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仕草で

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第五章

「付き合う様になったわ」
「ううん、何ていうか」
「それって色々考えたことの意味ないじゃない」
「仕草で彼氏をゲットするって言ったのに」
「それが何でこうなるのよ」
「何か意味ないじゃない」
「確かにそうよね」
 それはその通りだとだ。真耶子自身もだ。
 複雑な微笑みになりだ。こう言うのだった。
「最初は確かにそうだったけれど」
「何でそこからそうなるのよ」
「本当になし崩しに」
「これまで色々話した意味ないじゃない」
「あれだけ話したのに」
 友人達はだ。それぞれパンやお握りを食べつつ真耶子に言う。
 その表情は皆呆れるやら苦笑いやらでだ。そうした顔での言葉だった。
「何ていうかね」
「拍子抜けっていうか」
「最初は確かにそれだって感じだけれど」
「後はなし崩しって」
「流れるままにっていうのは」
「告白もないんでしょ」
 一人がハムサンドを三角の端から食べながら問うた。
「そのまま自然によね」
「そう、自然にね」
 十郎太と付き合う様になったとだ。真耶子自身もそうだと答える。
「そうなったのよ」
「本当に成り行きじゃない」
「真耶子にとてはハッピーエンドにしてもよ」
「それってねえ。話し合いした意味があまりないから」
「何なのかしらね」
「多分あれなのよ」
 明太子のお握りを食べ終えてだ。今度は梅干のそれを食べながらだ。
 真耶子は笑顔の中に思慮を含ませてだ。こう皆に答えたのだった。
「確かにそうした努力も大事だけれどね」
「それでも?」
「もっと大事なものがあるの?」
「そう、それは何かっていうとね」
 このことをだ。彼女は言った。
「縁よ。それとね」
「それと?」
「それとっていうと?」
「気持ちだと思うわ」
 それがだ。大事だというのだ。
「彼が好きだっていう気持ちね」
「それが大事なの」
「気持ちが」
「それがなの」
「私十郎太君大好きだから」
 最初から今もだ。それは変わらないというのだ。
 このことを言ってだ。そしてなのだった。
 彼女は梅干のお握りを食べつつだ。こうも言ったのだった。
「付き合う様になれたのよ」
「ううん、何よりも好きだっていう気持ち」
「それが大事なのね」
「何よりも」
「そう、このことがわかったわ」
 真耶子もだ。十郎太と付き合う様になってわかったというのだった。
 このことを聞いてだからだ。誰もがだった。
 納得した顔になってそしてだ。顔を見合わせてだった。
「じゃあそれなら」
「そうよね」
「まずは好きな相手を見つけて」
「それからね」
「それが大事よね」
 こう言い合ってだった。女の子達は一つ大事なことがわかったのだった。
 そして今度はこのことからだ。話すのだった。
「よし、それじゃあね」
「まずは本当に好きな相手を見つけてね」
「そこからはじめましょう」
「そういうことね」
 こう話すのだった。彼女達は一つ大切なことがわかった。恋愛とはどういったものなのかということを。


仕草で   完


                                        2011・12・29
 
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