魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
後日談
⑫~特別事件対応課
前書き
ヴィヴィオ「今回はパパの部隊のお話で~す」
ノーヴェ「すげえよな。二人だけの部隊だってよ」
ヴィヴィオ「だよね。どんな部隊なんだろう?」
ノーヴェ「それは見てからのお楽しみ、ってことで」
ヴィヴィオ「本編行きましょー!!」
side クロノ
「では、これにて特別事件対応課の設立を容認します」
「ありがとうございます。ミゼット提督」
「しっかりおやりよ」
「はい」
僕が中心となって動かしていた計画、特別事件対応課、通称『特事課』の設立がようやく終わった。
この件には三提督が大きく関わっていて、目指したところは『陸でも海でも動ける中立の超少数部隊』というものである。
そのため、メンバーはと言うと………。
「……三人、それも僕はパイプ役みたいなものだから実質二人、という事か」
実際この部隊は事務仕事を僕が引き受け、他の部隊からの要請により動く、と言う傭兵みたいな部隊なのだ。
だが、その戦力は絶大。全力はSSSクラスの魔導師をも遥かに凌駕すると思われる二人。
衛宮士郎三等空佐と、僕の義弟でもあるランス・ハラオウン三等空佐。
今日はミッドに置いた隊舎に来るように言ってあるため、そこで着任式の予定だ。
そこまでやれば、僕のこの部隊での仕事はほぼ終わったと言ってもいい。
要請の承認など、サインをするだけの簡単なお仕事ですから。
「さて、……行くか」
そうして僕はミッドに向かった。
side 士郎
「ここか。随分と小さい建物なのだな」
クロノ提督から送られた隊舎の住所に着くと、一軒家程のサイズの建物があっただけだった。
「ワーカー。ここで本当に間違いないか……?」
[間違いないでしょうね。それにしても、彼らは遅いですね]
「奴の事だ。どうせ遅れてくる」
[確かに]
ワーカーとそんな会話をしながら隊舎に入る。
中までもとても簡素な作りだった。一階の一番奥にあった部隊長室。そこをノックする。
「失礼します」
「ああ。入ってくれ」
そう言われ、中に入る。
そうして部隊長と向かい合い、
「衛宮士郎三等空佐、ただいまを持ちまして正式に特別事件対応課へと配属になります」
「特別事件対応課部隊長、クロノ・ハラオウンです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「はい」
形式的な挨拶を終える。
「………っと、それじゃあ今後の話に移ろう。その前に、これを受け取ってくれ」
そう言って部隊長……クロノは一枚のIDカードを差し出してきた。
「これは?」
「管理局の全データベースを使用できる特事課のメンバーIDだ。これを読み込ませればその施設の情報が全て閲覧できる様になっている」
「ずいぶん凄いものを用意したな」
「用意したのは三提督だよ」
そんな会話をしていると。
「うーっす。待たしたか?」
ランサーが緩慢な動きで部隊長室に入ってきた。
「ランス……もう少し真面目にやってくれ。困るのはこちらなんだぞ」
「へーい。了解しましたよ、お・に・い・さ・ま」
「わかっていないようだな、ハラオウン三佐。君の給料は僕が査定するんだぞ?」
クロノが半キレ気味に脅しをかけると……
「ランス・ハラオウン三等空佐、本日を持ちまして特別事件対応課に配属になります!!」
見事な敬礼でそう言った。変わり身速すぎだろう。
「全く、しっかりしてくれよ。フェイトの為にも怠けてはいられないんだからな」
「はいよ」
「さてと、仕事の内容について説明するぞ」
そこからは完全に仕事モードのクロノ。ランサーも一応しっかり聞いている。
「事務は基本的にあまりない。実働がメインになる。だが、魔術の方は色々あるからな。中々許可は出せない。出せるとしたらS級ロストロギアの処理の時位だろう」
「そうか」
「当面は魔法のみで処理しろ、ってことでいいのか?」
ランサーが確認の為に聞く。
「そう言うことだ。まあ君達の実力ならば犯罪者の相手位ならば必要ないだろう?」
「まあな」
「流石に遅れを取るような事などはないさ」
「それは何よりだ。ならば後は言うことはない。今日は解散としよう。僕も滅多にここには来ないが、何かあればここの端末に連絡をくれ。本局の僕の方まで繋がる様になっている」
「心得た」
「あいよ」
そこまでで解散となった。
これでしばらくはなのはの側に居てやれるな。
side クロノ
それから一週間後に初出動の機会があった。
いきなりAAA級ロストロギアが相手だ。
その事で僕はミッドにいる士郎とランスに通信で現状を伝えている。
「第128世界か」
「ああ。遠距離からの狙撃で封印を。それが困難ならば破壊してくれ。。アウトレンジの使い手が現場に居なかった為、うちに依頼が来た。二人とも出られるか?」
「一人で行けるだろ。特Sじゃねー限りは二人ともでる必要はねーな」
そうは言っているが、このロストロギアは質が悪い。
正直二人で出て欲しいが……
「そうだな。ランサーの言うように一人で十分だろう。私が出よう」
「……わかった。一応魔術使用の申請はしておく。ただ一般人には秘匿が前提だ。結界は張ってくれ」
「心得た」
そこまで決めると次は説明だ。
「今回の確保対象の名前は『オルタレイションクリスタル』だ。形状は虹色の宝石で、生物に物質を分解し、様々な形で再構築する能力を与えるようだ」
「中々厄介そうだな」
「数は20個だそうだ。さらに、バリアジャケットも分解されると報告にある。クラスとしてはAAAレベルの能力らしい」
「それだけ聞ければ十分だ」
それだけ言うと士郎は一瞬で外套とボディアーマーの姿になった。
「なるほどな。そいつの耐性なら簡単には分解されねえだろうな」
確かに彼ら本来の武装ならばAクラスまでの魔法ならば無力化することができる。それ以上だとしても軽減は可能。これならば問題はないだろう。
「では頼むぞ」
「了解!」
side 士郎
第128管理世界『エイリアス』は、不可思議なロストロギアがよく出土することで有名だ。
今回もその一つらしい。
転送ポートから降りて少し進むと、
「うわぁあ!」
「グルオオオ!!」
虎ほどの大きさの装甲が着いた生物に市民が数名追いかけられていた。恐らく今回の捕獲対象の影響だろう。
……丁度いいな。助けるついでに試すか。
魔術による認識阻害の結界を張り、投影するのはお馴染みの紫の歪な短刀。
「はっ!」
ルールブレイカーを投擲して当ててやると、装甲は虹色の粒子となって霧散し、情報にあった宝石が出てきた。やはり魔的ななにかであった事は間違いない。
これならば問題ないな。恐らくは破魔の紅薔薇も相応の効果を期待できそうだ。
「た、助かった……」
「はぁ、はぁ…」
市民も無事の様だし、次に行くか。
………………………………………………………………
「これで半分か。それにしても随分早く集まったな」
探索を開始してから二時間程で半分が集まった。
その内4つは狙撃で破壊しなければならない状態だったが、被害は軽く済んでいる。
そう思っていた時だ。
「………っ!この反応は!今までとは桁違いだな!?」
突如ロストロギアの魔力を感じた。
最速でそこに向かうと、そこには鎧のようなものを身に着けた男が破壊活動を行っていた。
「なんだこいつは……」
どうやら殴るだけでは足りないのか、回りの物質を分解し、自身に取り込んでいる。
狙撃で倒そうと弓を投影した時、あることに気がついた。
「こ、怖いよお……」
「私達、どうなっちゃうの?」
奴の側方200mほどのところに子供が四人取り残されていた。
あそこまで近くに居られては壊れた幻想が使えず、確実に止めることが出来ない。
加えてこちらと奴との距離はおよそ1km。
(不味い、奴が子供たちに気付く前に何とかせねば…!)
方法はいくつかある。しかし、確実性に欠けるものがほとんどだ。
封時結界では破られる可能性が高いし、破魔の紅薔薇で無力化させられるかも不明。もし無力化に失敗するような事があれば、子供たちの命はない。
考えろ。確実に子供たちを助ける方法を……奴と分断する方法を!
だが、現実は非情だった。
「ひッ………」
「………!」
奴が子供たちに気付く。迷っている時間はない。
「必滅の……黄薔薇!!」
ランサーほどの精度はないが、1kmくらいならば確実に当てることなど造作もない。
これでこちらに注意が向くはず……そう、向くはずだったのだ。
しかし、奴は左腕を貫かれたというのに、血の一滴も出ていない。
その上、こちらには見向きもせずに子供たちへと向かって行った。
「させん!」
強化をかけた体で一直線に飛び、奴よりも先に子供たちのところへ着いた。
背後から聞こえてくる怯えた声。何とかしてこの子らを逃がさねば……
そのためには目の前のこいつを何とかせねばなるまい。
「貴様、何者だ?」
「………」
「だんまりか。ならば……」
牽制のため黒鍵を三本投擲する。
奴はそれを避けず、分解して取り込んだ。
「厄介な……!」
しかし、ここで必滅の黄薔薇が刺さったままであることに気づいた。
(宝具を分解することはできないのか?……やってみるか)
仮説をもとに使う宝具は日本古来の名刀。
ヤマタノオロチの首から出てきたと言われる天叢雲剣。
「投影、開始!」
天叢雲剣はすらりとした刀身を持つ太刀。
別名の示す様に植物を切る際にはいかなる場合も一刀のもとに切り伏せる概念武装でもある。
単純な切れ味だけでも一級品の宝具だ。
これならば奴にも有効打を与えられるだろう。
そう思ったが、奴の行動は予想を裏切るものだった。
なんと、右半身を狙った攻撃を左腕を犠牲にして逃れたのだ。
さらにその腕は地面に落ちると虹色の粒子になって霧散した。
それだけでなく、奴は周りの物質を取り込み、左腕を再生させた。
「なんてやつだ………」
「………」
奴の腕が再生する前、中身が見えた。
その中身は虹色の光が渦巻いている亜空間のようだった。
どうやらこいつは人ではないようだ。
状況から察するにロストロギアの暴走体だろう。
ならば遠慮は不要。一撃で葬り去る!
その前に子供たちを結界で保護しておく。
「――Anfang」
認識阻害と衝撃緩和の結界を張って、子供たちを守る。
これで後は奴を倒すのみ!
この状況で使える一撃で葬り去る威力を持つものはあれしかない。
「投影、開始。投影、装填。全工程投影完了、是、射殺す百頭……!」
そう。ヘラクレスの技たる射殺す百頭だ。
これならば奴も流石に倒せただろう。
そう思い奴の居た方向を見る。
するとそこにあったのは10個の結晶。
やはり奴は今回の件のロストロギアの暴走体だったようだ。
回収を終えて子供たちを守っていた結界を解除し、帰ろうとすると、
「ありがとう!お兄さん!!」
「お兄さんはヒーローなの?」
助けた子供たちが群がってきた。
ヒーロー、か。私はそんな大それたものではない。
だから問いかけにはこう答えた。
「お兄さんは、アーチャー。通りすがりの弓使いだよ」
「「「「アーチャー……」」」」
「それじゃあそろそろ管理局の人が来るからその人たちに着いていきなさい」
そう言って立ち去った。
side クロノ
「士郎。いったいどういう事なんだ?」
事件解決から1週間。そこで僕は部下たちからある噂を聞いて士郎を呼び出した。
「どう言う事、とは?」
「あの世界で『赤いアーチャー』と言う噂が出来ているみたいなんだ。何か知っているんだろう?」
聞いた噂とは、アーチャーと名乗る人物があの世界で英雄扱いされているらしい、という事だった。
お礼がしたいから、と本局の方に捜査依頼まで出されているらしい。
しかし、彼の存在は局内以外では公になっていない。さらに言えば現在の局の中核の意見では下手に一般人にその存在を知らせるわけにはいかない、との意見が多い。
そのために本局では対応に困っているのだった。
「あー……。助けた子供たちにな、姿を見られているんだ。その時に名を名乗れぬものだから咄嗟に……」
「全く……とりあえず、正体不明の男という事で誤魔化しはしたが……今後は気を付けてくれよ」
「了解した」
しかしこの後も何度か姿を見られ、赤い弓兵と青い槍兵と言う二人の噂が次元世界中に生まれてしまうのであった。
………このことで僕の仕事量が二倍近くになってしまったのはまた別の話である。
後書き
お気付きの方も多いとは思いますが、ランサーはハラオウン家の婿養子になりました。
この事には後々触れていきます。
今回出てきた管理世界とロストロギアはオリジナルです(^^)v
元ネタは……分かりますよね?
それでは~
ページ上へ戻る