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笑顔が見たくて

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第三章

 お家に着くとです。もう起きていた麗にです。お母さんが言いました。
「それじゃあね」
「うん、あれね」
「そう。あれを持って来て」
 こう麗に言うのです。
「そうして。今ね」
「それじゃあ」
 麗はにこりと笑ってです。そうしてでした。
 自分のお部屋に入ってそうしてでした。自分が描いた絵を持って来たのです。
 そしてそれをお父さんに見せてです。笑顔で言うのでした。
「これ、お父さんに」
「お父さんにくれるのかい?」
「そう。ずっと描いてたの」
 そうだとです。お父さんにその絵を差し出して言うのです。
 見ればその絵にはです。真ん中に麗がいて。左右にそれぞれお父さんとお母さんがいます。
 三人共にこりと笑っています。クレヨンで描かれたその子供の絵を見てです。 
 お父さんはです。ここでなのでした。笑顔になってです。
 麗にです。そして言ったのです。
「これ、描いてくれたんだ」
「お父さんにって。お母さんが私に言ってくれたの」
「そうだったんだ。お母さんが」
 お父さんはここでお母さんを見ます。そうしてです。
 そのうえで、です。お母さんにも言うのでした。
「有り難う、何かね」
「どう?疲れが消えたでしょ」
「うん、消えたよ」
 にこりと笑っての言葉でした。
「完全にね。それにね」
「それに?」
「かえって元気が出て来たよ」
 そうなったというのです。
「これでまた頑張れるよ」
「一番効いたみたいね」
「有り難う」
 笑顔で、です。お父さんはお母さんと麗に言いました。
「疲れが消えたよ。お父さん今とても幸せだよ」
 こう言うのでした。そうしてです。
 お父さんは麗の絵をです。お店のところに飾りました。そしてなのでした。
 笑顔でお仕事をするのでした。そしてお客さんに尋ねられるのでした。
「あの絵何だい?」
「麗ちゃんの絵かい?」
「はい、そうなんですよ」
 笑顔で、です。常連のお客さん達に答えるお父さんでした。
「いやあ、娘のあの絵を見てるとね」
「元気が出るかい?」
「そうだっていうのかい?」
「笑顔になりますね」
 これがお父さんの言葉でした。
「見ているだけで」
「ああ、娘さんの絵っていいよね」
「見てるとそれだけでね」
「かなり違うよね」
「子供が自分の為に何かしてくれるってね」
 その満面の笑顔で言うお父さんでした。
「それに女房も気遣ってくれて。いや、僕はあれですよ」
「幸せ者だっていうのかい?」
「そうくるかい?」
「はい、本当に幸せですよ」
 実際にこう言うお父さんでした。そしてです。 
 自分でその絵を見てです。また言うのでした。
「家族が支えてくれる。ですから」
 そのことがよくわかってなのでした。お父さんは笑顔になったのです。そうして麗のその絵をです。お店にずっと飾って笑顔でいるのでした。


笑顔が見たくて   完


                     2011・12・3 
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