ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第6話
Side 渚
「よっはっ」
兄さんが祐斗に向かって、木刀を振り回す。僕は座って見学中だ。
「おりゃ! おりゃぁぁ!」
兄さんは今日、祐斗と剣の修行をしている。
兄さんまるでダメだな。腕の振りは大きいし、体もそれに従い不安定。典型的に腕だけで振っている。はっきり言ってスキだらけだ。剣を扱う才能はほとんどないんじゃないかな?
それに対して祐斗は、軽やかに兄さんの攻撃をいなしている。さすがは騎士と言ったところだろう。祐斗は才能もあるし、それなりに修練しているみたいだから当たり前と言えば当たり前だが。
「そうじゃないよ。剣の動きだけじゃなくて、視野を広げて相手の周囲まで見るんだ」
祐斗はそう言うが、兄さんにはそう簡単にできるものではないだろう。
「それに、イッセーくんは僕が強いと思っているみたいだけど、ナギの方が剣の腕は上だ。悪魔や騎士の力を使って戦ったことはないけど、純粋に剣の腕だけならナギの方が断然強い」
そう言って、祐斗は兄さんの木刀をはたき落した。
「いやいや、俺からしたら十分木場も強いって。にしても、剣の動きだけじゃなくて、視野を広げて相手の周囲まで見るってのは難しいぜ。剣だけで精一杯だ」
落ちた木刀を拾いながら兄さんが言う。
「ようは慣れだよ。初めは剣だけ見て徐々に、視野を広げていけばいい」
僕が兄さんにアドバイスする。
「そうは言ってもな・・・・・・・・。渚はどうやっているんだ?」
「僕は参考にならないよ。僕は視力がいいからさ。空気中の塵くらいなら普通に見れるんだ。それを応用しているだけだからね」
兄さんの質問に答える。兄さんは微妙な表情を浮かべていた。
「俺の弟は規格外だな・・・・・・・・」
呆れながら兄さんが言うが、兄さんの性欲だって規格外だろう。正直、クラスの女子のいる中でエロい話ができるのはおかしいと思うぞ? まあ、元浜君と松田君もおかしいのだろうけど。
「そうだ、ナギ。今回は悪魔と駒の力を使って、戦ってみないか?」
「え? まあいいけど・・・・・・・僕も魔力で強化とかするからな? それでもいいなら構わないよ」
突然の祐斗からの誘いに、条件付きで応じる。
「うーん・・・・・・・・。そのままで戦ってもらいたいけど、まあ今回はいいよ。その変わり、今度やる時は魔力強化なしだからね」
いやいや、さすがに強化なしだったら、悪魔の力で押し切られるって・・・・・・。人間と悪魔じゃスペックが違うんだから。
「はいはい。わかりましたよ。場所はどうする? ここじゃあ、ちょっと狭くないか?」
苦笑いしながら、祐斗と次の勝負の約束をする。
「そうだね、少し移動しようか。イッセーくん参考になるかわからないけど、ちゃんと見てるんだよ?」
祐斗はそう言って、移動をし始めた。僕と兄さんも祐斗に続いた。
Side out
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Side 一誠
さっきの場所より開けたところに移動して、渚と木場が向かい合っている。
「どっちが勝つのかしらね?」
「・・・・・・・・・・悩みます。早さでは祐斗先輩ですが、技量ではナギ先輩の方が上みたいですから」
「あらあら」
どこから聞きつけたのかは知らないが、他の三人も渚と祐斗の勝負を見に来ていた。悪魔や駒の力なしでは、渚の方が強いらしいから興味があるのだろう。正直、俺もどっちが勝つのか興味がある。剣道の大会の応援なんかで、何回か渚の試合を見たことはあるが、ほとんど一撃。相手の攻撃にカウンターを合わせての一本で終わっているので、試合らしい試合を見たことがないのだ。
「ナギ! 準備はいいかい?」
木場の野郎は渚と戦えるのが楽しみなのか、声が上ずっている。
「まあ、構わないけど・・・・・・・・・。なんでリアス先輩や朱乃先輩たちまでいるの?」
渚はこちらを見て、微妙な表情をしている。
「前に、僕がナギと戦った時のことを話たからだよ」
「ああ、そうなんだ・・・・・・・・」
何やら諦めた表情をしている。見られるのはあまり好きじゃないって言っていたので、そのせいだろう。
「じゃあ、この石が地面に落ちたら試合開始だからね」
「わかった」
木場はそこら辺に落ちていた石を拾って、それを放り投げる。
自然と空気が緊張していく。そして、木場の投げた石が放物線を描いて地面に落ちてきた。
「ハアァ!」
そう思った瞬間に木場は俺の視界から消えて、渚に木刀を振るっていた。いつの間に、移動したんだ!?
「ンッ!」
渚はそれを木刀で防いだ。カンッ! と木刀同士がぶつかり合う音が鳴り響く。
「ハハ、やっと僕の剣を受け止めてくれたね」
「さすがに速い。体捌きだけじゃ避けきれないみたいだ」
・・・・・・・・渚は今の見えたのか? 俺は何も見えなかったぞ?
「それじゃあ、どんどん行くよ!」
そう言って、再び視界から木場が消える。
渚はそれを木刀で的確に防いでいった。渚は上、横、下と木刀を動かして防いでいる。俺は木刀同士が打ち合う音で木場が攻撃しているのだとかろうじてわかった。
渚はその場からほとんど動かないので見ることが、木場はかなりのスピードで動いているので視認ができない。この速度に反応して、防御を行える渚に俺は驚きを隠せなかった。
「これは・・・・・・すごいわね・・・・・・」
「・・・・・・・・・すごいです」
「うふふ、二人ともさすがですわ」
「あうぅ、見えないです」
見に来た三人も、驚いているようだ。
「ナギはあの速度についていけるのね。それに次の攻撃を予測しているみたいね。祐斗が攻めづらそうだわ。」
部長も驚嘆の声を上げている。・・・・・・・・みなさん木場の動きが見えているようだ。俺とアーシアだけ見えていないらしい。修行すれば見えるようになるのだろうか?
「部長、どっちが有利なんですか?」
俺は部長に聞いてみた。
「このまま、状況が変わらないのなら有利になるのは―――ナギでしょうね。祐斗はフェイントも入れて、何とか防御を崩そうとしているけど、ナギはそれも見切っているみたいだし」
「そうですね。ナギくんはほとんど動いていませんが、祐斗くんはかなり動いてます。必然的に、ナギくんの方が体力的に余裕がありますわ」
「なるほど」
うんうんとうなずく。状況は相変わらず木場が攻撃し、渚が防ぐといったものだ。
「さすが、ナギだね・・・・・・・。攻撃が一向に当たらない。それに防ぐ動作が連動しているといえばいいのかな? 隙が見当たらないよ」
「いやいや、お前のその速さも大したもんだよ。・・・・・・それじゃあ、第二ラウンドと行きますか!」
「ああ!」
一旦、木場が渚から離れた位置に移動する。そうして、二人が会話をした後空気が変わった。
「ナギくん、何かするつもりみたいですわね」
「ええ、そうみたいね」
お姉さま方がそう言う。俺は何とか見ようと目を凝らした。
「セイィ!」
木場が渚に攻撃を仕掛ける。
「ヤアァ!」
しかし今度は、防ぐのではなく迎え撃つように前に出て、渚が木刀を振るう。今までと違う点は渚が大幅に動いたこと。
「クッ!」
今回は木刀同士が打ち合う音が聞こえなかった。木場は攻撃しなかったらしい。
「・・・・・・・まさか、カウンターを合わせられるとは思わなかったな」
「目が慣れてきたんだよ」
どうやら、渚はあの速度にカウンターを合わせたらしい。それが木場の攻撃を中断させたようだ。
「さあ、次は当てるよ・・・・・・・確実にね」
「それは・・・・・・・・どうかな?」
二人が構える。先に動いたのはやはり木場だった。
「ハァァァァ!!」
俺の視界から木場が消える。
「―――そこっ!」
―ガキン!
木刀同士がぶつかり合う音が聞こえた。見ると木場の手から木刀が消失している。どうやら、渚の攻撃が木場の木刀を弾き飛ばしたらしい。
「僕の・・・・・・・勝ちだ」
「はぁ・・・・・・・また負けか・・・・・・・・」
木場は渚に木刀を突き付けられていた。木場は悔しそうに両手を上にあげて降参の意を示している。
大半は見えなかったがすごい戦いだったのは俺にもわかった。俺もここまで強くなれるだろうか?
「・・・・・・・・すごかったです」
「ええ、そうね」
俺以外の人も、感嘆の声を上げていた。
「あれ? ところで僕の木刀は?」
「ん? そう言えば、弾き飛ばしたけど、どこに行ったんだろう?」
二人がキョロキョロと周囲を見渡している。そう言えば木場の木刀が見当たらない。どこに行った?
みんなが木場の木刀を探すように、きょろきょろと辺りを見回す。
「あっ! 兄さん、危ない!」
渚の声に辺りを見渡すが何もない。なんだ? からかったの――――
「ゴォッッ!!」
突然、頭に激痛がはしる。頭を抱えてうずくまると、俺のそばに木刀が転がっていた。もしかしなくても、渚が弾き飛ばした木刀が俺に直撃したらしい。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「ク・・・・・クック」
「大丈夫ですか! イッセーさん!」
アーシア以外は顔を伏せて、肩を震わせている。どうやら笑うのをこらえているようだった。訂正、渚は堪えきれずに、震えているわ。
アーシアだけは、俺を心配してくれている。ほかのみんなも笑わないで欲しい。
ちくしょう! なんだこの木刀は! 俺に恨みでもあるのか! あれか!? イケメン死ね! って思っているのがいけないのか!?
思わず転がっている木刀を睨みつけた。だが、木刀がしゃべるわけがない。・・・・・・少し虚しくなった。
「痛くないですか?」
アーシアが俺の頭に手を当てて、治療してくれた。
「ああ。アーシアのおかげでもう大丈夫だ」
「そうですか、ならよかったです!」
俺に笑顔を向けてくる。これだけで痛みなんて忘れられそうです! アーシアちゃん、マジ天使!
「さあ、ナギと祐斗の試合も終わったし、修行再開よ!」
部長が手を叩きながら言った。みんなそれぞれの修行をしに移動を始める。
「行くよ、兄さん」
「がんばろうね、イッセーくん」
「まかせとけ!」
俺は元気に返事した。
その日の夜、俺の体はボロボロだったのは言うまでもない。
Side out
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