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第三章
「酒で入院したんだからな」
「馬鹿、酒なんか見舞いの品に持って行くかよ」
俺もそのジョークに笑って返した。
「お菓子か果物持って行くさ」
「それがいいな」
こうした話をしてだった、俺は自分で言った通りその日のうちにそいつの見舞いに行った、持って行ったのは果物だった。
病院の受付で入院している部屋を聞いてそこに入った、見れば六人用の白い病室の中の窓際の扉から見て右手にだった。
そいつは寝ていた、ベッドの中から窓の外を見ていた。
俺はそいつのところに来てだ、呆れた顔を作って言ってやった。
「何やってんだよ」
「あっ、来てくれたのかよ」
「話は聞いたぜ」
口の端をわざと歪めてこうも言ってやった。
「酒だってな」
「ああ、そうだよ」
「ウォッカな、そんなの一気に二本も飲んだらな」
「酒の強さには自信があったんだけれどな」
「馬鹿、ウォッカだぞ」
俺は病室、そいつのベッドの傍にあった組立のパイプ椅子を持って来てそいつの枕元に座った、そのうえで言葉を続けた。
「一気に飲んだらやばいに決まってるだろ」
「そうなんだな」
「そうだよ、ロシア人じゃないんだからな」
「日本人には無理か」
「ウォッカは特別だぞ」
寒いロシアの酒だ、そんな酒が地域差があるにしてもロシアよりずっと暖かい場所に住んでいる日本人にそうそう合う筈もない。
だからだ、俺はツレに言った。
「そんなの一気に二本も空けるな」
「お医者さんにも言われたよ」
「だろうな、それで飲んだ理由はな」
「ああ、そっちも聞いてるよな」
「可愛い娘に煽られてだったな」
「それで飲んじまったよ」
聞いた通りだった、こいつはそれで飲んだのだった。
「一気にな」
「それで一気にきたんだな」
「急に意識が遠くなって気付いたら病院だったよ」
今いるここだったというのだ。
「こんな経験ははじめてだよ」
「だろうな、それでだよ」
ここで持っていた果物の山を枕元のボンネットを置く場所にぼん、と置いた。それで今度はこう言ってやった。
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