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なのは一途のはずがどうしてこうなった?

作者:葛根
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第十七章 ホテル、友人、女難



「お話しって何?」
「ああ、フェイト。大切な話だ」

フェイト・テスタロッサ・ハラオウンには思い当たる事がなかった。
まさか、なのはと別れて私と付き合うという申し出だろうか。

「お前、エリオとキャロにちゃんと性教育してるか?」
「は?」

思わぬ言葉が聞こえた。

「だから、あの二人にちゃんと性教育してるかって聞いている」

珍しく怒ってる。
でも、嬉しいかも。
なのは達に怒った事なんてほんの数回だ。
その貴重な一回を私だけに向けてくれている。

「えーと、正直に言うね? 私、そういう知識あまりないの。前のアレだって、何ていうか、本能のままに動いただけだし。でもね、アレから調べてちゃんと学んだよ?」

それを聞いたケイタは怒るのをやめて、逆に悲しんだ。
つまり、そういう事だ。
私の親は既にいない。
そして、幼い頃は母親の命でジュエルシードを集めるだけの機械だった。
その後、なのは達と戦って、捕まって、管理局に入って大切な人に出会ったのだ。
だから、普通の家のような教育は殆ど受けていない。
それを知っているケイタは悲しんだ。

「怒ってごめん。そういや、そうだったな。うん、マジでごめん」
「別にいいよ。仕方のないことだもん」

その言葉に肩を落とすケイタはどこかションボリしていた。
これは、確かバルディッシュの言っていた、弱っている男は押し倒して慰めるべしの状況では?
二人きり、自室。
弱っている男。
よし。

「ね、しよっか」
「は? 何を――」

唇を塞いで押し倒した。



学んだ成果を惜しみなく発揮されるのはどうかと思う。
口で、胸で。
馬乗りの仕方も、締め付け具合も。
どこでどのように学んだか気になるところだが。
さて、慰められたのはどちらだろうか。



罪悪感。
それは大切な彼女を裏切ったことよりも、長年の友の過去を掘り返してしまった事にある。
今回に限りこの事はなのはには黙っておこう。
罪の対価は払った。
と言うか、強奪されたに近いが。

「まあ、子供二人の性教育は今後ちゃんとするように。フェイトは二人の保護責任者なんだから」
「わかったよ。実体験を元に……。じゃなくて、ちゃんとした教材買って教えるから、睨まないで」

どこか抜けているフェイトだった。



「久しぶりだなユーノ」
「ああ、ケイタ。3日ぶりだね……。それって久しぶりじゃないよね。頻繁に会っているよね」

ミウラ・ケイタはホテルアグスタ警備の為、シグナム、ヴィータらと前乗して重要人物の警護と相成った。
女性が男装してスーツ姿に身を固めているような錯覚に囚われそうだが、ユーノ・スクライアはミッドチルダ考古学会の優秀な学士として名が広く知られている考古学者であり、同時に時空管理局の無限書庫司書長だ。
今回のオークション品物の紹介と鑑定を任されている重要人物でもある。
機動六課の狙いとして、要人警護で不敗の名を持つミウラ・ケイタをつける事が最善の策だと判断したのが八神はやてであった。
既知の人物同士、仕事のやりやすさもあるだろうという思惑もある。
それに対してユーノ・スクライアは正直、ありがた迷惑であった。
幼き頃には高町なのは達と共に戦場を駆け抜けた事もあって自分の身を守る位は出来るのだ。
さらに言えば、ミウラ・ケイタと一泊しなければいけない。時間にすると1日半を共に行動することを強要されており、その間に自分の姿が同人誌の糧になってしまうという犠牲が気に入らなかった。
表面上、ユーノ・スクライアは友人を冷たくあしらっているが、その実、大の親友としてもミウラ・ケイタを想っている。
素の自分をぶつけても良い盟友だ。
そして、秘密の共有がある。

「ケイタって裏映像好きだね。いいの? 彼女持ちの癖にこんなもの持ってて」
「男の嗜みだ」

ユーノ・スクライアの部屋として割り振られた僕の部屋で男同士、軽く映像を流し見ていた。
妙な気分になるけど、映像の中身がそういうものだから仕方がない。

「ユーノって相変わらず赤らめた顔が可愛くて女っぽいよな」
「はぁ。こう見えても男なんだけどね」

もう慣れた。
慣れていいものかと疑問に思うのだが、生まれ持った女顔は仕方のないものだ。

「僕は先にシャワー浴びるけどケイタはどうするの?」
「俺はシグナム達と打ち合わせがある。明日が本番だが今日に何かあるかもしれないから基本的に交代で警護になるな」

ご苦労なことで。
まあ、いいか。
プライベート空間まで警護されると思ったけどそうじゃないみたいだ。良かった。



いつまで経っても慣れない事というものがある。
ミウラ・ケイタにとってユーノ・スクライアは貴重な男友達だが、同時にその面構えに未だにドキリとさせられる相手でもあった。
同人誌のネタには最高の素材であるのだが、どうも、慣れない。
男色の毛などないが、ユーノ・スクライアを題材にした男の娘作品に群がる同人ファンの気持は分からなくもなかったのだ。

「年を重ねてもなお可愛い。恐るべし、スクライア一族……」

頭を仕事モードに切り替えてシグナム達の元へ足を向けた。



後悔と懺悔
友情と護衛
配点:(不慣れ)
 
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