少年と雷神
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第二章
早速乗り気になってだ。そのうえでヘルメスに述べたのである。
「では早速その相手を探そう」
「そうされますね」
「うむ。だがその相手は」
「実はです」
ここでだ。ヘルメスは今度は己の知識を出したのだった。彼はギリシアはおろか世界各地を歩き回っている。伝令の神なのでそうしているのだ。
そのうえでだ。彼はこうゼウスに提案したのだった。
「トロイアにガニュメデスという者がいるのですか」
「トロイアにか」
「はい、トロイアの王子でして」
ヘルメスは彼の身の上もゼウスに話す。
「それはもう絶世の美少年でして」
「そこまで美しいのか」
「私が言うのも何ですが」
あえて勿体をつけてだ。ヘルメスはゼウスに話した。
「一目見ただけでもう」
「そうか。まさにだな」
「絶世です」
またこう言ってみせたのだった。ゼウスに対して。
「必ずやゼウス様も御気に召されます」
「わかった。それではだ」
話を聞きすぐにだった。ゼウスはだ。
すぐにオリンポスからトロイアを覗いた。するとだ。
そこにはだ。巻き毛の豊かな茶色の髪にだ。
鳶色の優しい目、そして白く透き通った肌を持っている。
顔立ちは少女の様で優しい。顔立ちもだ。身体は華奢でまだ成長しきっていない。一見すると少女の様だ。その中性的な美貌を薄く白い衣で包んだ少年を見てだ。
ゼウスは目を輝かせてだ。こうヘルメスに述べた。
「素晴らしいな」
「御気に召されましたか」
「わしはこれまで多くの美女を愛してきた」
まずはこのことから語るゼウスだった。
「しかしそれと共にだ」
「少年達もですね」
「美しいものは何でも愛する」
これが当時のギリシアだ。この世界では同性愛もいい。
だからゼウスも美女だけではなかったのだ。その他にもだったのだ。
「少年もいいのだからな」
「ではあの少年で宜しいですね」
「名前はガニュメデスだったな」
「はい」
「わかった。ではだ」
思い立ったならば即座に、それがまさにゼウスだ。
彼は早速だ。鷲に変身した。そのうえでだ。
今は一人で宮殿の庭で花を見ているガニュメデスに上から迫りだ。そうしてだった。
その両肩を掴んだ。そうして一気に舞い上がったのだ。
掴まれたガニュメデスは自体がわからずだ。唖然となっている。しかしその間にだ。
彼はオリンポスにまで連れて来られた。オリンポスまで着いてだ。
ゼウスは鷲から本来の姿に戻りだ。こう彼に言ったのである。
「手荒な真似をして済まなかったな」
「は、はい」
ガニュメデスはいきなり男が鷲から変わってだ。そのうえで謝ってきたのでだ。
そのことに戸惑っていた。その彼にだ。ゼウスはさらに言ってきた。
「わしはゼウスだ。天空と雷の神だ」
「貴方がオリンポスの主の」
「そう、そしてここはだ」
「オリンポスですか」
見れば周りは雲に覆われている。そして雲の白い宮殿がある。それこそがまさにだった。
ガニュメデスはその茶色い髭に覆われた威厳に満ちているが非常に人間臭い表情をした神に対してだ。戸惑いながら答えたのだった。
「ここがあの」
「そうだ。そしてだ」
戸惑うガニュメデスにだ。ゼウスは自分からだった。
こうだ。ガニュメデスに対して言ったのである。
「そなたに命ずることがある」
「私にですか」
「そなたは神々の給仕となるのだ」
命じるのはこれだった。
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