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恐怖の重石

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第2部
プロローグ
  第3話、0093、No.1

『なんだ、あれは・・・』

 ギラ・ドーガのコックピットに座っていたケネスは、モニターに映し出された光景を見て絶句した。地球に寒冷をもたらす死の天使となるはすだった小惑星アクシズが、不思議な輝きに包まれているように見える。

 ケネスは大気による摩擦を真っ先に疑って排除した。地球に直撃するコースを維持しているとはいえ、アクシズはまだ地球の大気圏の遥か手前に存在している。それにアクシズを包む幻想的な輝きは、摩擦の輝きと全く違うものだった。

 とはいえアクシズが輝こうと点滅しようと、地球に落ちればネオ・ジオンの勝ちだ。そう自分に言い聞かせて気持ちを落ちつかせようとしたケネスを、さらなる非常識な現実が襲う。

 不思議な輝きにいざなわれたのか、アクシズが物理法則を無視して地球から離れるコースを取った。その非常識な光景を見たケネスは、敵の存在を忘れて呆けたようにアクシズを見つめ続けた。

 本来なら危険極まりない行為だが、輝くアクシズはケネスだけでなくネオ・ジオン軍と連邦軍の双方から戦意を奪っていた。

 それから間もなくして、アクシズと同じ輝きを纏う小さな物体がケネスのギラ・ドーガの前を横切った。

 ケネスはその物体から何か意志のようなものを放っているように感じた。それと同時にケネス自身が戦場の気配を肌で感じ取れるようになり、ネオ・ジオン軍の置かれた立場に気づく。

『撤退するぞ』

 ケネスはアクシズのすぐ近くで無防備に佇んでいたギラ・ドーガに近づくと、接触回線でパイロットに呼びかけた。

『オ、オドネル中佐。撤退するのですか』

 若いパイロットが声を震わせて答えた。周りにはかなりの数の連邦モビルスーツがいる。本来なら生きて帰れないような状況だ。

『安心しろ。敵は戦意を失っているようだ。君が敵を刺激さえしなければ友軍と合流できる。機体を180度反転させたら武器を抱えてゆっくりと直進するんだ。そして最初に見かけた艦に着艦を申請したまえ』

『了解です』

 激しい戦場となった空域は奇妙な静寂に覆われていて、敵味方のモビルスーツが何機も停止している。ケネスはギラ・ドーガの武器を抱え込み、戦う意志のないことを示しながら、近くの友軍機に接触する作業を繰り返した。

 そして、彼はその空域に連邦軍機のみを残し、自らの母艦ベルデに帰還したのである。 

 
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