八条学園怪異譚
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第二十七話 教会の赤マントその十五
名前はよかった、だがそのチームの状況は。
「巨人ではこうだ、ああだって言ってばかりで」
「それで元の選手達が反発して」
「チームは崩壊なのね」
「新しい風を吹き込むことはいいことだ」
このことは日下部もよいとする。
「しかしだ」
「それでもですね」
「それで亀裂が生じたら」
「その組織は崩壊する」
これは野球チームだけのことではない。
「どの組織でもだ」
「ああ、そういえばお姑さんとお嫁さんの折り合いがよくないとかですね」
愛実はよく巷であることを話した。
「それですよね」
「簡単に言えばな」
日下部もその例えを否定しない。
「それだ」
「そうですよね」
「新しいメンバーとそれまでのメンバーの折り合いは人間の常の問題だ」
「妖怪でもあるんだよね。私なんか結構新しい妖怪だから」
赤マントも言う。
「しかも昔の日本の感じじゃないからね」
「だから最初はですか」
「それまでの皆と折り合いが悪かったんですか?」
「この学園は違うけれどね」
八条学園は妖怪達の間でも寛容な場所なので赤マントにしても問題なく入ることが出来た、だがそれでもだというのだ。
「妖怪にも年代があるんだ」
「明治生まれとか昭和生まれとかで」
「それで」
「うん、花子さんや口裂け女さんは昭和生まれで私と同じだよ」
所謂昭和組だというのだ。
「昭和組もあれば江戸時代組、江戸時代組が一番多いかな」
「あっ、江戸時代に生まれた人が一番多いんですか」
「そうだったんですね」
「室町時代とか戦国時代も多いね」
この時代もだというのだ。
「鬼さんや天狗さん達は平安の頃だよ」
「大体幽霊や妖怪、今の私達の原型は平安時代からだ」
その頃から形成されていった、日下部はこう二人に話す。
「そして江戸時代に完成されてきた」
「江戸時代は長くて平和で文化が栄えたからね」
「その頃に形成されたのだ」
「妖怪も文化の中で育つから生まれた時代の影響を受けるんだ」
その外見に数もだというのだ。
「そういうことでね」
「じゃあ今の時代だと?」
「平成の感じになるのね」
「模型さん達はラップ踊るしね」
赤マントは理科室の彼等のことを話した。
「妖怪も時代によって本当に変わるよ」
「私が海軍の軍服である様にだ」
日下部は海軍の夏服のままだ、白い詰襟は相変わらず見事なまでに端整であり皺も埃も何一つとしてない。
「妖怪や幽霊も時代によって変わる」
「そのそれぞれの性格もあるしね」
「この辺り人間と同じよね」
「そうみたいね」
二人も日下部達のことを聞いてわかった、そうした話をしてだった。
二人はあらためて赤マントに尋ねた、その尋ねることとは。
「あと泉ですけれど」
「それは何処ですか?」
「ああ、それならね」
赤マントは二人にすぐに応えた。
「祈ってよ」
「祈るってキリストにですか?」
「そうすればいいんですか」
「十二時にね、夜のね」
またしても十二時だ、やはりこの時間は端境期である様だ。
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