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カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
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狂気のオタク文化

 クトゥルフ神話。

 これは、神話と呼ばれてはいるものの、厳密的な意味での神話ではない。ハワード・フィリップス・ラヴクラフトという、アメリカの小説家の書いた創作話。

 それを『原典』として、彼の死後友人であったオーガスト・ダーレスという人物と有志によって広められたのが、『クトゥルフ神話群』である。現在では、TRPGやアニメなどでも有名になっているので、神話に興味のない一般的な日本人でも、名前くらいは聞いたことのある者は多々いるのではないだろうか?

 この作者の作品は、全てとまではいかないものの、その多くが『宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)』を題材にして描かれている。

 『宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)』。この概念は、無機質で広漠な宇宙においては人類の価値観や希望には何の価値もなく、ただ意志疎通も理解も拒まれる絶対的他者の恐怖に晒されているのだという不安と孤独感をホラー小説に取り込んだもので、吸血鬼や幽霊など人間の情念に基づいた恐怖を排除する傾向、宇宙空間や他次元などの現代的な外世界を取り上げるなどの要素がある。

 太古に地球を支配していたが現在は地上から姿を消している、強大な力を持つ恐るべき異形のものども―――作品内では、旧支配者と呼ばれる―――が現代に蘇るというモチーフを主体とする。中でも、旧支配者の一柱であり、彼らの司祭役を務めているともされる、太平洋の底で眠っているという、タコやイカに似た頭部を持つ軟体動物を巨人にしたようなクトゥルフは有名である。

 人類が抗うことも出来ずに蹂躙される様が、鮮明に描写された作品群なのだ。

 さて、今回の敵である、ナイアーラトテップは、クトゥルフ神話の中でも、トリックスター的な役割を与えられた、最上位の邪神の一柱である。

 顔がない故に千もの異なる顕現を持つとされ、這い寄る混沌(Crawling Chaos)無貌の神(The Faceless God)闇に棲むもの(Dweller in Darkness)など数々の異名を持つ。

 『この宇宙の中心、正常な物理法則が通用しない混沌とした世界には、絶対的な力を持ったアザトース(Azatoth)が存在し、その従者の吹き鳴らすフルートに合わせて絶えず不定形な巨体を蠢かしているとされる。アザトースはとてつもなく巨大で絶対の力をもった存在だが、盲目で白痴なので、自らの分身として三つのものを生んだ。闇からシュブ=ニグラス、無名の霧からヨグ=ソトースそして使者たる這いよる混沌ナイアーラトテップである。ナイアーラトテップは、自らの主人であり創造主であるアザトースら異形の神々に仕え、知性をもたない主人の代行者としてその意思を具現化するべくあらゆる時空に出没する。』

 この文からも分かるとおり、邪神群の中でも最強最高の力を持つアザトース(Azatoth)から生まれたナイアーラトテップは、旧神や旧支配者を含めても最高レベルの力を有している。天敵であり唯一恐れるものは火の精と位置づけられる旧支配者クトゥグアのみ。また、他に対立するのもノーデンスくらいという最強ぶりである。

 しかし、それだけの力を与えられておきながら、この神格は、その力を直接振るうことは殆どない。

 H・P・ラヴクラフトの短編『未知なるカダスを夢に求めて』では、簡単にひねり潰せるはずのランドルフ・カーターを騙して自滅に追いやろうとしたし、エジプトから来た高貴なファラオのごとき預言者、核兵器の研究を推進する物理学者、星の知恵派教団の神父(ナイ神父)、魔女を操る暗黒の男など、様々な姿で人間達の前に現れては、人の世に混乱と死をもたらす前触れとなるのだ。


☆☆☆


「ナイアーラトテップ・・・?どっかで聞いた響きだな・・・。」

 護堂は、つい最近どこかで聞いたその名前に首を捻った。クシャミが出そうで出ない時のような、喉の奥に小骨が刺さったときのような不快感が彼を襲う。ここまで出かかっているのに、あと一歩の所で出てこない。

「別名も沢山あるわ。ナイアーラソテップ、ナイアルラトホテップ、ニャルラトホテプ、ニャルラトテップ何かが有名ね。アメリカの小説家の書いた小説が元になった、シェアード・ワールドから生まれた作品群。それに登場する邪神の一柱よ。」

 その言葉に、護堂はモヤモヤが晴れた気分になった。両手をパンと打ち、笑顔でエリカ達に言う。

「成程、高木たちが面白いとか言って進めてきたアニメの元ネタか!確か、『這いよれ!ニャル子さん』とかいうラブコメだったな!」

『「!?」』

 ところが、護堂の爆弾発言に二人は驚いてしまう。

「ちょ、ちょっと待って!ラブコメ?ラブコメって言ったかしら?え、正気?あのグチャグチャドロドロで人がゴミのように踏み潰される狂気の小説を、一体どうやったらラブコメに出来るというの・・・!?もしかして、既にSAN値がゼロになってるとか・・・!?」

『・・・流石、世界に轟く日本のオタク文化。『擬人化』なるものが流行っているとは聞いていたが、動物や茶器だけでは飽き足らず邪神にまで手を出していたのか・・・!【魔界(日本)】・・・もう一度行ってみる必要があるな・・・!!』

「ん?」

 勿論、神話にもオタク文化にも縁のない護堂には、彼女たちが何に驚いているのかは分からず。

 この混沌とした時間は、もう少しだけ続くのであった。
 
 

 
後書き
一旦ここで切り。
話を書いていると、どこで切っていいのか分からなくなりますよね。
あまり長くしすぎると読む気が削がれるし。 
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