剣客
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第二章
「陛下、お待たせしました」
「只今参りました」
「よく来てくれた」
王はその彼等に。先程とは全く違う微笑みを見せてだ。
そのうえでだ。彼等に問うたのである。
「何もなかったか」
「はい、何もありませんでした」
「今はこともなしです」
「我等もこうしてここに馳せ参じることができました」
「それならよい」
見れば今いるべき者達は皆いる。その彼等を見てだ。
そうしてだ。王は言うのだった。
「では今からだ」
「何をしましょうか」
「これより」
「宴だ。共に楽しもう」
こう彼等に言ったのである。
「そうするとしよう」
「はい、それでは今より」
「御供させてもらいます」
こうしてだった。彼等はだ。王と共にだ。
美酒に美食、音楽を楽しむ。そのうえでだ。
王は美酒に満たされた杯を手にだ。傍に控え共に楽しむ彼等に言ったのである。
「私は幸せに思う」
「それは何故ですか」
「そう思われる理由は」
「そなた達がいるからだ」
だからだというのだ。幸せだとだ。
その紅い葡萄の美酒を飲みだ。そしてまた言うのだった。
「私に愛情と忠義を心から向けてくれる者達がいてだ」
「それは我等もです」
「我等も同じです」
自分達もそうだとだ。彼等も王に返すのだった。
「それはです」
「陛下は我等を見出しお傍に置いて下さっています」
「このことがどれだけ有り難いか」
「言葉では言い尽くせません」
こうだ。心から言うのだった。
「ですから我等はです」
「陛下の為ならばです」
「この命喜んで捧げましょう」
「そうさせて頂きます」
「その言葉、心から感謝する」
王は彼等のその言葉にだ。心から微笑みだ。
そうしてだ。こう返したのである。
そのうえでこの日は彼等と共に宴を楽しむ。これが王の日常だった。
だがこうした王をだ。世の者達はだ。
何かと陰口を叩き中傷する。その陰口や中傷がどういったものかというと。
「全く。碌でもない者達を傍に置かれ」
「今日も贅沢三昧か」
「男らしいことは何も為されずに」
「書や音楽にばかり耽溺しておられる」
「そして男相手の宴ばかりだ」
「まさかあの陛下は」
王はだ。どうかというのだ。
「同性愛者ではないのか」
「そうだろうな。嘆かわしいことだ」
「神に反することを嗜まれる」
「どうしようもない方だ」
キリスト教においては同性愛は殺人と並ぶタブーだ。だからこそだ。
彼等はそれを嗜んでいると思われる王についてだ。こう陰口を言い中傷を行ったのだ。
だがその彼等にだ。王の側近である若者達はだ。
目を怒らせてだ。こう言うのだった。
「その言葉許さん!」
「発言を取り消せ!」
「さもないと容赦せぬぞ!」
こう言ってだ。そのうえでだった。
彼等は手袋を投げてだ。宣言するのが常だった。
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