言った。
「あそこのお寺はね」
「ええ、どういったお寺なの?」
「何か変わったところとかあるんですか?」
二人は何気なく泉のことも問うた、愛子に気付かれない様にして。、
「何か面白いお寺らしいけれど」
「どういう意味で面白いんですか?」
「私も一回行っただけだけれど」
愛子はこう前置きしてから二人に話す。夏の息抜きの合間に。
「ご本尊が凄いらしいのよ」
「ご本尊?」
「そう、不動明王だけれど」
憤怒の形相でありその法力であらゆる魔を降す明王である。魔を降す明王の中でも最も力が強い存在である。
「その外見がね」
「怖いとか?」
「閻魔様より怖いのよ」
怖いといえば閻魔、そこから言うことだった。
「手や顔の数は普通だけれど」
「あっ、仏像って手が何本もあったりしますよね」
聖花は愛子の言葉でこのことを思い出した。
「顔とかも」
「中には足もね」
「そうですよね」
大威徳明王は六面六手六足だ、その為六足明王とも呼ばれる。
「目とかも」
「千手観音はあれよね」
愛実はこの仏のことを出した。
「確か」
「そうよ、実際に手が千本ある仏像もあるわよ」
愛子は妹の疑問にすぐに答えた。
もっとも小さな手が後光みたいにある様になってるけれどね」
「手が千本って」
「凄いでしょ」
「もう何が何かわからないわね」
「インドでは神様はそうなのよ。人間より力があるから」
「手とか足が何本もあるのね」
「そうなのよ」
それでだというのだ。
「千の首がある蛇の神様もいるし」
「何か千が多くない?」
「千っていったら沢山よね」
「つまりそれだけその神様の力が強いってことなのね」
「そう、それで仏様もなのよ」
仏教はインドから起こったものだから仏もそうなるのだ。
「お不動さんでも手や顔が幾つもあったりするのもあるわよ」
「そうなのね」
「けれど不動明王はかえって力が強過ぎるせいかね」
それが原因ではないかと言ってだった。
「顔も手も普通の人間と同じであることが多いのよ」
「そういえばお釈迦様とか大日如来も」
聖花が言う。
「弥勒菩薩も」
「凄く力の強い仏様はね」
「かえって普通なんですね」
「そうみたいね」
「そうですか」
「そう、それでじゃないかしら」
この辺りは愛子もよく知らない、彼女も僧侶でも宗教学者でもないのでそこまではよく知らないのである。
だが今はその不動明王像について話すのだった。
「それでそのお不動さんだけれど」
「凄く怖い顔なのね」
「一回見たら忘れられない位ね」
そこまでだというのだ。
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