八条学園怪異譚
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第二十七話 教会の赤マントその四
「どうされているんですか?」
「それは研究費じゃ」
それに使っているというのだ。
「表向きは八条グループからの援助じゃがな」
「研究費にですか」
「うむ、使っておる」
そうだというのだ。
「様々な国の古文書なりを集めたり発明したりしておるからのう」
「博士は理系にも通じてるんだよ」
貉が言う、外見は隣にいる狸とそっくりだ。
「科学に医学、化学にね」
「何か特撮の科学者みたいよね」
「お話聞くとね」
愛実と聖花は貉の話を聞いて顔を見合わせて話した。
「それってね」
「どうも」
「悪役でも面白いのう」
博士も二人の言葉に笑って返す。
「わしは通称悪魔博士じゃからな」
「悪魔っていうか仙人ですけれどね」
「そっちですよね」
「ほっほっほ、どちらにしても愉快な通称じゃ」
博士は抹茶が入った碗を手に笑った。
「戦後間も無くの子供向け小説に出て来る博士の感じでな」
「何ですか、それ」
「妖しい感じしますけれど」
「江戸川乱歩の世界とかじゃ」
そうしたものだというのだ。
「ほれ、少年探偵団な」
「あっ、二十面相とかの」
「ああしたのですか」
「左様、二十面相が変装する博士なり何なりみたいでじゃ」
二十面相の変装は多い、その中にはそうした妖しい博士もあった。他には宇宙人なり豹人間なり巨大カブトムシもあった。
「よいな」
「それじゃあ完全に悪役ですけれど」
「それでもいいんですね」
「うむ、面白いからな」
だからいいというのだ。
「よいわ」
「悪役でもいいんですか」
「それでも」
「マッドサイエンティストと呼ばれることはのう」
昔の特撮やアニメではよく出て来た存在だ。
「科学者の夢じゃぞ」
「そうだったんですか」
「そうじゃ。わしも科学者ならばじゃ」
博士は愛実に笑いながら話していく、無論聖花にも聞かせている。
「そう思われることは本望じゃ」
「だからいいんですか」
「悪役でも」
「そうした認定は大歓迎じゃ」
こうまで言うのだった。
「どんどんやって欲しいものじゃ」
「じゃあそのうち特撮のヒーローと戦うんですか?」
「それか何とか探偵団とか探偵の先生とかと」
「面白いのう、それも」
まんざらでもないどころか乗り気である。
「永遠の強敵として存在するのじゃな」
「二十面相みたいに。ただ二十面相は」
聖花はここでふと言った。
「何か途中で人が交代したみたいですけれど」
「私達は生まれる前のドラマ版?二年あってパート1とパート2があってそれで二十面相の人も交代したのよね」
「あっ、原作でもなの」
少年探偵団でもだとだ、聖花は愛実に答える。
「そっちでもなの」
「あれっ、そうだったの?」
「そうなのよ」
「私少年探偵団のシリーズ全部読んだけれど、二十面相が出てるのは」
小学校の図書館にあったのでそれを全部読んだのだ。ポプラ社から出ているこのシリーズは多くの学校にある。
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