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万華鏡

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第二十六話 江田島へその八

「だからね」
「神戸より暑いのよね」
「大阪とはまた違った暑さなのよ」
 大阪はかなり暑い、しかしそれとはまた別の種類の暑さだというのだ。
 ではどういった暑さか、母はこのことも話した。
「からっとしてるけれど日差しが強くてね」
「日差しが強いのね」
「大阪は熱気が凄いじゃない」
「街自体がね」
 人が多いからだけではない、大阪はそもそも街自体に熱気が篭っているのだ。そうした街が大阪なのである。
「何度も行ってるけれど」
「神戸とはまた違う暑さよね」
「そうでしょ。それでね」
「日差しが強い暑さなのね」
「帽子忘れないでね」
 具体的にはこれだった。
「絶対に持って行ってね」
「日射病ね」
「そう、海に行ってもね」
「泳ぐのに?」
「泳ぐだけじゃないじゃない」
 砂浜に出る、その時だった。
「お水の中にいるだけじゃないから」
「だからなの」
「本当に日差しが強いから」 
 母はとにかくその日差しの強さを語る。
「日射病に気をつけてね」
「熱射病じゃなくてなのね」
 大阪はどちらかというとこちらだ、そして瀬戸内海はなのだ。
「そっちなのね」
「そうよ、だから帽子は忘れないでね」
「日焼け止めクリームも必要かしら」
「あっ、そうね」
「必要なのね」
「そう、必要よ」
 それもだった。
「それもね」
「やっぱりそうよね」
「言われてお母さんも気付いたわ」 
「じゃあそれも持って行って」
「さもないとね」
「そうそう、日焼けしてね」
「夜にシャワー浴びる時とか大変よ」
 肌が焼けてだ、それでだ。
「もう痛くてね」
「私お肌はそんなに弱くないけれど」
「それでも過信は禁物よ」
 例えそうだとしてもだというのだ。
「夏の日差しは手強いわよ」
「今だってそうだしね」 
 この神戸でもだ、しかも江田島は神戸よりも日差しがさらに強くなるからだ。
「瀬戸内気候を甘く見ないことよ」
「そういえば女の人って」
「日焼けを避けるっていうのね」
「うん、サングラスに帽子にって」
「あとj半袖じゃなくてね」
「完全武装してるわよね」
「日焼けは女の敵なの」
 そこをはっきりと言う母だった。
「二十五歳からはね」
「あと九年経ったら」
「そう、日差しが憎たらしくなるから」
「今以上に」
「遥かにね、そうなるからね」
 だからだというのだ。
「気をつけてるのよ」
「お母さんもなのね」
「褐色の肌もいいけれどね」
 肌の色の問題ではないのだ、日焼けとは。 
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