【完結】剣製の魔法少女戦記
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第四章 空白期編
第九十九話 『愛の証明編 奇跡の出会い、覚悟の証』
前書き
愛の証明編、最後の話です。
13/5/30に鉄龍王様のリクエストのセリフを追加しました。
14/3/29に固有結界詠唱を追加しました。
八神家にはアインスを除いた全員が揃っていて、後シホとアルトリアとネロの三人。そして急遽呼び出された“カレン・ルージュ”がいた。
「…それで、アインスさんがライに誘拐されたというのは本当ですか?」
「ああ…。私がもっと気をつけていればアインスは…。くっ…!」
「士郎、今は後悔は後にしてアインスを救出することを考えましょう。それに新たに現れたサーヴァント“アヴェンジャー”についても色々と調べないといけないし」
「アヴェンジャー…いえ、ライについては私が説明します」
それでカレンはライゼルについて語りだす。
それは奇しくもライゼルがアインスに語る内容と同じだった。
それを聞き終えて、
「士郎に…いや、エミヤに恨みを持つ英霊か…」
「俺も知らない奴だな…大抵の裏世界の奴らは知っているつもりだったが…」
志貴がそう口を開く。
「私も死徒じゃない吸血鬼なんて初めて聞いたわ。ヴラドⅢ世でもないしね~」
「ということはその世界だけの吸血鬼ということかな?」
「おそらくな…そしてこの世界にはそう言った限定された者達がやってきたりなり記憶を持って生まれてきたりなどするのだろう」
「“特異点”の世界ということかしら…?」
「そうやね。シホちゃんや士郎、それに言峰綺礼も別の世界からまるで引き寄せられたみたいにこの世界にやってきたわけやし…」
それを通信越しで聞いていたリンディが、
『そういった関係の深そうな人も出てくる可能性がこれからも出てくるわけですね。カレンさんもシホさん達のどれかの並行世界から記憶を持って生まれ変わってきたわけですし…』
「業が深い話だな…」
「それより早くアインスを助けに行こうぜ! あいつが殺されちまったら嫌だからな!」
「そうですね、ヴィータちゃん!」
ヴィータとリインが声を上げる。
『でも、肝心のどこに連れてかれたのかが分からないとどうにもならないしね…ナハトヴァールの反応も辿れないしね』
エイミィがそう話しをしだした時だった。
同時間でライゼルが剣から魔力を発生しだして自身を囮にして士郎達をおびき寄せる。
『ッ!? 急にでかい魔力反応が観測されたよ! 場所を転送するね!』
それでこの場にいる全員が観測された場所へと向かう。
観測された場所は偶然なのか以前にシホがこの世界にやってきた山奥だった。
◆◇―――――――――◇◆
Side 衛宮士郎
私達が指定された場所に到着するとアヴェンジャー…いや、ライゼルが腕を組み無言で立ち尽くしていた。
「………」
「士郎! それに我が主!」
ライゼルのとなりには無事な姿のアインスの姿があった。
よかった。殺されていなかったのだな。
アインスの無事に安堵の息を吐き、しかしまだ予断を許さない事に気を引き締める。
「……………来たか、衛宮士郎」
「ああ。お前と決着をつけるためにな」
「私が自力でアヴェンジャーのスキル…復讐概念を押さえつけている間に聞きたい。お前の今ある正義を…」
「私の、正義だと…?」
ライゼルは突然何を…。
「お前の今志す正義によって私はお前に対する戦いをどうするか決める」
「別に構わないが…アインスには手を出さないんだな?」
「それはお前次第だ…衛宮士郎」
「くっ…」
そう簡単にアインスを開放するわけがないということか。
「貴様はかつて“すべてを救う正義の味方”を目指していたそうだな…?」
「それを誰から聞いた…?」
「すまない。私が話した…」
アインスがすまなそうにそう話す。
…そうか。ライゼルが聞き出したのか。
「今のお前はどうなんだ? まだそんな御伽噺の中でしか存在を許されない正義の味方という愚かな夢を目指しているというのか? 私の大事な人…カレンを殺した時のように。そうなのであれば私はお前を…殺す!」
ライゼルの殺気は本物だ。
嘘をついたとしたら私は当然アインスも一緒に殺されるだろう。
ならばここは私の今の覚悟を見せる時ということだな。
「…ならばその問いに答えよう。今の私の目指す道ははやて達…私の大事な家族達…そして私の愛するアインスを守れる“大切な者達を守れる正義の味方”だ。
我が家族達がピンチの時は必ず駆けつける。助ける。そして、守る…!
もう私の養父である衛宮切嗣から借り受けた夢は諦めるしかないだろう…しかし、“大切な者達を守れる正義の味方”。
これが私自身でたどり着いた新たな答えだ。ライゼル…お前にどんな言葉を受けようとその想いだけはもう変わらない。
そして私の大切な者たちに刃を振るおうとしている貴様のようなものが襲ってこようものなら全力で打ち倒そう。それが私の覚悟の証だ!」
「私も士郎と同じ考えよ!」
今言える全力での答えを全て言い切った。
シホも続くように答える。これが私とシホの想いだ。
…すまない、切嗣。もう私達はこの答えを貫き通す。
いつまでも…!
その時、ふと幻想かもしれない…白昼夢なのかもしれない。だが私達の前にヨレヨレのコートを着た男性…衛宮切嗣が穏やかな表情をしながら姿を現した。
その今すぐにでも消えそうな透明な姿でこれはひと時の幻ではと思ってしまう。
『そうか…士郎、それにシホ。君達自身の答えを得たんだね』
「「切嗣…!?」」
シホや他の一同も驚きの声を上げている。
ということは目の前にいる切嗣は幻じゃないということか!
『それならもう僕からはなにも言わないよ。それが君たち自身の…僕の借り物の夢ではなく、真実たどり着いた答えだっていうなら僕は全力で応援する』
「切嗣…ッ!」
『…だから大切なものをもうこぼれ落とすんじゃないよ…?
さて、それじゃもう一度君たち二人に問うよ。
―――僕はかつて“正義の味方”に憧れていた…。
…でもその過程で僕はたくさんの命を天秤にかけてこの手で殺し、一を殺して十を生かし、また十を殺し百を生かし、また百を殺し…千を生かしてきた。
今思えば愚かな理想だったのだろう。そんな歪んだ想いを僕は士郎とシホ、君たち二人に託してしまった。
でも、君達はこの世界に来て新たな理想を…イリヤの願いだとしても自分自身で抱いた夢を、答えを得た。
だから今の君達は…どうなんだい? 聞かせてくれ…』
「私は、もうその夢を継げない…諦めるしかない」
「ええ、切嗣。私と士郎はもう新たな夢ができたのだから」
『その夢とは…? 教えてくれないかい?』
「「大切な者達を守れる正義の味方…それが私の夢だ(よ)…」」
私とシホは同時にそう答える。
『そうか…。今度こそ心から安心した。守りたいと思った人達を必ず守れるように頑張るんだよ? 士郎、シホ…。
…そしてイリヤ、いまさら何を言っても遅いだろうけど第四次聖杯戦争後に迎えに行けなくて、本当にすまなかった…そしてこれからも士郎とシホと仲良くにね?』
《キリツグ…!》
シホの中からイリヤの泣きそうな声が響いてくる。
イリヤも切嗣と会いたかったという想いはあったのだろう。
泣きそうな声を出しながら、
《うん。バイバイ、キリツグ…!》
『うん、イリヤ…。それじゃ僕はもう消えるとするよ。これはつかの間の奇跡の出会いだったのだから…。いつか、また会おう。三人とも…』
切嗣はそう言って笑みを浮かべて風が吹き荒れた瞬間に姿が溶けるように薄れていきその光は空へと昇って消えていった…。
そして先程までの空気が嘘だったかのようにあたりは静寂に包まれた。
「―――クククッ…」
しかしそこでライゼルが突如として笑い出した。
「なにが、おかしい…?」
「返答によっては容赦はしないわよ…!」
切嗣とのつかの間の再会を台無しにされたと思い私とシホは殺気をライゼルに浴びせる。
「…いや、すまない。君たちのことを笑ったわけではないんだ。笑ったのは私自身なのだから。
復讐に身を焦がし闘争の果てにカレンの下へとついにはたどり着けなかった私が君たちの新たな夢を笑うことは侮辱だということにね」
「ライゼル…」
「でも、まだ完全に納得はしていない。君達の覚悟を聞いても僕はまだエミヤシロウに対する恨みが心から消えない。だから最後の決着をつけようじゃないか?」
そう言ってライゼルは腰に下げているサーベルと刀を同時に抜き放つ。
それで私達は来るか! と構える。
でもそこで今の今まで私達の後ろに隠れていたカレンが飛び出した。
「ライ…ッ!」
「ッ!? カレン!?」
ライゼルの表情が驚愕に染まる。
それはそうだろう。今まで会いたかった人がお互いに目の前に現れたのだから。
「ライ、お願い! その武器を下げて! 私は士郎さんの事を決して恨んでいない。
あなたが私が死んだ後、どんな道を辿ったのかはわからない。でも私はそんなライの姿は望んでなんていない!」
「カレン…」
「だからその憎しみの想いをなくして…私とまた一緒に暮らそう!」
カレンの必死の告白。
それはライゼルに届いたのかはわからない。
でもライゼルはその顔を悲しみに歪めて、
「もう無理なんだよ、カレン…。僕の恨みは晴れたとしても一緒についてきてくれた我が同志達の想いまではなくすことはできない」
途端、ライゼルの体から濃密な血と魔力の気配が吹き出してくる。
そして詠唱を紡ぎ出した。
「―――この身に宿る魂は無い。
血潮は刃に、心は悪魔に捧げる。
幾度の戦場を駆け抜けて無情」
これは…。
まるで私の固有結界の詠唱に感じが似ている。
そう、己の心を曝け出すかのようにライゼルは続ける。
「数多の命を救えど、ただ一つの愛を失う」
「ライ…」
カレンの悲しみの声が漏れてきた。
「彼の王は常に軍勢。
血塗れの丘で好機を待つ。
故に、この生涯に意味を示す為に…、
この心をあらゆる憎しみに染め上げる」
そして詠唱が終わる。
途端、世界が震撼するかのように震えるような錯覚を味わう。
そして、一陣の風が吹き荒れて、世界は新たな世界へと侵食されていく。
固有結界…!?
その世界は一言で言えば負け戦の後の荒廃したような血濡れの世界だった…。
そして、気づけばライゼルの背後には百人ほどの様々な形相をしている人や死徒が全員同じ騎士甲冑をまとっている騎士の姿があった。
「これが私の宝具…固有結界『鮮血の盟約』。かつて私に付き従ったエミヤシロウや魔術協会、聖堂教会に恨みを持つ者たちの集まりだ。
私の心は彼らとともにあり、これからも不変である事の証だ」
ライゼルの隣に赤い鬣のある巨大な黒い馬が出てきてライゼルは馬を撫で、
「お前も来てくれたのだな。斬月…」
斬月と呼ばれた馬に跨り、
「いざ! 最後の戦いの時だ!!」
「「「「「イエス! マイ・ロード!!」」」」」
ライゼルの配下の騎士達がライゼルの声に反応して答える。
それに私は、
「もう、引き返せないのか…ライゼル?」
「ああ…。彼らの将である私が彼らを裏切るわけには行かないからな」
「そうか…。はやてとリイン、シャマル、カレンは下がっていてくれ。ならば…アインスを取り戻すため…私達も本気で挑もう!」
それでヴォルケンリッターのみんなやキャスター、アルクェイド、志貴、シホ、アルトリア、ネロが構えをする。
「準備はできたようだな。では…奴らを蹂躙せよ! 我が騎士達よ!!」
「「「「「イエス! マイ・ロード!!」」」」」
そして戦いは始まった。
◆◇―――――――――◇◆
士郎達はこちらへと駆けてくる百人以上の集団に果敢に挑んでいった。
「うおおおおおーーーーー!!」
ヴィータがグラーフアイゼンを振るい、次々と敵を潰していく。
「飛竜一閃!」
剣から放たれる砲撃級の魔法で次々と切り裂いていく。
「デヤァアアアアア!!」
地面から幾重にも刺を出現させて貫いていく。
「いくわよ!」
アルクェイドが爪を奮っていき引き裂いていく。
「殺す!」
志貴がナイフを振るって直死の魔眼で絶命させていく。
「すべて切り裂きます! 受けなさい、密天!!」
風の嵐を発生させて切り裂いていく。
「イスカンダルの王の軍勢に似ていますが彼らに比べれば劣りますね!」
アルトリアが剣を振るい次々と切り裂いていく。
「余を殺したくばもっと大勢で挑んでくるがよい! 花散る天幕!!」
舞うように次々と切り裂いていくネロ。
「「全投影連続層写!!」」
士郎とシホが剣を連続で放ち次々と貫いていく。
全員が全員敵を次々と撃破していき数では不利だったというのにもうライゼルを残し全員が倒れ尽くしてしまった。
「…やるな。私の騎士団がこうも簡単に敗れるとはな。まるであの最後の戦いの時のようだ…」
「アインスを救うためには倒すしかないからな。そして必ずアインスを助け出す…!」
「…そうか。ならば、最後の勝負と行こうか。いくぞ、斬月!!」
ライゼルの言葉に斬月が嘶き士郎へと突撃していく。
「紅蓮よ…! 今こそ光り輝け!! “暁”!!」
瞬間、紅蓮から閃光があがり全員の視界を奪う。
しかし士郎は視界を奪われながらもその手に丸い鉄球を出現させる。
その鉄球から紫電が発生しだし士郎の全身にも伝わっていくが士郎は気にせずに言霊を紡ぐ。
「―――後より出て先に断つもの……!」
「いざ、我が剣を受けよ! 衛宮士郎!!」
サーベルと刀から燃える炎と吹雪く氷雪が巻き起こりそれは士郎を襲おうとする。
だが、それよりも早く、
「斬り抉る戦神の剣ッ!!」
放たれたケルト神話の戦いの神ルーの短剣。
それによってライゼルの攻撃はすべてキャンセルされて因果逆転の剣によって貫かれて霊核を傷つけられて再生ができなくなる。
「ぐっ…まさか、攻撃をキャンセルされよう、とは…しかも霊核も傷つけられて冥土帰しのスキルも、発動できなく…再生も、できないか。ここまで、だな…」
それによって固有結界『鮮血の盟約』も解除されていき、ライゼルは斬月から転がり落ちる。
そこにすぐにカレンが駆けていき、
「ライッ!」
すぐに抱き起こし、
「どうしてここまで…私はあなたとまた出会えるだけでよかったのに、嬉しかったのに…!」
「それは僕も同じだよ、カレン。でも、もう僕は君と生きる時間は違っているんだ。だからこれでお別れだ…」
「ライ…!」
「そしてカレン…済まない。君との約束を……破ってしまった。
『人として君を守る』と誓ったのに…それを踏みにじってばかりだ…済まない……済まないっ…!」
「そんなことないっ!」
カレンはすぐにライゼルのセリフを否定して、
「私こそ貴方に苦しい思いをさせてしまった……貴方を支えるはずだったのに…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「…お互い様だったということかな…?」
「そうだね、ライ…」
ライゼルは儚い笑みを浮かべてそう言う。
カレンも泣き笑いで返す。
「…そして最期に……君に伝えたい…。
こんな…怪物の血を引く僕を…化け物に成り果てた僕を……愛してくれて………ありがとうっ……さよなら、カレン。今度こそ幸せになってくれ…僕はただそれだけを祈っているから…」
「うん…うん…!」
「そして、衛宮士郎…」
「なんだ…?」
「その決意と覚悟、必ず貫き通せ…ッ! そうでなければ僕は何度でも蘇って君を殺すだろう…!」
「ああ。アインスは必ず幸せにする!」
「ならば、安心だな…。…お前とは、出会いが違えば友になれたことだろう…さらばだ」
そしてライゼルは消滅した。
士郎は地面に俯いているカレンに話しかける。
「カレン…すまない。ライゼルを救うことができなかった…」
「いえ、これで良かったんです…。ライもきっと、士郎さんの覚悟をわかってくれたと思います」
「そうか…」
「ですから私とも約束してください。アインスさんを必ず幸せにしないと私がライの代わりにあなたの敵になると…」
「ああ、肝に銘じておこう」
そこにアインスが士郎へと駆け寄ってきた。
「士郎ッ!!」
「アインスッ!!」
士郎とアインスは抱きしめ合い互いの無事を祝った。
「アインス…必ずお前を幸せにする。約束だ!」
「ああ…。その言葉、信じるぞ士郎…」
こうしてアヴェンジャー…ライゼルとの戦いは幕を閉じたのだった。
◆◇―――――――――◇◆
アヴェンジャーのマスターだった男はライゼルが消滅したことを確認すると、
「ふむ、やはりこの程度だったか。…まぁいい。これでサーヴァント召喚の実験はできたからな。これからが楽しみだ。クククッ…」
男は不気味に笑うのだった。
後書き
切嗣(幽霊みたいなもの…)を登場させました。
この切嗣はシホ達の世界の切嗣です。なのは世界の切嗣は生きています。
並行世界の次元を越えてやってきました。
そしてフラガラックをやっと本編で使用しました。
それからライゼルの最後の宝具ですがぶっちゃけて言いますと私の文章能力の低さでやっつけ感的な展開になってしまいました。
でも復讐という一念で集まった部隊とはいえ実力は人以上中級死徒止まりの集団で数もそんなに多くない、と言った具合ですからヴォルケンズでも倒すことができたという設定です。
イスカンダルの王の軍勢と比べると比較にもなりません。
士郎とアインスの仲の引き立て役と化してしまったライゼルをあまり強く見せられずすみませんでした、鉄龍王様…。
ですが最後は綺麗に消えたと思います。
そして謎の召喚者が最後に不敵に笑う…。まだこの男とのこれから続いていくだろう因縁は始まったばかりである。
そして新たな単語…特異点世界。
説明としましてはこのなのはの世界は他の世界からの流入が起こりやすい確率の高い世界だということです。(決して神様転生などは該当しません)
今までに言ってみるとまずシホと士郎、言峰綺礼にノア、普通に転生してきたカレン、それにランサーやライダーといった前の世界の記憶持ちのサーヴァント達もこれに該当しますかね。全員とも別々の並行世界から記憶を持ったりなんなりで来たわけですから。
主に型月世界の人が流れてくるという設定です。あまり話を広げすぎるとこちらも対処できませんから。
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