ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第2話
Side 一誠
「おりゃぁぁあぁぁぁ!」
俺は今、気合を込めて自転車のペダルをこいでいる。
目的地の前に辿り着くと、自転車の後ろに座っていたアーシアがポストにチラシを投函した。
「完了です」
「オッケー」
アーシアが後ろに乗ったのを確認して、俺は再び自転車をこぎ始めた。
今行っているのは、チラシ配りだ。
「・・・・・・イッセーさん、本当によろしいんですか? 私のチラシ配りをお手伝いしてくださるなんて・・・・・・」
「ああ、問題ねーよ」
そう、俺はアーシアがやっているチラシ配りのお手伝いをしているのだ。にけつで自転車に乗っている。
「だって、アーシアは自転車乗れないんだろう? なら、代わりの運転手が必要さ」
「うぅ、すみません。自転車とは縁がなかったものですから・・・・・。でも、歩いてなら―――」
「そんなの余計させられないよ。俺は、アーシアのことが心配なんだ」
見知らぬ土地をアーシア一人で走りまわすなんて俺にはできない。それにアーシアはお人よしで世間知らずだ。どんなことが彼女を襲うかわからない。・・・・・・・まあ、迷子になりそうな気もするっていうのもあるけど。
「ほら、アーシア。あれが神社だ。オレら悪魔は入っちゃダメだぞ」
通り道にあった神社を紹介する。
「はい。悪魔は精霊が集まるところや土地の神様に関係するところに行ってはダメなんですよね」
一神教の文化で育ったアーシアには、よくわからないところがあるみたいだ。
こんな感じで、チラシ配りをしながら、俺の暮らす町の様子をアーシアに教えていた。
「あ! あそこ。今は閉まっているけど、おいしいパン屋さんなんだ。今度一緒に買いに行こうか?」
「はい! 日本のパンは甘くて大好きです!」
何気ない会話がとても楽しかった。夜のデートをしている気分。
「イッセーさんは『ローマの休日』を観たことがありますか?」
ふいにアーシアが聞いてくる。確か昔の映画だったよな?
「いや、ごめん。観たことないな。昔の映画だろ、それ?」
「そうですか・・・・・・・・・」
少し残念そうな声を出すアーシア。
「でも、その映画がどうかしたのか?」
「・・・・・・・ずっと、憧れだったんです。こうやって・・・・・・・・。あれはバイクでしたけど。それでも私・・・・・・・・。うふふ」
よくわからないが、とてもうれしそうな笑い声だ。腰に回される腕もギュッとしてきている。
アーシアがうれしいなら、それで十分だ。それにしても、今夜も夜風が気持ちいい。
Side out
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時間を少し遡り―――――
Side 渚
「ナギくん、今日はイッセーくんについて行かないのですか?」
今日は、部室でゆっくりとすごしていると、朱乃先輩が聞いてきた
「兄さんはアーシアさんの手伝いですよ? あの二人の仲に割って入れと? 僕には無理です」
「あらあら、そうなんですか?」
朱乃先輩がお茶を入れてくれる。そして、僕の隣に座った。
「ありがとうございます、朱乃先輩。あの二人、すぐに二人だけの世界を作るんですよ。割って入る気にもなりません」
「あらあら、それは大変ですね。ナギくんは蚊帳の外ですか?」
「ええ。まあ、二人の仲を応援するのは吝かではないですけど、常時二人の世界にいられるのは困ります」
肩をすくめながら、朱乃先輩に答える。
「ははは、ナギも大変だね」
「・・・・・・・不憫」
祐斗と小猫ちゃんも会話に混ざってきた。
「でしょ? ホントに大変なんだ。リアス先輩もそう思いますよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ん? 聞こえなかったのかな?
「リアス先輩?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・」
ボーッとしたまま、あらぬ方向を見て、深いため息をついている。朱乃先輩たちを見るがみんなも、首をかしげていた。
「リアス先輩ってば!」
今回は大きい声で呼んでみる。
「―っ! ご、ごめんなさい。少しボーッとしていたわ」
「どうかしたんですか? 最近なんか変ですよ?」
「なんでもないわ。心配しなくていいわよ」
「なら・・・・・・・いいんですが・・・・・・・・・・・」
なんだか、腑に落ちないが納得しておく。追及してもはぐらかされるだけだろう。
「ただ今戻りました!」
チラシ配りを終えた、兄さんとアーシアさんが帰ってきた。
「あらあら、お疲れ様。今お茶を入れますね」
朱乃先輩が席から立ち、お茶を入れに行く。
「やあ、夜のデートはどうだった?」
爽やかな笑顔を浮かべ、祐斗が兄さんにそう言う。
「最高に決まってんだろ」
親指を立てて、祐斗に突き出す。機嫌がいいのか睨んだりはしなかった。
「・・・・・・・・深夜の不純異性交遊」
静かな声で厳しいことを小猫ちゃんが言った。兄さんとアーシアさんがリアス先輩の前に移動する。
「部長。ただいま帰還しました」
「ご苦労様、イッセー、アーシア」
今回はボーッとしていなかったようで、すぐに返事をしていた。
「さて、今夜からアーシアにも契約を取ってきてもらいましょうか」
「え?」
きょとんとしているアーシアさんに、兄さんが言った。
「アーシア、今日から悪魔として本格的にデビューだ! 魔法陣から依頼人のもとへジャンプして契約してくるんだよ!」
「わ、私がですか?」
狼狽して自分を指すアーシアさん。
「そうよ。チラシ配りは今夜で終了。いつまでもやらせておくと、二人のデートの方が席に進んでしまいそうだもの」
さすが、リアス先輩はわかっているようだ。
「とりあえず、イッセーの前例があるから朱乃、調べてみて」
「はい、部長」
兄さんは魔力が微塵もなくて、魔法陣使えないからな。確かに心配だろう。
朱乃先輩はアーシアの額に手を当てて魔力の有無を感じ取っているようだ。
「部長、大丈夫ですわ。問題もありません。それどころか、私たちの中ではナギくん、部長、私に次ぐ魔力の持ち主かもしれません。潜在キャパシティが豊富ですわ」
よかった。兄さんみたいなことはないらしい。朱乃先輩の報告にリアス先輩は微笑んだ。いや、兄さんが規格外なんだろう。普通は誰もが転移できるのだ。
「それは吉報ね。『僧侶』としての器が存分に活かせるわ」
どうやら、僧侶は魔力関係の特性があるようだ。それなら、魔力が多い方がいいだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ところで、兄さんなんで泣いてるの?
「・・・・・・イッセー、泣いてるの?」
リアス先輩が俺の代わりに聞いてくれた。
「部長、ダメです。ダメなんです!」
兄さんは首を横に振りながら、涙を流している。何があった?
「部長! アーシア一人じゃ不安ですぅ!」
兄さんの話を詳しく聞いていくと、どうやらいかがわしい依頼をされたらアーシア一人じゃ心配だということらしい。そういう依頼はグレモリーにはこないようになっているらしいが、兄さんはそれでも心配のようだ。
「わかったわ。初めのうちはアーシアの助手にあなたをつけるから。それでいいかしら?」
「あ、ありがとうございます! アーシア! 変態相手は俺に任せてくれ! アーシアは普通に何事もなく契約を取ればいいんだからな!」
「は、はい」
アーシアの手を兄さんが取る。おいおい、このままじゃ、また二人の世界に入っていくぞ?
「というわけで、依頼が入ったら、アーシアはイッセーを連れて魔法陣でジャンプしてね」
「はい、わかりました。部長さん」
そんな確認をしているそばから、部室の床に描かれている魔法陣が輝きだした。朱乃先輩がそれをチェックしている。
「あらあら、早速アーシアちゃんがこなせそうな依頼の方が私たちを召喚しようとしていますわ」
「それは都合がいいわ。依頼人のもとへ飛ぶのに必要な魔力はアーシアが捻出することで、イッセーの分を補えばいいでしょうから」
朱乃先輩の報告を受けて、リアス先輩がそう言う。
「行くぞ、アーシア!」
「はい、イッセーさん!」
おめでとう。兄さん、これが魔方陣での初転移だ。
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深夜、兄さんたちと共に帰宅する。アーシアさんは無事に契約をできたようだ。
「すみません、先にシャワーいただきますね」
そう言ってアーシアさんは、お風呂場へ向かっていった。
僕と兄さんもそれぞれの部屋に戻る。
僕は自分のベットへと寝転がる。
「ふう・・・・・・・・・・」
息を吐きながら、脱力する。
「なにかあったのかな?」
リアス先輩の思いつめた表情が思い出される。だいぶ薄れた原作知識を必死に思い出そうとするが、成果はなかった。
「思い出せないか・・・・・・・・」
ぽつりとつぶやくと、突然僕の部屋の床に光が走り始めた。
「は?」
何事かと思って、見てみると光は次第に見覚えのある形になっていく。
「グレモリーの魔法陣? なんで、僕の部屋に?」
いっそう魔法陣の輝きが、強くなると魔法陣から人影が現れた。
女性のシルエットに紅の髪。
「リアス先輩・・・・・・・・?」
魔法陣から出てきたのは、まぎれもなくリアス・グレモリー先輩だった。しかし、なぜ? 兄さんの部屋ならわかるのだが、どうして僕の部屋に?
何やら、思いつめた表情を浮かべているリアス先輩。部室にいた時から変わっていない。
「どうしたんですか? なにか・・・・・・・ありました?」
僕はリアス先輩に聞く。しかしリアス先輩は答えることなく、僕の姿を確認するとズンズンと詰め寄ってくる。
「ナギ、私を抱きなさい」
・・・・・・・・・・what? 今、リアス先輩はなんて言った? 怪訝そうな表情を浮かべているであろう僕にリアス先輩はダメ押しの一言を言った。“抱きなさい”って言ったよね? 抱きしめればいいのか?
「私の処女をもらってちょうだい。至急頼むわ」
この一言で、ほんの少し原作知識が蘇った。確かに、こんなシーンがあった気がする。そして、自分の考えが見当はずれだったことを思い知った。
(って、あれ? これ言われたのって兄さんじゃなかったけ?)
僕の疑問に答えてくれる人は誰もいなかった。
Side out
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